小林元喜のレビュー一覧
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親友の死を追うノンフィクション。取材を通じて描かれるのは、亡くなった平賀さんの人生だけではなく、彼を「親友」と呼んだ著者自身の葛藤や揺らぎだ。読み進めるほどに、著者が自分自身をも描き出していることに気づく。
本書には「親友」という言葉が繰り返し登場する。日常でも耳にする言葉だが、実際にその関係を持つ人はどれほどいるのだろうか。少なくとも私には、胸を張って「親友」と呼べる友人はいない。年に数回会う友人や、毎年集まる仲間はいる。困っていれば助けたいし、大切な存在だ。しかし、それでも「親友」と呼べるかと問われれば、答えは曖昧になる。
だからこそ、本書を読んで最も強く感じた感情は羨望だった。著者と平賀さんの関係は、単なる友情ではない。自分のこと以上に相手を思い、行動し、影響を与え合う。平賀さんは死後もなお人を動かし続ける。その生き方が、どれほど豊かな関係性の中で育まれたものなのかを思い知らされる。
「人に与えた分だけ返ってくる」
この言葉が静かに胸に残った。果たして、私の周囲の友人たちは自分にとって親友なのか。著者と平賀さんの関係と、自分の友人関係は何が違うのか。読みながら何度も自問することになった。
親友の定義は人それぞれだろう。しかし本書を通して感じたのは、自分以上に相手のことを考えて行動できる関係こそが、親友と呼べるものなのではないかということだ。そして私は、まだそのような関係を持てていない。
人はいつか死ぬ。その当たり前の事実が、本書では重く響く。だからこそ、誰かと深くつながることの価値は、想像以上に大きい。『親友は山へ消えた』は、親友の死を描きながら、同時に「生き方」を描いている。自分の人間関係を照らし返す鏡のような一冊だった。 -
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本書『親友は山に消えた』は、登山中の滑落事故で突然の死を迎えた親友・平賀淳の足跡をたどる弔いの旅であると同時に、著者自身の醜くも極めて人間らしい内面を容赦なくえぐり出す、内省の記録である。
客観的に見れば、著者は石原慎太郎元知事の公式サイト運営や、登山家野口健のマネージャーを務めるなど、十分に輝かしい人生を歩んできたように映る。
しかし、著者自身にとって、その比較対象は常に平賀淳という存在であった。「これでもダメだ」「まだ足りない」と常に自分を追い込み、貪欲に「何者かになりたい」「平賀と競い合いたい」と歩みを止めない。そして時には心を病み塞ぎ込み、それでもまた前に歩み出そうするその姿には、自らにかけた呪いのような執念が感じられる。
かたや、破竹の勢いで自らの道を切り開き、映像制作やランニングカメラマンのパイオニアとして、「何者か」へと近づいていく平賀淳に対して抱く、著者の嫉妬と羨望。人間が隠そうとする泥臭く醜い部分に、これでもかと鋭く切り込んでいく。その赤裸々な告白は、ページをめくる手を止めることができないほどの力を放っている。
この物語の大きな醍醐味は、周囲の人々への丹念なインタビューを重ねることで、平賀淳という人物の輪郭が少しずつ浮かび上がっていく過程にある。しかし、著者が心のどこかで期待していたような、自分と同じ「弱さ」や「陰鬱さ」が、平賀からはまったく見えてこない。それどころか、浮かび上がってきたのは、憎たらしいほどに「いいヤツ」という、どこまでも真っ直ぐで誠実な友の姿であった。この対比が、著者の内なる葛藤をさらに深く、切実なものへと変えていく。
そして物語の終わりに綴られる、親友への深い弔いと、著者自身の内省の旅は、本書最大のクライマックスである。嫉妬や羨望に苦しみながらも、向き合い続けた日々の果てにたどり着いた景色は、涙なしでは読み進めることができない。
また、物語の中ではいくつもの重い問いが投げかけられているのも興味深い。
・「何者かになりたい」という強い欲望と、友人への羨望や嫉妬を掻き立てるものの正体とは何か。
・「親友」とは一体どのような存在なのか。
・そのうえで、著者にとって平賀淳は親友なのか。
これらの問いは、そのまま読者自身にも降りかかってくる。
他者と自分を比べ続ける苦しみ、そして徐々に現実味を帯びてくる親友を喪失した悲しみ。本書は単なる山岳ノンフィクションの枠を超えて、他者を深く知ろうとすることを通じて自分自身を再発見してしまう人間の業と美しさを教えてくれる一冊である。 -
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僕はとても感動した。
積読チャンネルで紹介されており、興味を持ち購入。
平賀淳という、私にとってはまったく縁のなかった人物。一部の界隈では有名だったようだが、一般人にとっては無名と言ってもいいだろう。
しかし、著者も書いていたとおり、殆どの人は無名なのだ。多くの無名な人たちにも人生があり、親友がいる。
僕は平賀さんのように、人を大切にできているか、チャレンジしているか、友達を信じ続けていられるだろうか。
読みながら自問自答するしかない。
そして著者の小林さん。とても繊細でプライドが高く、所謂生きづらい人なのだろう。
でも、それが人間臭く親近感も覚える。
赤裸々な感情がこの本への親しみにつながる。
最後の書き起こしは心に響く。 -
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行動するかしないかで人生は大きく変わる!
飛びぬけた行動力と情熱は、優れた頭脳や才能を凌駕することは往々にしてあるのだろうと改めて思いました。
そしてそれらの行動の積み重ねが、様々な縁や運を紡いでいくのでしょうね。
年齢とともに行動力が落ちていることを実感している私としては、このタイミングでこの本に出会えて大きな刺激となりました。
著者がさらけ出した様々な葛藤は、読んでいるのが辛い部分もありましたが、野口さんの魅力が引き出され、本の面白さも圧倒的なものにしたと思います。
生みの苦しみもあったと思いますが、たくさんの人に共感や勇気を与える作品になったのではないかと思います。 -
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積読チャンネルで紹介されていたので手に取った。著者小林元喜が親友で山岳カメラマンの平賀淳の生涯を描くノンフィクション作品。
紹介動画を見てからの読書のためハードル高くなっていたのに、その評価に偽りなかった。クライマックスをスタバでむかえ感泣。(今思うと少し恥ずかしい)
2章「フリーになれ」「保険」で著者自信の胸の内に深く切り込む描写が、それまでのどこか俯瞰でドキュメントしてきた書き振りとは一転し、本心が直接的に描かれており、急に引き込まれていく。私が年齢的に同じ時代を並走していることも大きいかもしれない。
4章のラストプレイスでの文字起こし。人は景色に感動するんじゃない、人間模様に涙するんだ。2人の関係性がここから新たなステージに。今後もウォッチしていきたい。
運命なんて結局は信じたものだけに認められる権利なんだと思う。 -
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お笑いの世界においての、いわゆるイジリ芸の様なものを素人は勘違いし、飲みの席や仲間内で小さく相手をこづくのを見かけるものだ。本来は落としている様で、よく考えると丁寧に相手を褒めていて言われる側も、聞いていた側も笑顔にする、自分も笑顔になるのが話術の上級者。本書を読み始めた時は、つまりそう言う本なのかなと甘く見ていた。しかし違った、上級者の話術などではなく。人の人生の重みを感じる優れた文章だった。強烈に人を引き付ける太陽の様な個性の野口と、若い頃から見込まれ文壇や政治のスターと歩んだ一般人著者、小林の稀有な人生の言葉は何者でもない私の人生に時に重なった。誰だって与えられた人生に時に翻弄されるものだからね。優れた文章とはいつもこう言うものなんだよね。
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野口健のイメージは、こんな感じ。(昔著書一冊読んだので、生い立ちや登山家になるまでもだいたい知っていた。)
自己PRが上手くて、無名の時からスポンサーをどんどん自力で見つけ、若くして登山家として成功。
エベレストや富士山でゴミの回収活動なんかもしていて、それ自体は素晴らしい。だが、どこか胡散臭い感じがしてしまうのは、政治家として出馬するという噂が何度も出ること、政治家との交友をアピールしていたことと無縁ではない。
ネットで悪い噂も見たことがある。
登山家というストイックなイメージとは相容れない華やかさ(自己顕示欲)と野心がありそうな感じ。
それらの印象の理由がこの本でよくわかった。
これは野口健の暴露本でもなければ、実はヨイショしている本でもなく、著者と野口の殆ど恋愛のような付き合いを描いた本である。野口だけでなく著書自身の醜い部分も恥ずかしい部分もさらして書いている。そうでなければここまで心を打つものは書けなかったと思う。
そして野口が、欠点も大きいがやはり人間として魅力的であるということがわかる。心を鷲掴みされてしまう人は著書だけではない。本当に打算的利己的であれば、いずれ人は離れていく。しかし、何度も戻ってしまうというのは、それだけではないからである。
その摩訶不思議な魅力もよく伝わる。
服部文祥の「3.5流」発言、栗城史多との共通点と違いについてなどもきちんと検証している。
人間の業を描いた、素晴らしい本だった。 -
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登山家・野口健の半生に迫ったノンフィクション。丁度昨年のYahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞にノミネートされた、栗城史多氏をモチーフにしたデス・ゾーンに重なる部分もあり購入。
本著は野口健の生い立ちから登山家としての活動、さらには現在に至るまでマネージャーとして携わった小林氏の視線も交え描かれている。そして後半よりその小林氏の自著伝ともなるような、野口健と交わり離れていく様子も描かれている。
彼はアルピニストではない。登山家としては市民ランナー。しかし、清掃活動や被災地支援など活動家としては周りからの評価は高い。
何か栗城氏と重なる部分を感じた。突出すべき行動力を持っていると、否が応でも周りをも幸にも不幸にもする。
野口健の人間性はわかりつつも、やはり彼のやっている活動は素晴らしいものがある。
今後の彼を注目したいと強く思った。