セラピストである著者が依頼者カップルによく言うという
「あなたたちの最初の結婚は終わりました。
さて、これから二度目の結婚生活をともに築きたいと思いますか?」
との言葉どおり、不倫が夫婦関係に及ぼす正負ふくめたさまざまな影響を示す内容。
夫婦(同性婚カップルも多数登場するが用語は慣用にてお許し下さい)のことだからその夫婦に任せればよいというにはあまりに当事者の苦しみは大きく、しかし原因は不倫をした当事者だけにあるのではない。
そこに善悪や責任といった安易な線引きをせず、豊富なカウンセリング経験から引き出したグローバルかつめちゃくちゃ豊富な実例から、不倫が夫婦にもたらす可能性(繰り返すが正負ふくめて)を描いている。
著者の関心はもともとセックスレスの解消にあり(有名なTED Talkもその話題)、不倫について語るときも、関係が冷ややかに死んでいる状態に比べれば、不倫はそれを揺り動かす可能性があるという観点に立っているように読める。ただし著者が言うように、
「不治の病になったことで人生がポジティブな方向へ一変するような経験をする人も多くいる。とはいえ私は癌になることを人に勧めないのと同じくらい、不倫することも勧めない」
わけだが。
かつてと異なり、現代の結婚は配偶者に「互いにとってのソウルメイトから恋人、教師、セラピストに至るすべて」になることを求めるようになった。そうできりゃいいですけど、難しいですよそれは。その難しさの発露の一つが不倫であって、不倫は現代の結婚に伴う約束というか契約に違反する行為というわけだ。
生育歴やバックグラウンドにしている文化によって、夫婦間に小手先の対処じゃどうにもならない齟齬が実は存在したことが、不倫によって明らかになる、そういう実例も出てくる。不倫は「悪しき不誠実な人間が一方的に犯す罪」とは違う何かだなという新たな認識を得た。
また、不倫が大ごとになるのは、自己の承認を配偶者にだけ求めているからだというのもなかなか耳の痛い話であった。