デイヴィッド・J・チャーマーズのレビュー一覧

  • リアリティ+(プラス) 下 バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦

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    (上巻より)
     第5部はいよいよ本書の核心とも言える「心と意識」の問題に分け入っていく。まず著者は、VRではデカルト二元論が成立する可能性を指摘する。VR環境下のユーザーはバーチャルな身体を持つが、その脳は身体とは分離されVRの外にある。つまりVRでは事物を支配する物理学と、行動を支配する心理学の2つのプロセスが並走しているのだ。エリザベト女王はデカルトに宛てた書簡の中で、「物質でない心がどうやって物体を動かすことができるのか」という素朴だが厄介な質問をぶつけているが、無論、神経科学による究明が進んだ今日では唯物論がこの疑問を解消する。しかし、バーチャル世界を前提とすると様相が異なる。バーチャ

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    2023年08月20日
  • リアリティ+(プラス) 上 バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦

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     バーチャルリアリティ(VR)に関する本となるといかにも自然科学主義・還元主義的なものを連想してしまうが、本書のテーマはなんと〈形而上学〉である。「この世界には我々に現前してくる以上のものが備わっている」という形而上学的テーマに、科学革命以降のパラダイムを存分に適用しながら丁寧に取り組んでいく。〈テクノフィロソフィー〉(哲学はテクノロジーに関する新しい問いに光を当てるのを助け、テクノロジーは哲学に関する古い問いに光を当てるのを助ける)の理念のもと、VRを題材に昨今の思想界が敬して遠ざけてきた形而上学に真正面から取り組んだ意欲作と言える。

     本書のメインテーマが形而上学であるということは、議論

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    2023年08月20日
  • リアリティ+(プラス) 下 バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦

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    下巻は、より形而上学的に思考を深めていく。著者は「哲学的ゾンビ」でも有名なデイヴィッド・J・チャーマーズ。意識の学究が専門だ。「哲学的ゾンビ」とは、肉体に意識を持たない人間という思考実験。アバターやVR世界をヒントとして、意識の探索は続く。

    ― 哲学者のモーガン・ラックは2009年の論文「ゲーマーのジレンマ」で、ほとんどの人は、バーチャルの殺人(ノンプレイヤー・キャラクターを殺すこと)は道徳的に許せるのに、バーチャルの小児性愛は許せないと指摘している。性的暴力も同じだ。1982年に発売されたカスターズ・リベンジアタリ社のアダルトゲーム「Custer's Revenge』では、ネイテ

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    2024年09月25日
  • リアリティ+(プラス) 上 バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦

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    我々が生きているこの世界は、実在する世界なのだろうか。誰かの夢の中、あるいは、データ世界のシムピープルなのではないだろうか。そんな問いに挑戦するのが本書。「世界は実は5分前に始まったのかもしれない」という世界5分前仮説を唱えたのはバートランド・ラッセル。しかし、それに対して反論できない我々は、確かに虚構の中の虚像なのかもしれない。

    ― SFと哲学において強烈な思考実験は、シミュレートされた宇宙というアイデアだ。もしも私たちのいるこの宇宙がシミュレーションだとしたらどうか?何が起きるだろうか?
    ジェームズ・E・ガンの1955年の小説「裸の空(The Naked Sty)」は、ヘドニクス社の話(

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    2024年09月24日
  • リアリティ+(プラス) 下 バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦

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    トロッコ問題などやっと誰でもがわかる問題がでてきた。ミルグラムなどの実験も出てきたので少し心理関係のことが説明されている。
     ただ、学部生が読んで卒論に仕えるか、ということでは不明。

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    2023年09月09日
  • リアリティ+(プラス) 上 バーチャル世界をめぐる哲学の挑戦

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    内容などから、シミュレーション仮説の読み物かなと思っていましたが、結構哲学寄りの本でした :)

    ライトな科学書よりは表現も哲学寄り(でも、難解というほどではなかったです)で、ボリューム感もあり、読むのに結構時間かかりましたw

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    2025年03月16日