受験勉強や習い事に忙しい小学生が、本当に夢中になれるものに出会う物語、というあらすじに惹かれて読む。子供がピアノに惹かれるって、どうしたらなるの?って、仕事柄気になった。
ピアノ・ピアーノはイタリア語で「あわてず、ゆっくり、少しずつ」といった意味があるのだそう。
文章は、取ってつけたような、何だか硬いものだったが、素直で、言いたいことが直に伝わってくる本だった。
駅に置かれているピアノ。人によって賛否両論あると思う。私は正直あまり好きではない。ここではそれは置いておいて、駅ピアノでピアノの練習ができるっていうのが、まぁ、非常識ではあるけれど、羨ましい環境だなと思った。今は電子ピアノばかりで、なかなか本物のピアノに触れる機会がないし。
登場人物の台詞に、よく聞く使い古された言葉だけれど、シンプルで優しい言葉で書かれているからか、この本で読むとすっと心に届いたものがあった。
◯「自分で考えて意見を持つことをすごく大事にしてるんだ。周りに流されたり、人のせいにして欲しくないんだって。」
◯「自分で考えて自分で決めた方が、後悔しないし、何より一生懸命になれるからね。僕の経験談。」
◯誰のために練習しているのか?
◯「あせらず、分解するんだよ。右手なら右手だけ、それができたら左手だけ。どちらも指がスムーズに動くようになったら、合わせてみる。そっか、問題は小さくして、それを一つずつつぶしていけばいいんだ。」
「なんだ、これってもしかして、ゲームといっしょかも。ボスキャラと戦うときは、急所を一つずつ攻撃してつぶしていくもんな。」そう気づいてからは、こつこつやるのがむしろ楽しいとさえ思えるようになった。
もし本当にこんな風な言葉がけが、子供の心に響いてくれるのならば、そして、練習を楽しいと思って、いや、楽しいとまで思わずとも、少しは練習してくれるようになるのなら、諦めずに声掛けをし続けようと思った。友達と、グループで一緒に取り組む部活などには真剣に取り組むことが出来ても、一人でこつこつと何かに取り組むことが出来る子供が、本当に少なくなって来ていると感じる。
わかりやすい楽しさだけでなくて、そこに内包されている厳しさの中にある楽しさも感じられるようになって欲しいと日々願っている。そんな世界の理想の形を夢見させてくれる本だった。