白川尚史のレビュー一覧
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ファラオの密室の作者が描く、古代中国のファンタジー小説。そう、これはもうファンタジーとしか言いようがない。
ファラオの密室でもそうだったように、今回も時間制限付きの真相解明がメイン。主人公の書記官がお偉いさんの葬儀の準備の際にやばいことを指摘したことにより目をつけられて、罰せられる寸前。助かりたければ後宮内で起きている不思議な事件を解決し、腐敗官僚を追放すること。期限は3日。限られた時間と情報だけで真相に辿り着けるのか?というのがお話の中軸。
実はもう1人の主人公がいて、かつて国を滅ぼされた亡国の王女。今は漢帝国の中で復讐の機会を待っている、という状況。
魅力的なキャラと2人の主人公の関わり方が絶妙で、賢くてかわいい主人公と、強くて華麗な主人公のダブルヒロインが際立っている。
また、漢帝国の文化、歴史がちょいちょい出てくるのでとてもタメになる。ただ、ベースがファンタジーなのでどこまで本当かわからんが。
そして、中国ゾンビといえばやっぱりアレなんだね。自分の子供ころ見てたので「懐かしー」となったよ。おでこにお札を貼られて腕を突き出してジャンプしながら襲いかかってくるアレ。それがギャグではなくしっかりストーリーの核として描いてあって「もはや何でもありか!」とつっこんでみたくなる。
もはやラストあたりに至ってはミステリー部分の謎についてはそんなに重さがないよう思えるけど(そんなことよりもっと重大なことが起こってる)、一応ミステリー部分はしっかり解決。そして最後はちょっと切ない、そこら辺はファラオの密室と似た感じもある。だが今回は希望も残した部分もあり、少しだけ救われた感じがする。面白かった。 -
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神秘が色濃く残る古代エジプトという舞台が面白かった。死にきれずに冥界から舞い戻った主人公が自分の殺人事件を調査するなんてこの世界観だからこそという感じで良い。死者の黄泉返りや大きくなる太陽とかファンタジー要素も強いのに、殺人事件が起きたらちゃんと取り調べ等の調査もするんだという秩序が並び立っているのも良かった。
個人的にはミステリ要素よりもこうした舞台と人間模様が興味深かった。ミステリ要素については密室の移動の謎よりも石運びで最下位になる謎の解明の方が分かりやすくなるほどなと思った。ピラミッド造りがしっかりとした公共事業だったという話は聞いている。国はきちんと報酬も出しているのに、中抜きがあったり現場責任者の横暴があったり、いざ運営されてみると国が想定していたように立ち行かないのはいつの時代も同じなのかなあという一抹の虚しさを覚えた。カリはかわいそうだったが、希望が見えるラストで良かった。犬も一昔前の作品なら主人の言っていた通りになっていただろうから、救いがあって本当に良かった。
セティの事情はそれこそフィクションあるいはファンタジーならではというところもあり、現代人の感覚では推し量れない部分も多くて何とも言い難い。ただ父親と腹を割って話せただけでも黄泉返りに意味があったと思えるのが救いだろうか。 -
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ネタバレおもしろかった。
エジプトのことをあまり知らないので、難しいかな?と思いつつ読み始めたけど、日本の宗教観に近い部分もあり意外と読みやすかった。
また、セティ(主人公の方)へ父親自身のセティへの思いを話す場面が印象的だった。
国や王様を思う気持ちは本物で従わないものは認めないけど、自分の子供だけはそれに背いても子供を信じているということ、血の繋がりはなくても家族になれること。
セティが生きている間に、話せていたらもっと良かったのになぁ、なんて思ったけれど多分セティがああならなければ、この子供思いだけれど子供が大事だからこそ臆病になってしまう父親は話せなかったんだろうなともどかしい気持ちにもなった。
そして、最後のセティの魂の真実の部分。あ、そうだったのね、ミイラにしたのがタレクだってなったときに体を見られた事を気にしていたのはそういう事か、と腑に落ちた。
でももうここまで一生懸命思い合えるなら性別なんて何でもいいよ、と思ったどんでん返し?だった。
死んだ後の世界をあまり信じていないけど、何もないままでは想いあってる2人があまりに切ないので、ぜひ数十年後タレクが死んだ後、死後の世界で2人もじもじしながら愛を育んで欲しいと思う。 -
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古代エジプト文明、多神教、ヒエログリフ、ピラミッド、何処を切り取っても興味深かった。
こういった背景で無いと成り立たないストーリーだな、と。
『死んだけど、ちょっと訳あって冥界から戻ってきたんだ。』
で、よく戻った、とか、また会えて嬉しい、とか。
皆がすごく自然に受け入れているところが、始めのうちは不思議な感覚だった。
古代エジプトの死生観、信仰感がファンタジーめいていて、途中、カリが私の気持ちを代弁してくれているようだった。
タイムリミットが迫るなか、緊迫感も高まりラストに向けて、と思ったら。
最後が少しあっけなく幕が閉じたような感じで寂しさを感じてしまった。
それを加味しても、一味違ったミステリーで、とても楽しめた。
ネタバレ気味な表紙は、少し残念。 -
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ネタバレ
【結末のネタバレがあります】
結末が、想像と違った。
そもそも翠玉はあっけなく恋に落ちてしまうし、雪花もキョンシーにされて、最後は翠玉と仁曜以外、みんな死んでしまう。
うーん、なんとなく収まりが悪いというか、腑に落ちない?納得できない?終わり方だった。
あと、要素が多すぎた。
ミステリーなのか、ホラー(ファンタジー?)なのか、恋愛なのか、もう少し要素を絞っていたら、もっとシンプルにまとまったのではないだろうか。
p.232
「私はずっと父の言葉を信じていました。だから真実を記すことに、誇りを持って生きてきた。しかし父の事件の真相を追ううちに、語られたことと同じくらい、語られなかったことも重要だということがようやくわかってきたのです。行動の裏にある、人の決断、矛盾、あるいは葛藤、自身にしかわからない想いこそが、本当のその人なのではないか。今では、そう思っています。だから、私はただ、父を理解したいんです。あの日父に何があって、何を思って死んでいったのか、少しでも知りたいだけなんです」 -
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アクエンアテンというファラオを初めて知りました。ツタンカーメンの父親で、古代エジプト文明において「唯一神」を信仰したただ一人の王なんですね。恥ずかしながら、全く知らなかったです。吉村作治先生の解説もとても面白く読みました。
古代エジプトを舞台にした特殊設定ミステリというだけでもう面白そう!と思って、ずっと読みたかった作品です。
死後の世界、審判…と、現代とは違うエジプトの死生観や儀式の様子が詳しく書かれていて、とても興味深かったです。密室のトリックにも納得感がありました。
ただ、人々の考え方が割と現代的で(まぁ、古代エジプト人の考え方は、おそらく現代人には共感できないでしょうし、エンタメ作品なのでそこはしょうがないんですが)、少し戸惑う部分もありました。子どもを愛さない親はいない、という論理と物語の帰結は現代においても相当お花畑的だなぁと思ってしまいました。 -
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古代エジプトを舞台にしたミステリー。
私が世界史で習った頃は、アメンホテプ4世(イクナートン)という表記だったが、現在はアクエンアテンと表記されることが多いみたいですね。アメン神をはじめとする多神教を廃し、アテン神のみを信仰する宗教改革を行ったことで知られるファラオである。
物語は、そのアクエンアテンより少し前の時代が舞台。主人公は亡くなったものの、心臓の一部が欠けているために死後の審判を受けられず、失われた心臓を探すため、3日間だけ現世へ戻ることになる。
しかし現世では、亡き先王のミイラが密室から消え、別の場所で発見されるという不可解な事件が起きていた。
限られた時間の中で仲間と協力しながら、自らの死の真相と密室トリックの謎に挑む展開はテンポがよく、最後まで飽きさせない。
ファンタジー色は強いものの、古代エジプトの死生観や宗教観が物語に自然に織り込まれており、歴史好きにもミステリー好きにも楽しめる一冊だと思う。 -
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ネタバレ★3.5
時代設定がエジプトってのが斬新。エジプト死生観とか死後の冥界の話とか、フィクションと言いきれない設定がストーリーに厚みを出してた。
エジプトの世界観だからこそのミステリーって意味では新しい視点で面白かった
ただ、ちょっと腑に落ちないところとか、え、そんな理由?みたいな、若干浅い部分もあり、読みきったあとは少し残念感もあったかなぁ。
あと、主人公のセティが実は女でしたってのが、ラストわかるけど、そもそも本の表紙も女性的だし、途中の表現でもなんとなく勘づいてたから、ちゃんと最後まで隠しきって欲しかった感はある。
自分の胸に刺さってたナイフは、自分で刺したもので。
逃げようと思えば逃げられたのに死を受け入れたのは、奴隷の身分でありながら、イセシの亡くなった子供の代わりとして、セティとして生きることに嫌気がさしたからで。