桂幹のレビュー一覧
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世界に冠たる日本の電機産業。その凋落の原因を探る、シャープ、TDK父子2代の体験から考察した日本企業の失敗の本質。
昭和から平成、日本の電機産業の衰退はあまりにも顕著。筆者とその父の体験に基づき本書は原因を五つの大罪にあるとする。誤認の罪、慢心の罪、困窮の罪、半端の罪、欠落の罪そして筆者の提言。
ビジネス書はほぼ成功談というのが勝手な印象だが、本書は筆者が振り返る今となってはのターニングポイントを語る。世代は異なるが同じ時期にリアルタイムに生きていた自分にも身につまされる。
直視したくない現実。日本はこの低迷から立ち上がる日は来るのだろうか。我々世代の大きな課題。 -
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著者の言っていることは、業界が異なる私の実感とも一致する。最後の提言もおおむね同意できるが、まず最初にやるべきは経営者の評価でそのあとにセーフティネットの整備、規制の緩和と続かないと、これまた都合よく骨抜きにされた仕組みができあがりそうなので、もっとそこを強調した方がいいのではないかと思った。けっこう根源的なのは、日本人の議論の下手さなのではないだろうか。主張と人格を切り離すこと、(自分の考える)メリットとデメリットを挙げ、メリットが上回ると考える理由を提示すること、と、重要なのはこの二つだけなのではないか。そしてこれが出来ない故に、現実の評価と対応策の評価がまったく的を得ていないことが一番の
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元TDK社員の方による反省も含む分析と提言。
・デジタル化の「本質は『画期的な簡易化』」(P.20)であり、必要なのは「手間取ったことが簡単にできる、時間がかかったことがすぐにできる、莫大な出費が必要だったのが安価でできる」など「工場、病院、建設現場…で、『画期的な簡易化』を実現できる製品やサービスを提供する」(P.52)こと。「高品質、高性能、高付加価値」に「拘泥し、ユーザーの本質的なニーズに目をつぶったことが日本の電機業界が凋落した原因の一つ」(P.44)。
・日本の「電機メーカー各社」が「揃いも揃って同じような袋小路に入り込んだの」(P.222)はなぜなのか。それらに共通するのは「日 -
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1.この本を一言で表すと?
電機産業の実体験から語られる「失敗の本質」。
2.よかった点を3~5つ
・デジタル化がもたらした成果を見れば、その本質は「画期的な簡易化」だとわかる(p20)
→この「画期的な簡易化」という本質を自分自身も見失わないようにしたい。
・一度身についた慢心はインクの染みのように簡単には消えない。(p79)
→稲盛さ和夫が言うように謙虚さはいつも忘れないようにしたい。
・エンゲージメント(p171)
→エンゲージメントが企業経営の様々な所に影響してさいるのは初めて知った。
・第六章 提言(p220)
→著者の提言はどれも同意する。特に雇用の流動性を高めることが賃上 -
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著者自身の経験に基づき、日本の電機産業の盛衰の理由や実態、そして未来への提言が濃密に詰まった一冊。久しぶりに当たりの新書。
本書に出てくる日本企業の問題・課題は電機業界のみならず、いわゆる「JTC」と呼ばれる企業に今なお蔓延していると実感。
日本の労働者のエンゲージメントが低い原因の一つに、終身雇用・年功序列・メンバーシップ制の雇用環境と、自己決定感の欠如が挙げられており、その通りだと思う。
日本型と米国型の雇用制度の「いいとこ取り」が出来れば理想と著者は言うが、それには必ず何らかの痛みが伴う。それを実行できる政治家の度量&度胸と、「議論して最善策を見出す」プロセスを許容する世論が必要。 -
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どこを読んでも痛いことが書いてあって反論もできない的確さなので、泣いちゃう。
電機業界のことを書いているけど、他の業界であっても思い当たる節があるのがツラい。
そのツラさから目を背けているから失敗が続くのだという指摘もあって、逃げ道がない。
平成版『失敗の本質』といえる本なのだが、よくよく見ると昭和版と似たような過ちを指摘している。
日本の組織が陥りやすい弱点を書いているということなのだろう。
著者自身はTDK出身で、シャープ副社長を務めた父親からのヒアリングと合わせた一冊。多分に個人的な経験に基づく内容なのだが、それでも読み手に「本質的だ」と感じさせるのは、いかに日本の組織が同じような -
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部下をリストラした自らの会社人生を顧みて、本著を敗者の書いた本と述べる著者。その序文でグッと引き込まれる。世には成功者のノウハウ本が溢れる。しかし、失敗こそ教訓だと。アメリカ企業にはエグジット・インタビューという制度、退職する社員との面談がある。本著は、謂わばエグジット・インタビューのような本だ。
電気産業が直面した課題の一つは、製品の均一化。例えば4Kテレビならどの製品も似たり寄ったり。物量と低コストに要求が変わる中、過剰品質で高コストな体質を転換できず、海外勢に弱みを突かれた。過剰に多機能を追求し、良いものは売れるという信仰が製品のシンプルさも損なう。やがて人員整理によるコストダウンや選 -
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本書の冒頭にかかれているように、失敗から学ぶ。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。貴重なビジネス系の失敗学。筆者自身はTDKで当事者として記録メディアの撤退を経験。また、筆者の父からシャープの話を聞き取っていて、非常に具体的だ。当然、日本の現状は「日本すごい」「日本ダメポ」のような単純な話ではなく、複合的な要因なのだが、この40年の日本と世界の政治と経済の動きを振り返り、悪かったところを反省し良かったところに光を当てる。全体を通して目新しい意見ではないが、あらためて真摯に受け止めて、自分の考え方や行動を見直していくきっかけとなる。
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実体験の部分が秀逸。
第1章、2章のあたりは著者の体験からくる結論は説得力がある。
体験の断片をつなぎ合わせていくともっと大きな提言
ができる可能性もあったと思うのに惜しい。
とはいえ、記載された失敗体験には価値がある
電機産業の衰退はここにある通り複数の要因があるとは思う。
特に大きいのは1章のニーズとシーズを見誤り続けていることにある。
アナログからデジタルへの変換は、後発企業に圧倒的に有利であり、先発企業は
イノベーションのジレンマの立場に追われることになる。
先発企業の先行者優位はデメリットとなり、人件費、設備費等は、重しとなる。
市場が何を欲しているかを正確に把握しながら、後発企業 -
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ネタバレ日本の製造業の衰退を分析。そこに通奏低音として存在するダイバーシティ、エンゲージメントの欠如という課題への解決策として、労働における自己決定権の大切さを説く。
解雇条件の厳格性によら、雇用の流動化規制が強いことは、中高年ビジネスパーソンにとって、安定を持たらすが、現在の時勢では、賃上げの対象としての優先度が低いこと、現状に不満があっても転職機会を得にくいため我慢するしかないなどのデメリットが顕在化しており、著者の主張に同意する賛同する人は少なくはないと、思った。
製造業に特化した処方箋もお聴きしたかったところ。次回作に期待したいです。 -
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ミッションとビジョンは違う。
ミッションとは
エンパイアステートビルの屋上に立つ
ビジョンとは、
5年後に飛行機でニューヨークに行っている自分と設定するのがビジョン。英語を勉強する、お金を貯める、パスポートを取る、ホテルを予約するなどをやることが具体的に見えてくる。
ビジョンは時間を区切ると良い。
国内で販売してるテレビを2005年までに液晶に置き換える。
これがシャープのビジョンだった。
ビジョンにもリスクがある。それ以外のことがほかに置かれる可能性があるのだ。
何よりも大切な事は、腹をくくることである。
社是、夢、勇気、信頼、俺はアンパンマンじゃねー。抽象性も大事だが何より具 -
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書かれてあることの部分部分は多分正しい。ただ、5つの大罪に網羅感がなく、無理やりこのフレームに当て嵌めてあるものもあって、全体としては納得感に欠ける。
特に最後の提言はアメリカ式のドライな雇用政策を全面的に導入するというものだが、それは著者が信奉するボトムアップ式の組織と整合しない。半端の罪で書いてあるように、いいとこ取りは機能しない。アメリカ式を目指すなら教育システムも移民政策も何もかもアメリカに合わせないと、どこかで歪みが生じる。著者にその覚悟があるとは到底思えない。
自分が会社に入ったのは、バブル崩壊の翌年。電機メーカーではないが、凋落の経過はTDKと軌を一にする。でも今から振り返って