白川尚史のレビュー一覧
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神秘が色濃く残る古代エジプトという舞台が面白かった。死にきれずに冥界から舞い戻った主人公が自分の殺人事件を調査するなんてこの世界観だからこそという感じで良い。死者の黄泉返りや大きくなる太陽とかファンタジー要素も強いのに、殺人事件が起きたらちゃんと取り調べ等の調査もするんだという秩序が並び立っているのも良かった。
個人的にはミステリ要素よりもこうした舞台と人間模様が興味深かった。ミステリ要素については密室の移動の謎よりも石運びで最下位になる謎の解明の方が分かりやすくなるほどなと思った。ピラミッド造りがしっかりとした公共事業だったという話は聞いている。国はきちんと報酬も出しているのに、中抜きがあったり現場責任者の横暴があったり、いざ運営されてみると国が想定していたように立ち行かないのはいつの時代も同じなのかなあという一抹の虚しさを覚えた。カリはかわいそうだったが、希望が見えるラストで良かった。犬も一昔前の作品なら主人の言っていた通りになっていただろうから、救いがあって本当に良かった。
セティの事情はそれこそフィクションあるいはファンタジーならではというところもあり、現代人の感覚では推し量れない部分も多くて何とも言い難い。ただ父親と腹を割って話せただけでも黄泉返りに意味があったと思えるのが救いだろうか。 -
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ネタバレおもしろかった。
エジプトのことをあまり知らないので、難しいかな?と思いつつ読み始めたけど、日本の宗教観に近い部分もあり意外と読みやすかった。
また、セティ(主人公の方)へ父親自身のセティへの思いを話す場面が印象的だった。
国や王様を思う気持ちは本物で従わないものは認めないけど、自分の子供だけはそれに背いても子供を信じているということ、血の繋がりはなくても家族になれること。
セティが生きている間に、話せていたらもっと良かったのになぁ、なんて思ったけれど多分セティがああならなければ、この子供思いだけれど子供が大事だからこそ臆病になってしまう父親は話せなかったんだろうなともどかしい気持ちにもなった。
そして、最後のセティの魂の真実の部分。あ、そうだったのね、ミイラにしたのがタレクだってなったときに体を見られた事を気にしていたのはそういう事か、と腑に落ちた。
でももうここまで一生懸命思い合えるなら性別なんて何でもいいよ、と思ったどんでん返し?だった。
死んだ後の世界をあまり信じていないけど、何もないままでは想いあってる2人があまりに切ないので、ぜひ数十年後タレクが死んだ後、死後の世界で2人もじもじしながら愛を育んで欲しいと思う。 -
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古代エジプト文明、多神教、ヒエログリフ、ピラミッド、何処を切り取っても興味深かった。
こういった背景で無いと成り立たないストーリーだな、と。
『死んだけど、ちょっと訳あって冥界から戻ってきたんだ。』
で、よく戻った、とか、また会えて嬉しい、とか。
皆がすごく自然に受け入れているところが、始めのうちは不思議な感覚だった。
古代エジプトの死生観、信仰感がファンタジーめいていて、途中、カリが私の気持ちを代弁してくれているようだった。
タイムリミットが迫るなか、緊迫感も高まりラストに向けて、と思ったら。
最後が少しあっけなく幕が閉じたような感じで寂しさを感じてしまった。
それを加味しても、一味違ったミステリーで、とても楽しめた。
ネタバレ気味な表紙は、少し残念。 -
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ネタバレ白川尚史、デビュー作なのか「異能の持ち主」だな、経歴も東大工学部→AI研究→起業して上場企業CTO→マネックスグループ取締役・・・「なぜこの人が古代エジプトを舞台にした本格ミステリを書ききったのか……」と二度驚く、ビジネスでいうブルーオーシャン戦略でツタンカーメンの前王の死というタイミングを狙って小説にするとは普通の新人が絶対に思いつかない発想、スケールと論理にエジプト神話をトリックの核に据えるなんて天才的
紀元前1300年代後半、アマルナ期の余波、アクエンアテン王が押し進めたアテン一神教が伝統的な多神教の神官層・民衆から猛反発を受けファラオ自身も揺らぎ始めた時代、そこに「アテンの名を騙るモノ」による太陽の暴走の危機が重なる、神官長メリラアが「死せるアクエンアテン王を復活させて息子ツタンカーメンに信仰を元に戻させる」必要に駆られるのもむべなるかな
政治・信仰・欲望と神々の秩序が絡み合ってエジプトの摩訶不思議な世界に誘う発端は「セティの心臓を欠けさせた」行為だ(単なる個人的怨恨や狂気の沙汰ではなくエジプトの神々とアテン神・一神教を強いたアクエンアテン王とそれに反発する諍いという時代背景が憎い)
セティは冥界の死者の審判(心臓をマアトの羽と秤にかける儀式)で「心臓が欠けている」と宣告され永遠の彷徨いを免れるために地上に舞い戻る、期限は3日、自身がなぜ命を落とし心臓を奪われなければならなかったのかを追う過程で上司の魂胆ー真の狙いが明らかになる、それは現代人から見れば理不尽だが、個人的な恨みなどではなく大望のための「練習」に過ぎなかった
当時のエジプト社会の宗教的・政治的危機感を前提に、現代の価値観で「ありえない」と一笑に付すのではなくセティ自身がその理不尽を「必要悪」として受け入れるに至る心理の機微を一切の説教臭なく物語の流れの中で自然に理解させてしまう、この「当時の視点での必然性」をここまで鮮やかに描き切る力量はまさに異才と呼ぶほかない
ミステリーとしての完成度も高い、密室トリックは古代エジプトの建築・ミイラ製作技術・宗教儀礼を徹底的に駆使したもので論理的にも視覚的にも納得のいくものだ、加えてセティの3日間というタイムリミットがもたらす緊張感ミイラでありながら人間らしい葛藤を抱える主人公の魅力脇を固める個性的なキャラクターたち(特に奴隷の少女カリの視点が現代読者に寄り添う良き緩衝材となっている)ラストには幸せなどんでん返し──エンターテインメントとしても申し分ない、読後感は爽快でありながらどこか重い、エジプトの神々が人間の営みに深く介入し信仰の対立が一人の死を「必然」に変える世界、その中でセティが自らの死を「理不尽」ではなく「必要な犠牲」として受け止める姿に現代を生きる私たちも考えさせられる、白川尚史という新星がミステリーの枠を超えて歴史小説ファンタジー宗教哲学の領域まで軽やかに踏み込んだ一冊、古代エジプトに興味がなくてもミステリー好きなら絶対に損はしない、むしろ読まなければ損だ、強くおすすめする、次作が待ち遠しい、稀有な才能の誕生を祝福したい -
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ネタバレ
【結末のネタバレがあります】
結末が、想像と違った。
そもそも翠玉はあっけなく恋に落ちてしまうし、雪花もキョンシーにされて、最後は翠玉と仁曜以外、みんな死んでしまう。
うーん、なんとなく収まりが悪いというか、腑に落ちない?納得できない?終わり方だった。
あと、要素が多すぎた。
ミステリーなのか、ホラー(ファンタジー?)なのか、恋愛なのか、もう少し要素を絞っていたら、もっとシンプルにまとまったのではないだろうか。
p.232
「私はずっと父の言葉を信じていました。だから真実を記すことに、誇りを持って生きてきた。しかし父の事件の真相を追ううちに、語られたことと同じくらい、語られなかったことも重要だということがようやくわかってきたのです。行動の裏にある、人の決断、矛盾、あるいは葛藤、自身にしかわからない想いこそが、本当のその人なのではないか。今では、そう思っています。だから、私はただ、父を理解したいんです。あの日父に何があって、何を思って死んでいったのか、少しでも知りたいだけなんです」 -
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アクエンアテンというファラオを初めて知りました。ツタンカーメンの父親で、古代エジプト文明において「唯一神」を信仰したただ一人の王なんですね。恥ずかしながら、全く知らなかったです。吉村作治先生の解説もとても面白く読みました。
古代エジプトを舞台にした特殊設定ミステリというだけでもう面白そう!と思って、ずっと読みたかった作品です。
死後の世界、審判…と、現代とは違うエジプトの死生観や儀式の様子が詳しく書かれていて、とても興味深かったです。密室のトリックにも納得感がありました。
ただ、人々の考え方が割と現代的で(まぁ、古代エジプト人の考え方は、おそらく現代人には共感できないでしょうし、エンタメ作品なのでそこはしょうがないんですが)、少し戸惑う部分もありました。子どもを愛さない親はいない、という論理と物語の帰結は現代においても相当お花畑的だなぁと思ってしまいました。 -
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古代エジプトを舞台にしたミステリー。
私が世界史で習った頃は、アメンホテプ4世(イクナートン)という表記だったが、現在はアクエンアテンと表記されることが多いみたいですね。アメン神をはじめとする多神教を廃し、アテン神のみを信仰する宗教改革を行ったことで知られるファラオである。
物語は、そのアクエンアテンより少し前の時代が舞台。主人公は亡くなったものの、心臓の一部が欠けているために死後の審判を受けられず、失われた心臓を探すため、3日間だけ現世へ戻ることになる。
しかし現世では、亡き先王のミイラが密室から消え、別の場所で発見されるという不可解な事件が起きていた。
限られた時間の中で仲間と協力しながら、自らの死の真相と密室トリックの謎に挑む展開はテンポがよく、最後まで飽きさせない。
ファンタジー色は強いものの、古代エジプトの死生観や宗教観が物語に自然に織り込まれており、歴史好きにもミステリー好きにも楽しめる一冊だと思う。 -
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ネタバレ★3.5
時代設定がエジプトってのが斬新。エジプト死生観とか死後の冥界の話とか、フィクションと言いきれない設定がストーリーに厚みを出してた。
エジプトの世界観だからこそのミステリーって意味では新しい視点で面白かった
ただ、ちょっと腑に落ちないところとか、え、そんな理由?みたいな、若干浅い部分もあり、読みきったあとは少し残念感もあったかなぁ。
あと、主人公のセティが実は女でしたってのが、ラストわかるけど、そもそも本の表紙も女性的だし、途中の表現でもなんとなく勘づいてたから、ちゃんと最後まで隠しきって欲しかった感はある。
自分の胸に刺さってたナイフは、自分で刺したもので。
逃げようと思えば逃げられたのに死を受け入れたのは、奴隷の身分でありながら、イセシの亡くなった子供の代わりとして、セティとして生きることに嫌気がさしたからで。