設定に無理がある
人気MMO RPGで「不遇職」とされる糸使いだがPvP一位の主人公が、ログアウトできなくなったゲーム世界で復讐を企むストーリー。
まず、ソーシャルゲームですら攻略ページがごろごろ出てくるこの時代に、人気MMO RPGでPvP一位になったキャラの職業の解析などが進まないのはあり得ない。
ゲームが過疎化しているか、強いがPvPには興味がないとするか、せめてPvPで一位を獲った瞬間にログアウトできなくなった、とするべきだったと思う。
(主人公はサーバで唯一の糸使いという設定のため、ゲームの運営は一人のプレイヤーのためだけに糸使いという職業へのアイテムなどをアップデートし続けていることになるため、それでも無理があるのだが……)
また、主人公以外の人々もログアウトできなくなっており、死んでもセーブポイントからやり直したりできないため、ゲーム世界での死=現実でも死ぬと考えられている。
にもかかわらず、主人公が人を殺すことへの抵抗がなさすぎる。
主人公は現代日本の社会人という設定なので(よりによって看護師である)、この人権意識のなさはリアリティが皆無と言わざるを得ない。
そのうえプレイヤーキャラクターをあっさり殺しておきながら、NPCについては「望まぬ結婚を強いられそうになっている」というだけで見返りもなく助けようとする有様で、主人公の倫理観が意味不明になっている。
また、復讐する相手として、主人公のことを笑った(が、その後謝罪し、壊されたアイテムの補償も申し出た)ノヴァスを対象に入れているのに、あきらかに悪意でもって冤罪を仕掛けてきたピエニカのことは一切出てこないのも、復讐譚としてすら一貫性を欠いている。
それらと比べれば些細なことではあるが、物語冒頭ではぐれた親友(同性)を探すそぶりもなく、異性キャラばかり増やしてハーレム展開を繰り広げるのはたいへん印象が悪い。
フィクションであるからリアルである必要はないが、最低限のリアリティは欲しい。
コミカライズ担当は頑張っていると思うので星2つ。