森を形作っている植物、菌類、昆虫、動物たちの驚くべき世界を、美しいイラストレーションとともに柔らかな語り口で伝えてくれる。
特に興味深かったのは「無言の会話」の章。地面の下で草や木が会話しているということに驚いた。草や木は菌糸を経由してさまざまな物質をやりとりしていて、その物質には栄養だけでなく「
...続きを読む情報」を伝える意味もあるそうだ。
例えば、チョウやガの幼虫に食べられると葉っぱから決まったにおいを出す植物があり、そのにおいはSOSの信号としてヒメバチのもとにとどく。ヒメバチはその幼虫に卵を産みつけ、幼虫は死ぬ。SOS信号によって、ヒメバチと植物のWIN-WINの関係が成り立っている。
こんなふうに、この本は「森」の不思議を、いろんな視点からたっぷり教えてくれる。
11のテーマ内の構成は全て、「見開きのイラスト」→「テーマ」への導入文→多様な視点から説明という具合になっている。長い文章がずっとつづくのではなく、11のテーマごとに短い文章の集まりで本が構成されている。また、絵も豊富なため、読むことが苦手な子も手にとりやすいかもしれない。ただ、読んでいると、雑多な情報をつまみ食いしているような感覚になり、逆に内容を掴みづらい気もした。
ちなみに、意図せず『森は生きている』の次に読んだ。『森は生きている』では、「森は人間にとって不可欠な存在」だというメッセージを伝えている。それに比べて『ふしぎの森のふしぎ』では、森に生きている生き物のことを深堀りして「森の不思議」を深掘りしている。同じ「森」を描いている本でも、かなり方向性が違い面白かった。もちろん、共通している部分もあり、理解が深まった。
こんなふうに、同じテーマの2冊をつなげて読んでみるということを、子どもたちに教えたい。