デヴィッド・ウェングロウのレビュー一覧

  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    第1章
     ホモ・サピエンスは唯一の現生人類ではなく、ネアンデルタール人やデニソワ人をはじめとする複数の人類種が共存し、交雑していた事実を示している。
    これにより、人類の起源は単純な直線的進化ではなく、多様で複雑なネットワーク型進化モデルで説明されるべきである。
     さらに、アフリカを起源とする「単一起源説」も修正が必要である。最新の化石発見と古代DNA解析により、人類はアフリカ以外の地域でも独自の進化を遂げ、遺伝的交流を重ねてきたことが明確に証明された。

     古代DNAの解析技術の進展は、人類の移動経路と交配の詳細なパターンを解明し、過去に存在した多様な人類集団が互いに影響を与え合っていたことを

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    2025年08月11日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    人類の歴史に安易なストーリーを付与して、狩猟採集から農耕へ、そこで「所有」という概念が発生したから支配構造が登場してきたという、この世界観を覆したのが本書。そもそも、直線的に所有を生み出す農耕へ突き進んできた訳ではない。また、狩猟時代に既に支配構造はあった。

    必ずしも支配構造があった訳でもない。必ずしも闘争があった訳でもない。黎明から既に人類は多様なスタイルにあり、一概には言えないものを、単純化して認知してしまっている。

    食べなければいけない。食料調達の方法は、環境や技術レベルにより、狩猟採集も農耕生産も使い分けていた。私は飢えのレベルにおいて、本来そこに人食もあったと考えたい。また、飢え

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    2025年08月03日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    人類に対する新たな歴史観の提示。
    無邪気なルソーが提示した人類でもなく、互いに闘争するホッブスが提示した人類でもない別な定義を行う。
    様々な研究成果をもとに提示しており、自分としては納得感があった。
    翻訳者の後書きで50ページ近くあり。それが理解の助けになる。

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    2025年03月22日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    ネタバレ

     やっと読み終わった、という感じ。だが、それに見合う本だった。世界の見方を変えてくれる本というのはそうそうあるものではないが、本書は自分にとってまさにそういった本の一つとなった。多分、何度か読み返してそのたびに考察のヒントを与えてくれそうな予感がする。

     一般に流布している人類史の見方として、1 人間集団はその規模を拡大するにつれて複雑化するため、やがて集団を制御するための非生産階層が必要となり、その階層が集団を支配するようになる。2 規模の拡大につれて支配層が分厚くなり、ヒエラルキーの度合いが増大する。3 農業などのテクノロジーにより、規模拡大が加速し、ヒエラルキー形成が加速する、といった

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    2025年01月19日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    学校で習った、新大陸の人達を、ヨーロッパ人が啓蒙しました的な人類史は、あくまでヨーロッパ的な視点。旧アメリカには、そうではない、ヨーロッパより、より自由な、より豊かな国家(に近い組織)がありましたよ、という本。旧アメリカ大陸では、ヨーロッパ人が来る前に、奴隷制が発生したり廃止されたりした形跡があるようなので、世界的に応用できたら、世界はもっと平和で幸せになると思いました。

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    2024年06月26日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    いい本なんだけど、どこからどこまでがグレーバーのアイデアで、どこからがウェングロウのアイデアなのかがあまりはっきりしていない印象があった。斬新な価値観、西洋中心主義への揺さぶりは、グレーバーが提唱せずとも西洋の文献には存在する。グレーバーがそのことを知らなかったはずはない。本当はもっと別の内容を、グレーバーが一人で書きたかったのかもしれない。

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    2024年04月14日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    考古学者と人類学者の共著のビッグヒストリー系なんだけど、ハラリやダイアモンドが前提としていることを否定する。
    ビッグヒストリーを書いてきた思想家はルソーとホッブズとの考えの間を行ったり来たりしてきたが、どちらも真実ではない。古代の人や未開の人は我々が思っているような未熟な人ではなく我々と同様に思索する人々だった。アメリカ先住民は西洋を批判していて、ヨーロッパ人は彼らから多くのことを学んでいた。社会的不平等に起源があると考えるが、それは農耕によって不可避的にもたらされたものではない。本当に問題にすべきは社会的不平等の起源が何かではなく、どうして閉塞したかにある。人類はそれまで様々な社会組織の間を

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    2024年03月20日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    暗黒時代とは、進化論の視点から現在を中心として歴史を観 察したときに現れる異分子を指している。本書は発展段階の 秩序空間に存在しえず、エラーとして意義付けされたすべて の可能性を肯定的に読み返す。すると、そこに現れるのは進 化の奴隷から開放された遊戯の人類史であった。

    個人的に、千のプラトーの直後に本着を手に取れたことが僥 倖だった。歴史の境界線を反復横とびする自由な欲望の形態 が、具現的な形で理解できる。

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    2024年02月10日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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     本文だけで二段組約600頁の大著、しかもその内容が帯によれば、「考古学、人類学の画期的研究成果に基づく新・真・世界史!」というのだから凄い。
     人類史20万年で分かっていることはごくわずか。しかし現実にはルソーの『人間不平等起源論』かホッブスの『リヴァイアサン』で示された発想の二者択一で、それをアップデートしたものが語られているに過ぎないと著者たちは言う。例えば、農耕の発明により「バンド」から「部族」へ、さらに「首長制」→国家へであったり、狩猟採集、牧畜、農業、工業といった生産様式の変化などなど。ベストセラーらとなったビッグ・ヒストリーの著者たち(自分も大変面白く読んだ)、ハラリ、ダイアモン

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    2023年10月24日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    ひとことで言えば「ビッグ・ヒストリー」への疑問、アンチの超大作だが、ハラリやダイアモンド、ピンカーなどをポップ人類史と徹底的に批判しているのが興味深い。
    遊戯農耕とシリアス農耕というコンセプトも大変面白い。わかりやすく直線的に語ることの弊害にも気付かされる。
    膨大で熱のこもった訳者あとがきもあるので、先にここから読んで全体の見取り図とするのも良いと感じた。

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    2024年11月13日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    我々の不平等な社会はいつ始まったのか?という問い。これを人類史の考古学的証拠を見ていきながら、なぜ我々の社会は閉塞してしまったのか?という問いへと定義され直される。その答えへの手がかりには太古の人類を現代人と同じような人間として認識しなおし、これまでに存在した多様な社会を無視せずに包括する必要性がある。近年人気を博しているポップ人類史に対する批評であり、改めて構造主義的見地から人類史を捉え直す名著。

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    2024年07月13日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    富が権力につながらない社会や農耕をあえて選ばない社会など考えてもなかった視点が次々出てきて新鮮だった。
    がしかし、長々しく要点がわかりにくいスタイルの文章についていけず、半分ほど読んでそっと閉じましたʕ⁠·⁠ᴥ⁠·⁠ʔ

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    2024年12月14日
  • 万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~

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    挑戦的な書。

    なぜわたしたちは単一のありように帰着してしまったのか?
    閉塞を打破する視点の転換。変化の可能性。

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    2024年11月09日