キリスト教絵画を含む西洋美術の「専門家」による解説本は数あれど、一介の神父によるこれほどユニークな美術書は前代未聞である。なんせ掲載されたほとんどの宗教に吹き出しが付いているのだ。そう。まるで誰もが一度は経験したであろう教科書の落書きのノリ。
『受胎告知』のマリアには「あら、やだ、嘘でしょ?」
...続きを読む、『最後の晩餐』のペトロには「ゆ、許せねえ!」、『バベルの塔』には「身のほど知らずめ!」といった具合。写実的な画風と漫画のような台詞とのギャップがいい。
イエスとアンパンマン、マリアとAKBをめぐる比喩なども、一信徒の身では畏れ多くてできそうにないが、不思議と聖書の登場人物に親しみを覚えてくる。さらに、告解の内容を話したら聖職停止だとか、ミサで使う赤ワインは好きじゃないとか、業界裏話的なぶっちゃけトークも秀逸。
出版後、さすがに身内の「関係者」からはお叱りを受けたらしい。いや、叱られたっていい。見慣れた絵画を新たに解釈することで、隠されたキリスト教の魅力を存分に引き出したことには違いないのだから。(松ちゃん)