今や日本は60~64歳の8割、65~69歳の6割、70歳以上の半数以上が働く時代となった。
本書では、21人のシニア労働者にインタビューし、働く動機や現場における問題点などを明らかにする。
働く動機としては、「低年金」が大きな要素を占めると思われるが、生きがい、生涯現役といったポジティブなものもある。
しかし、本書を読んで、子どもがひきこもっていたり、自立が遅れ、教育ローンが未返済であるといった「子育てが終わらない」現状を抱え、働かざるを得ないシニアが急増していることに気づかされた。
また、働かなければ「社会から孤立してしまう」、自己実現やアイデンティティーの場を家庭でなく、賃金労働に求めなくてはならなくなっていることも、改めて認識させられた。
そういった経済的理由、孤独解消、自己肯定といった背景から、労働へと向かうシニアには、悩ましい問題点もある。
特に大きな問題は、仕事が選べないこと。
シニアに門戸が開かれているのは、介護、清掃、マンション管理、警備、集配センターでの仕分けなどの単純作業。いずれも肉体労働である。
経験や知識を貯め込み、「社会に認められたい」という自己承認欲求が強いシニアは、思惑とのミスマッチに悩むことになる。
知恵や工夫の入り込む余地がなく、「機械の部品」に徹することが求められ、仕事の面白さ、人間としての尊厳が失われる。
創意工夫も仲間意識も生まれない職場に働く喜びは見当たらない。
本書に紹介されている「過労シニア」は様々な困難を経験している。借金、転職や離職、リストラ、会社倒産、離婚、親の介護、病気、子どものひきこもり・・・
ケースは様々で、まるでNHKテレビの「ドキュメント72時間を見ているような気分になった。
同時に、売れる本にしようと、やや特殊な事情を持つ人の事例にこだわったような嫌いも感じ取れた。