ひとつのことで深く悩めないタイプだ。悩まないのではなく、悩めない。少女マンガの傑作(傑作です。異論は認めない)「天使なんかじゃない(矢沢あい)」のなかで、まみりんが翠に「あなた悩んで夜寝れなかったことなんてないでしょう?」と聞くシーンがあって、翠の「昨日の夜は寝れなかった」というモノローグに続くんだけど、あの明るくて、前向きに進んでいく翠ですら、寝れないことがあるのか!と当時高校生だった私には、結構な衝撃だった(詳しい話は、マンガ読んでください。傑作なので)。
そこまで深い悩みがなかった、ある意味幸せじゃないか、とも思うのだけれど、その後の人生でも結局「寝れないほど悩む」ことがないまま、今に至る。
寝たら頭がすっきりして、ちょっと解決に進むよね、あとは行動しよう!という、ポジティブタイプ、とも言えるし、なんかこう、思考・思慮が浅いのでは、とちょっと後ろめたい気持ちにもなる、そんな人生。
なので、と続けてよいのか分からないけれども、人生のどん底、絶望の淵で、グルグルしているようなタイプの小説は苦手で、避けてきたところがある。
この本は、もっとクスっと笑えるタイプの本かと思って手に取って、確かにユーモアにあふれたものではあるのだけれど、作家それぞれの絶望を紐解き、なぜその言葉が、こちらに響いてくるのかを丁寧に解説したものだった。
そのベースにあるのは、話しているお二人の経験で、それぞれ病気で苦しんだからこその想いや実感が乗っているからこそ伝わるものがあるんだろうとは思う。
でもそれは、「病気の経験があってよかった」わけでは決してないし、その経験がなくても、なるほど確かにそういう風に響くのは分かるなと、これまでの読書で抱いていた苦手意識をふわっと軽くしてくれたように感じる。
私は、小説を読むということをもっと感覚的にやってきたところがあり、それをきちんと解説することに違和感を持ってきたのだけれど、あぁ、文学を学ぶってきっとこういうことなんだなと初めて思えた経験でもあった。
もとはラジオなので、それも聞きたいなと思ったのだけれど、なにせ耳から入った情報を処理するのが苦手なので、きっと文字で読んだ方がしっくりくるんだろう。
得るものの多い読書でした。