実はアダムスファミリーの実写映画版をじっくり観たこともなければ、アニメや漫画も見たこともない。当然ファンでもない。ではなぜ、ahddamsさんのレビューが面白かったからと言って読む気になったのかと言えば、少し回りくどい説明が必要ではある。
今年は柳田国男の「山の人生」を本格的に読んだ年だった。「遠
...続きを読む野物語」もそうなのであるが、前期柳田は日本人の「怪異なるものを見る視点」を突き詰めた人物だった。それは即ち、「日本人とは何か」を突き詰めることに繋がる。その一環として、アメリカで長いこと「親しまれてきた」怪異とは何かを見ることも、益あるのではないかと言う「回りくどい」思考が私にはあるのである。
多くの日本人が彼らに初めて出会ったのは、私同様、映画ではなくて95年ホンダオデッセイのCMだった。「何あれ?西洋のお化け?」その割には実在感ある。
一回死んでしまった幽霊は、2度と物理的な実体を持たないのが日本である。しかし、西洋では物理的に悪さはするわ、彼らの様に屋敷を構えて有名な根城を持ったりもする。有名になればなるほど愛されるのは、世界共通。そういう意味では日本の「妖怪」に似ているけれども、彼らの姿も性格もなんやかんやもほとんど人間なのである(学校にも通っているらしい)。細面の美女のモーティシアと夫のゴメスは一応愛し合っているし、子供のウェンズデーとパクズリーは、毒盛りとか拷問台つくりとかイタズラはするけど、愛らしい。
この全集は、アダムスさんが描いたアダムスファミリーの画業の全貌を初めてまとめた本の翻訳らしい。アメリカ1コマ漫画の真髄(キャラ設定、かなり捻くれた主張)が味わえる、味ある一冊になっている。
映画版やアニメでは出てこないという「お化け(The Thing)」が、この画集では1番のお気に入りになった。決して全身は出てこない。ある時は手だけ出てきてドーナツ盤を取り替えたり、屋敷のバルコニーから見下ろしたり、車から顔だけ覗かせたりしていて(表紙には左隅に居る)、ファミリーさえ気がついてない様に思えるのがなかなかユニーク。
結局、西洋人は「人間」を信頼しているのだ。人間>自然なのである。でも、日本人は人間<自然なのだ。でも、死人もやがて自然の一部となって物体化する。そうなると、妖怪となって現れるのだろう。