砂川玄志郎のレビュー一覧
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タイトルがいい。昔なつかしいSFみたいで。
冬眠するのは爬虫類や両生類だけではない。哺乳類も冬眠する。クマがそうだし、ハムスターもそうだ。2004年には、冬眠するキツネザルも見つかった。
だったら、人間だって。小児科医として病院に勤めていた著者は、そう考えて研究の世界へと飛び込んだ。念頭にあったのは、救急医療への応用だった。
冬眠の生理的状態を、その生体にデバイスの影響を与えることなく、どのようにして測定するか、まずはそこから。……そしてついに2020年、本来は冬眠をしないマウスで、冬眠様状態に誘導することに成功する。このブレイクスルーに至るまでの試行錯誤が興味深い。でも、これはプレリュードで -
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☆著者は医者で、小児救急や小児集中治療などに携わってた。
臨床現場において麻酔と集中治療の関係、搬送医療の難しさを徐々に体感していく。
ある日、冬眠をするキツネザルに関する論文に出会う。冬眠を人為的にコントロールできれば、本格的な治療をすぐに受けなければ死亡するリスクが高い重症の患者を搬送するまでの時間を稼げるのではないかと考えたという。
そして、冬眠研究に精を出し始めて、冬眠する動物の観察して冬眠のメカニズムに関する仮説を出す研究が様々あることを知るが、実験で冬眠動物を任意のタイミングで冬眠を誘導することができないを知る。
そのため、冬眠に関する様々な仮説が実験で立証することができない状 -
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人工冬眠の実現に向けた研究について紹介。
冬眠の本質は細胞レベルの低代謝であることなど、冬眠とはどういうものかや人口冬眠に向けた課題などについて理解が深まった。
人工冬眠の実現は、医療等の面で画期的であり、タナトフォビアである自分にとっても夢のある話だと思ったが、冬眠についてはまだわかっていないことだらけであるということも理解し、その道のりはまだまだ遠いなと感じた。
マウスを冬眠様状態に誘導するという著者らの研究についてその経緯等が詳述されていたが、とても興味深い研究だと思った。生物学をはじめとする科学的研究の一つのケーススタディとしても本書の内容は面白いと思った。 -
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ネタバレマウスを冬眠させるための神経回路(Q神経)が見つかったという論文がNatureに掲載され、大々的なプレスリリースが行われたことはなんとなく覚えていたので一読。
冬眠って今まで考えたこともなかったが、全身がそのモードに入らないといけないわけで、全身に信号を伝える系が必須になる。脳神経系を介するものなのか、ホルモンによる液性のものか、いまだにはっきりしなかったり、かなり未知の領域らしい。と、いうのも通常の動物は一年に一回しか冬眠しないので研究のチャンスがないということが大きい。著者らはマウスでの神経回路を発見したわけだが、ヒトに同じものがあるのか、あったとしても末梢で冬眠反応を起こすような回路が -
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途中、やや専門的な内容も出てきますが、全体的にはボリュームもコンパクトで読み易くまとめられていました。人工冬眠というと、どうしても宇宙系の映画で銀河系の遥か彼方に向かう際に宇宙飛行士が入るカプセルをイメージしてしまい、著者の意図する医療への応用が想像しにくいのですが、それにしても、マウスでの冬眠が実現できたことから、この技術が全くの夢物語ではないことが語られ、なにやらワクワクさせられます。
タイミング的に、ちょうど、ドラマ「パンドラの果実〜科学犯罪捜査ファイル」で冷凍保存がモチーフとして使われた時期だったので、読んでみた次第です(といっても、あちらは死体の冷凍保存で冬眠とは違いますが) -
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ネタバレ人類冬眠計画
~生死のはざまに踏み込む~
著者:砂川玄志郎
発行:2022年4月14日
岩波書店
「春眠不覚暁」というが、僕は春より冬の方が眠い。FBにも何度か書いた。そして、冬に眠いのは当然で人間も昔は冬眠をしていてその名残だとの解説が、最近ではマスコミでもしばしば見る。しかし、この本を読む限り、そんなことは書かれていない。
著者は小児科医(臨床)、医学博士(京大)で、現在は理化学研究所生命機能科学研究センター上級研究員。人が冬眠することは可能か、どうしたら実現できるか、真剣に真っ向から取り組んでいる。「2001年宇宙の旅」や「エイリアン」で見た人間の冬眠は、時間がかかる宇宙の移動に際