アンドレイ・クルコフのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ウクライナ戦争が始まったころにクルコフのウクライナ日記を読みこの本を買っておいた。今読んでみてものすごくエンターテイメント性あふれるサスペンス小説だった。独身の小説家の男が鬱のペンギンを動物園から引き取りペットとして対等な関係で生活をしていくシチュエーションも面白い。
新聞に追悼記事を生前から書いていき事件に巻き込まれていく話は不気味だ。
4歳の少女を引き取りその面倒を見る若い20代の女性と3人とペンギンとの愛のない生活を綴っていくところも男のやさしいキャラクターを表している。
ソ連崩壊後のウクライナの混乱した政情での設定だけど政治性もあると思うがエンターテイメントとして難しく読む必 -
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Posted by ブクログ
ウクライナのキエフ(キーウ)でペンギンのミーシャと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、ある日、出版社から「十字架」を書く仕事を依頼される。
不穏な空気+ペンギンの物語→
1990年代、ソ連崩壊後のウクライナが舞台。戦後の日本にしか住んだことのない私には最初、とても不思議な気持ちになった。
家の外の世界はとても殺伐としているのに、ヴィクトルのキャラとペンギンのミーシャがその世界から少し浮いていて、それがとても絶妙。一気に読みやすくなる。→
でも、ペンギンのミーシャは動物園が閉園するタイミングでヴィクトルが貰い受けているわけだし、この時点で今の日本にはない感覚なんだよね。
終始この「感覚はわか -
Posted by ブクログ
憂鬱症のペンギンと売れない小説家。もう、これだけで面白い。
不可思議でどこか、現実と空想のあわいに惹き込まれるような物語。
どことなく村上春樹を想わせる文章ですが、訳者のあとがきを読んで納得。
続編が出ているらしいけれど、どうやら15年以上経った現在でも日本語翻訳は出されていないそうで、残念。
さて、本作はソ連解体後のキエフを背景にした物語。
「人生の本質が変わったからといっていちいち考えこんだりしてはいられない。」
と作中にあるように、当時の人たちの、激しく変わる社会に、いちいち反応してたらやってられない、みたいな感情が窺えます。
これは、たぶん私たちも同じで、自分の人生に起こっている -
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ペンギンとヴィクトルが互いに依存関係であり「憂鬱症」を通して重なりあう様子がとてもうまいなと思った
追悼記事を書く仕事を訝しく思いながらも、深くは知ろうとしないとことか、とにかく生活ができればいいと思ってたところとか、ヴィクトルがなぜこんなにも物事に無関心でいられるのかが不思議だった
作品に終始漂うヴィクトルの諦念とその受容は、ウクライナが新生国家で情勢が不安定だったことが大きく関係してるんだろう
でも途中に出てきたペンギン学者のおじいさんが亡くなったことはヴィクトルのかすかにあった生への執着をかなり吸い取った気がするな
最後はヴィクトル=ミーシャだったということか………
そしてどんなこと -
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Posted by ブクログ
ソ連崩壊直後のウクライナ、売れない小説家のセルゲイは恋人に去られ、動物園からペンギンを1匹引き取る。
ペンギンのミーシャと共同生活を始めた頃、新聞に追悼文を書く仕事を得る。追悼文と言っても、亡くなった人ではなく存命の著名人について亡くなる前に準備しておく…という奇妙なものだった。
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現在のウクライナとは違うけど、この当時のウクライナの社会が先行の見えない不安に混沌としていた様子が伺える。登場人物達はみな淡々と日常生活を送っているが、足元に不安が燻っている。
数ページ読んで感じたのは
「村上春樹みたい」
だった。初期のハルキ作品に何となく似ている。と同時に安部 -
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ネタバレ[興奮と不穏と]「ユーロマイダン」こと独立広場における民衆の抗議に始まり、大統領の国外逃亡、そして東部での紛争等へと目まぐるしく事態が展開したウクライナ情勢。そんな非日常が日常に急に割り込んできたある一人のウクライナ人作家の日記から、事態の推移を伺うことのできる作品です。著者は、日本においては『ペンギンの憂鬱』等が訳出されているアンドレイ・クルコフ。訳者は、フリーランスのロシア語通訳として活躍されている吉岡ゆき。
著者が現場からつぶさに情勢を観察していた人物であり、出来事の政治的ニュアンスにまで精通している人物であるためか、描写を通して伝わってくるウクライナ及びキエフ情勢がとにかく臨場感あ -
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戦争の中の灰色の日々に形が、色が、声がついていくようだった。
あくまで「日記」なので、何か一つの出来事を追っていく事はない。全ては点々とした出来事の集積である。
その中に見え隠れするウクライナへの想い、そしてプーチンへの怒り。国際社会がこの戦争を見ようと彼らからするとある日突然、大国によって押し付けられた戦争でしかない。
戦争の中でも日常はある。そこに突然ミサイルが飛来したり、誰かがいなくなったりするだけで。読後、ニュースの向こう側で不敵な笑みを浮かべるあの男に向かって毒づいてやりたくなった。一国の権力を握って隣国の人々を殺すのはさぞ幸せでしょうね、と。 -
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1996年に発表。20ヶ国語に翻訳され、日本語訳版は2004年。ソ連崩壊後の新生ウクライナの首都キエフで、ペンギンと暮らす売れない小説家のヴィクトルは、新聞の死亡記事を書く仕事を持ちかけられる。それは存命の人物の追悼記事を目録にするという不穏な仕事だったが、生活のために二つ返事で引き受けてしまう。初めはうまくいっているように思えたが、思いもよらぬ事態が次々と巻き起こり思わぬ結末を迎える。
寺田順三さんの可愛い装画と、ウクライナ出身の小説家とのことで気になり購入。内省的で淡々とした独特の文体は、可愛い表紙とのギャップに戸惑ったがすぐに慣れた。ページをめくるごとに物語の魅力に引き込まれ、不条理 -
Posted by ブクログ
ネタバレ売れない短編小説家のヴィクトルは、動物園が餌代を払えないためにお払い箱となった皇帝ペンギンのミーシャを引き取ってキエフで暮らしている。新聞の追悼記事「十字架」の執筆記者となり、まだ生きている人物たちのもしもの時に備えて詩的な追悼記事を書き溜めていくが、彼が追悼記事を書いた人物たちは計画的に「処理」されていくようだ。彼自身もよく分からないままに命を狙われ、無自覚のうちに危機をやり過ごし、しかしある日別の男がヴィクトルの「十字架」を執筆していることを知る。そこに記されていたのは、政治的陰謀に加担し、多くの人物の死に関与しながら、最終的に自殺したヴィクトルの一生だった。
心臓病があり憂鬱症のペンギン -
Posted by ブクログ
ロシア語で書かれた小説にしては読みやすかった。名前の呼び方が変わらなかったからだと思う。そこはロシアとウクライナの違いだな。
不思議ミステリーという感じだったが、印象に残っていることは、物語全体を覆っている寂しさや孤独感です。ストーリーが進むにつれて色んな人と交流して楽しんでいる主人公は、ふとした瞬間に孤独感?一人の感覚?を感じている。これは私も分かる気がするもので、人といる時は楽しかったりするんだけど、家に帰るとその楽しさが、家に帰った瞬間と連続していない感じがした。それは家の中に誰がいようと1人でいようと同じ。
また主人公にとってはペンギンだけが癒しの存在で、気にかける存在であり、そのおか