八鍬友広のレビュー一覧
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著者のメインの研究は近世の手習いのテキストである「往来物」のようだが、メソポタミア文明や中国をはじめ、世界の文字と識字の歴史についての該博的な知識が盛り込まれていて、読みごたえがあった。往来ものに関しては、手紙が識字学習のツールとして世界的に広く用いられてきたとの議論が大変興味深い。私は「文字=権力者のツール」とイメージしていたが、手紙についてみるとそれは早計というか、近代的な思考が過ぎるかもしれない。本書において往来物の種類がかなり豊富だったことや、近代初期にもしばらくは使用されたことがわかり、近世と近代の連続性・不連続性について学んだ。また、識字や識字率を定義することの困難さや、「近世の日
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よく日本の近代化の条件としてリテラシー(読み書き能力)の高さということが指摘されるが、本書はそのリテラシーの歴史について「往来物」をキーに読み解いていく。
往来物の「往来」という言葉が手紙文のやり取りにその起源をもっていたことは知っていたものの、『庭訓往来』『商売往来』などは中世から近世にかけての「教科書」という認識しかなく、「往来」がもつ歴史的な意味と役割には目が向かなかったのである。著者が言うように近代への連続性という視点からしかものを観ていなかったということであろう。
著者は幕末の日本の識字率が世界一だったという俗説には根拠がないと指摘しつつ、歴史の多面性にあらためて注意を喚起してい -
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去年から人をインタビューした録音をテキストにしてくれるサービスを使っています。最近はテキストをコピペして入力すると人工音声で読んでくれるのも時々使用しています。使えば使うほど文章品質、音声品質が上がっていくのはAIの時代ならでは。それこそchatGPTやGoogle翻訳使えば、他言語や機械ともコミュニケーションできる時代なのかもしれません。そんな時代の「読み書きの日本史」。先の述べたテクノロジーは実は言文一致体という「読むこと」と「書くこと」が重なっている文体を前提としていて、それが日本で完成したのは1920年ごろであって(はじまりは1887年の二葉亭四迷「浮雲」)、それまでは「話すこと」と「
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日本の歴史の中で、読み書きがどのように推移し、
社会に広がっていったのかを、詳細に解き明かす。
第1章 日本における書き言葉の成立
第2章 読み書きのための学び
第3章 往来物の隆盛と終焉
第4章 寺小屋と読み書き能力の広がり
第5章 近代学校と読み書き
図版出典一覧、主要参考文献有り。
日本語の書き言葉の起源は、外国語である漢字の移入から。
漢字訓読で日本語のように読む工夫。変体漢文で和文へ。
宣命体。万葉仮名から片仮名、平仮名、漢字片仮名混じり文へ。
候文体、御家流が近世、全国どこでも使える斉一性を得る。
漢籍学習の時代。読み書きの学びの始まりは習書木簡から。
往来物の時代。手紙の文例集 -
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<目次>
第1章 日本における書き言葉の成立
第2章 読み書きのための学び
第3章 往来物の隆盛と終焉
第4章 寺子屋と読み書き能力の広がり
第5章 近代学校と読み書き
<内容>
日本語は漢字・ひらがな・カタカナと種類の多い上、漢文を基本形としていた古代、当然ながら皆が読み書きの出来たはずはなく、段々に話し言葉(口語体)に近づくものの、言文一致体が明治に登場するまで、時間がかかった国だ。確かに授業で、日本人の識字能力の高さを、江戸時代の「寺子屋」で評価をするが、実態はそれほどでもない(特に女子の能力)ことがよくわかったし、納得した。これに方言の話を入れると、もっと説得力が増すかも知