サイディヤ・ハートマンのレビュー一覧

  • 母を失うこと

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    自国でよそ者扱いされるアフリカン・アメリカンの著者がルーツであるアフリカ・ガーナをたどる旅の紀行文、にして既に現代ブラック・スタディーズの古典らしい。
    「故郷」ガーナに着くと歓迎どころか現地の人々からよそ者の扱いを受け、この結局どこへ行っても所在のない現実について大西洋奴隷貿易の捉え直しから旅の中で思考がどんどん変化していく。
    当時の奴隷となった人々を想像しようと遺構を巡るもそこにあるのは死者の不在のみで、著者は何度も失敗し絶望する。それでも残された記録からどうにか死者を捉え直し閉じられた歴史の中から救い出そうという試み(批評的作話と著者は呼ぶ)は学術的な方法を超越していた。
    ひとくちに奴隷制

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    2024年12月25日
  • 母を失うこと

    Posted by ブクログ

    アフリカ系アメリカ人の研究者が奴隷制度を研究するために、ガーナにわたり旅をする資産の物語奴隷になるとはいかなることか?霊性の後を生きるとはいかなることか?奴隷貿易の悲惨な記録から歴史をはぎ取られ、母を失った人々の声を時越えて蘇らせる紀行文学の傑作。
    アフリカ系アメリカ人は合衆国の人種差別から逃げようとしていた。ガーナ人は現在の貧窮から逃避を望んだ。そのために思い描いた自由に至る。道とは合衆国への移住だった。アフリカ系アメリカ人は期間と言う空想にしたり、ガーナ人にとってはそれは出発だった。互いに立っている地点からは、同じ過去が見えず、約束の地についての理想もまた異なっていた。奴隷貿易とヨーロッパ

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    2023年12月22日
  • 母を失うこと

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    本書は、アフリカン・アメリカン研究の作家・研究者であるサイディヤ・ハートマンが、かつて奴隷が運ばれた大西洋奴隷航路を遡り、ガーナを旅する紀行文学である。

    私たちが奴隷制をイメージするとき、アフリカが被害者、欧米が加害者、という構図で考えることが多いのではないか。しかし、実際はそんなに単純ではない。奴隷にするために人々を捉えたのは誰だったのか?それは、アフリカでかつて栄えた国々の王侯貴族や戦士たちである。これに奴隷商人が加わり、「人間」を売り物にすることで富を得ていった。では、奴隷にされたのはどんな人だったのか?まず、共同体からつまはじきにされた人が優先的に奴隷にされたことは想像に難くない。加

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    2023年12月14日