この本のタイトルに惹かれて読んでみた。
キュリー夫人は小学生の時の何の教科書だったかは記憶にないが、『暗闇の中に光る物質を見つけたのが、ラジウムだった。』的な内容は記憶している、その時の挿絵とともに。
しかし、放射性物質の発見者くらいしか彼女のことは知らなかったから、新刊で出たこの本を読みたくなった。
もちろん翻訳本だが、書き手のクロディーヌ・モンティユさんの書きぶりは少々まどろっこしく、3人の歴史的背景を説明するくだりは重なりもあり、登場人物も多くなかなかな本だった。
しかし、読後は知らなかったことを知りえた満足感に包まれた。
聡明な3人の女性たちの生き様が迫ってくる気がした。
そしてまた、この3人はキュリー夫人は第1次世界大戦を娘2人は第2次世界大戦を駆け抜けた人物とも言える。
放射性物質を平和以外に活用することを望まなかったキュリー夫人だが、1945年の長崎、広島の原爆にも触れてあった。
また、キュリー夫人の紹介のくだりに渋沢栄一たちが訪れたパリ万博も出てきた。日本の幕末の頃にフランスでは放射性元素の研究がされていたことになる。
また、ソビエトの侵略主義やNATOの発足など、今のロシアウクライナに通じる素地も出てきたり、よく知らない、日本だけでない、ヨーロッパの近代史に触れられたのも良かったように思う。
難しい内容ではないが、かいつまんで本のことを話そうとすると、登場人物名は再現できないくらい溢れている。
しかし、信念をもった彼女らの活躍が現代の医療への功績を残したことは深い意味を持つことを知り、頭が下がる思いもした。放射能が原因でキュリー夫人も娘一人も命を落としたのは残念でならないが、先駆者の生き様がしっかり描かれた本でもあった。また、日本と同様に男性優位の社会や考え方とも戦い続けたキュリー夫人らの行動や考え方を通して、欧米の女性解放史についても考えを馳せれたことは予想を超え読みごたえがあった。