河原梓水のレビュー一覧
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1950年台から60年代初頭の「奇譚クラブ」、特に当時「奇譚クラブ」の投稿者として名をはせた吾妻新と沼正三の二人を中心に(高橋鐵のような外部からの精神医学や性科学てきなアプローチではなく)当時の当事者たちによるSM論を読み解くというもの。「家畜人ヤプー」の沼正三はともかく、一般的にはほぼ名を知られていない吾妻新についてここまでキチンと論考されたことがあっただろうか?
内容も丁寧な読解でありがちな著者の考えが先走ったような強引さもなく納得のいくもの。沼正三の「家畜人ヤプー」についてはいろいろな人がいろいろ語りつくしてきたけれど、これほど明確なすっきりとした解説はなかったのではと思う。
個人的 -
Posted by ブクログ
揚場町風俗資料館で日がなSM本を一緒に読んだ友達が勧めてくれた。
筆者はまさかの歴史学者(!)で、原則実証主義歴史学の方法で書かれているのだけれども、SMが日常生活と切り離すことにより、対等な主体同士でも可能とみなされるのが先進的だと捉えられていた時代から、尊厳を損なってもなお生き続けることの意義を問う時代へと移行しているという、いわば人間学や哲学に近い見方もきちんとあとがきでやっているのが好感持てた。特に吾妻新(村上信彦)と沼正三(倉田卓次)の対比から見えてくるものは大きい。
非ヴァニラセックス中心主義者としても、読むべき本でございました。 -
Posted by ブクログ
後書きで分かったが、本書は立命館の小泉義之門下に集まった人たちの論文集であり、帯に「愚かな人生はある。不可解な生活もある。無価値な生もあるだろう。しかし/だから、狂おしい思いで、その狂える倫理を書きとめる。何かが狂う。何かが正される。そして何かが動きだす。若き友人たちの本ができあがった。」とあるが、まさにそのようん雑多な内容であるが、そのような視点では見なかったと思われる視点で興味深くは読ませていただいた。目次から拾い上げると、「不幸」の再生産――世代間連鎖という思想の闇(小西真理子)、「カサンドラ現象」論――それぞれに「異質」な私たちの間に橋を架けること(髙木美歩)、ケア倫理における家族に関
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Posted by ブクログ
正常とされる立場、物の見方、価値観に対して、「それ以外の人間(≒狂気?)」の生の肯定。
魅力的なテーマに感じて手に取った。ただ、正常とされていることとそれ以外を考える場合の倫理といった、「正常とされること以外」を概観して分析するような内容を期待したが、いくつかの(小)テーマで、その中での「その他」に光を当てる批評?群といった構成で、少し期待とはちがっていた。
また、批評の取り扱うテーマもかなり雑多で、それぞれの質もあるが興味をひくものとひかないものもあったことから、つまみ読みした。
記憶に残ったポイントは以下の2つ。
①症状/問題のラベリングにも、内容によって、効果やアプローチの違いが