中川千帆のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
映画はずいぶん前に観ており大好き。細かい内容は忘れていたが、予告編を改めてyoutubeで観てみると、かなり原作に忠実だったことが分かる。過去から未来への時間軸に沿って、6つの物語が展開される。それぞれとっつきにくいが、慣れて面白くなった頃に一つの物語が終わる。一応各章の繋がりはあるが、前章が本や映画の題名として出てきたり、その程度。一つひとつの物語は面白いが、繋がりが希薄なためにこれが一体下巻でどのように収斂していくのかが楽しみでならない。難解という感想が多く読むのを躊躇っていたが、慣れればそうでもない。要は相性のようだ。個人的には「5章ソンミ451→6章スルーシャの渡し」の流れが好み。え、
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Posted by ブクログ
借りたもの。
上巻とは対照的な章立て。時間軸は遠未来から過去へと向かう。
登場人物たちは己の物語の中でふと其々の作品に関わるシーンを思い出し、それを布石に過去に遡るような時間軸の章立てだ。
しかし、各々の物語の中で時にそれは覆される。
過去と未来の時間軸を超越する様は、世界を、歴史を俯瞰で捉えている。
弱肉強食、社会の体制と革命――
人間は生きるために文明を築いたようだが、時に文明によって虐げられる。それに対し否と叫び生きるために闘う人間……
未だ解決できない人間の原罪と苦悩を投げかける。
『ユリシーズ』を思わせる文書は同時に、人間のコミュニケーションの多様性を強く意識させた。
それは触れ -
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Posted by ブクログ
借りたもの。
6つの物語は、日記、手紙、小説風、文学パロディ、対話形式、会話調と、それぞれ異なる表現方法が使われている。
ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』の文体模倣の形式を取ったこの小説は、細かいディティール、アイテムが相互に影響し、個々の物語が断絶せず、繋がりを持ち、壮大な時間軸を奏でている。
これは人類の歴史というものが、壮大な記録が受け継がれ、後世に影響していることを暗示しているようだった。
この本を私は映画から知った訳だが、これを読むとあの映画がいかに良くまとまっている、限られた尺の中で原作を忠実に表現している事に感嘆してしまう。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ新聞で絶賛されていたのでドイツにて映画館で12月に鑑賞。観賞後最初の感想は「原作がすごく面白そう」。読んでみたくなった。
私が一番好きなのは、老人ホームのシーン。上質なコメディといった感じ。逃亡した老人たちがサッカー観戦中のスコットランドのパブに入り、客を見方につけるのがポイント。
これだけいろいろな要素を大きな混乱なく一つにまとめて、世界はつながっているという世界観を表現仕切っているのがすごい。
その世界観を表現する上での試みなんだろうけど、同じ役者に何役もやらせすぎ? 特殊メイクを施し、エンディングを見るまでわからないようにしてるけど、ヒューグラント演じる顔の皮膚が垂れた金持ち老人の役と -
Posted by ブクログ
時代も舞台もジャンルもスタイルさえも違う6つの物語がシステマティックに練り上げられた小説。映画にもなるくらいなので、こういう構造がかちっとした小説には珍しく、それぞれの話が派手めでドラマティックだったりする。
冒険風味のサイケな航海日誌から、貧乏を脱出するために有名音楽家の屋敷でエロティカルに立ち振る舞う音楽青年の話、スパイ的陰謀渦巻くサスペンス風味満載の脱原発的社会派ドラマ、借金取りから逃げるためにドタバタと逃げ回るおじさんのスラップスティックコメディ、クローンが精神的に上昇して革命家のイケメンといい感じになりながら世の中を変えようとするSF、んで、未来のその先を舞台としたやるかやられるか