玉手慎太郎のレビュー一覧
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ジョン・ロールズ『正義論』の入門書。『正義論』のエッセンスを簡潔かつ的確にまとめており、非常に読みやすかった。
学びになった点を幾つか挙げるとすれば、
・ロールズが論じる「正義」とは個人の判断基準ではなく、「社会正義」、社会を支える諸制度が正義に適っているか否かということ。
・「公正としての正義」とは、正義の原理を導き出す手続き、方法が公正であるということ。
・ロールズは「自尊心」を最も重要な価値の一つとして考えている。それは「自尊心」によって、人は自分自身の人生計画に遂行する価値があると信じ、かつそれを遂行する才能が自身に備わっていると信じることが出来るからであるということ。
などである。 -
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別の本(倫理学入門)で出てきた「無知のヴェール」という概念が好きすぎて、書店でジョン・ロールズの名前が見えて即買い。平易な文章なおかげで政治哲学苦手な俺でも楽しく読めた。
あとがきにて著者の「学問への憧れとわくわく感を与えられているか」という文を見てなんか感動した。自分がなりたかった大人っぽいからかな。
社会正義を実現するにはどうすればよいかということをジョン・ロールズは考え、『正義論』に著した。その超入門書みたいな位置づけがこの本。社会が成り立つためには正義が必要であるがその絶対の正解のようなものはなかなか見つけられないだろう。そこで、「自分にとって」最善の社会ではないかもしれないが「誰に -
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(2024/10/10 2h)
ジョン・ロールズ『正義論』の概要をまとめ、正義について論じる第一歩を踏み出すための本です。
「無知のヴェール」
「正義の二原理」
「社会的基本財」
『正義論』自体、哲学の本として扱われるものの中では比較的平易な言葉で書かれているもので、前提知識をあまり必要としないようです。
そのため、直に当たっても理解できない内容ではないのかもしれません。
しかし、800 ページって少し圧倒される分量ではあります。内容を新書にまとめた本書はページ数の課題を解決してくれます。
「正義」について議論する上で共通言語を手軽に拾って広める上でも、優れた1冊だと思います。 -
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無知のヴェールを仮定して、万人が自らの状況に盲目としたなら、どのような社会契約を選びうるか。それが社会が達成すべき正義である、とする考え方は、著者の語るようにあるべき社会の議論の土台として確かに最適であろう。
問題は、何が平等であるか、の合意が容易でない点に有るのだろう。もしかすると、ほとんどの人は正義よりも善を(半ば無意識も含め)優先するためかも知れない。ロールズが語るように、本来は善を追求するための場である社会を正義によって整え、その中で正義の範疇においてそれぞれの善を追い求めるべきなのだろう。だが、往々にして人は何が善いか、もっと言えば自分にとって単に心地よいと感じることを優先させる。そ -
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ネタバレ生活習慣病のような慢性疾患の予防、医療費の削減等の様々な観点で健康政策は有用。しかし、どこまで人々の健康に政策として関与できるのかというのが論点。現在にもまだホットトピックである新型コロナウイルス感染症によるパンデミックをとりあげながら、緊急を要する公衆衛生のパターナリズムについても論じられている。
健康であること、健康を追求することは揺るがなく達成されるべきものであるという認識が自分の中であった。それは自分自身が医療や公衆衛生の分野を専攻しているというのもある。しかし、健康によって生きづらさを感じている人を見逃してしまわないように、常に思考を巡らせるということはとても大切だと思った。