持田大志のレビュー一覧
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生産力主義的、ヨーロッパ中心主義的な思想家として認識されがちなマルクスの印象をひっくり返そうとする研究。
著者は一個上なんだけど、マルクスの研究者としてヨーロッパで出版した本がその後日本語で出版されるという流れに畏怖の念を抱くな。
資本論が未完に終わってしまったこともあり、マルクスの環境に関する考え方が見落とされている。しかし、晩年のマルクスは自然科学についての研究に熱心に取り組んでいたことがMEGAと呼ばれるマルクス・エンゲルス全集からわかる。マルクスの分析の範囲は社会の領域に限定されず、人間と自然の物質代謝にも及んでいる。
2部はマルクス主義とエコロジーに関する文献レビュー的な。
人新世と -
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アクター・ネットワーク理論やマルチスピーシーズ人類学など最近よく聞くキーワードが「自然」と「社会」の一元論と捉えられ、それらに対して自然を「素材」と「形態」の2面から捉える方法論的二元論の立場から批判を行なっている箇所は、批判的な視野を持って近年の思想を読み解く視野が開ける面白い論説だった。
一方、脱成長コミュニズムやコモンズ的な潤沢さに関する議論については、あくまで余裕のある先進国の人が想起するビジョンでしかないという印象。
既にしてコモンズが失われ、環境危機がスタートしている社会において、莫大な人口を抱えた状況で途上国の人がこの理論を受け入れることは到底なさそうな気がする。
あくまでマルク -
Posted by ブクログ
マルクスのノートから読み込み、マルクス経済学を現代に当て嵌めて考察する第一線のマルクス研究者である斎藤幸平氏。一般向けとは少し線を引いた学究的内容だが、同氏の学者としての本気(恐らく、そのほんの一部分だが)を垣間見るような読書だった。
地球は有限である。だから我々は競争する。競争するためのルールは概ね、資本主義でいこうという事になった。共産主義という選択肢もあったが、一国では成し遂げられぬ概念であり、結局、共産主義は、資本主義と競争する事になる。また、共産主義は、こうした有限性に対し、人口抑制の論理を内在化している。資本主義は、資本家のエゴによって有限性を無視して暴走し易い。勝手な解釈だが、 -
Posted by ブクログ
前著「大洪水の前に」と重複するところも多い気はするが、よりマルクスのテクストに深い入り込みつつ、晩年のマルクスの思想を再構築していく。
そのプロセスに知的好奇心が動きつつも、なんで今更マルクスが著作にできなかったことを今あれこれと推論しなければいけないんだろうという気持ちがしばしば起きてしまう。
マルクスが本当に考えていたことはこうなんですと言って、20世紀に破綻したと思われるマルクス主義を環境、持続可能性という観点から再構築しなければいけないんだろう?(そういう意味では、タイトルの解体というより再構築という方が相応しいと思う)
それって、マルクスの神格化ではないか?
という批判は、当