上田啓太のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ただのニートと何か違うのか、と言われると何とも言いにくいが、とにかく約6年間休みを得たら、人はどうなるのかという実験本でもある。著者の感性に共感する部分が多く、擬似体験をしているような感覚を味わう。
杉松、という年上の女性の家に居候する著者。まだ若い男女だ。しかし恋人でもなく、互いに干渉し合う仲でもない。家賃3万円の関係。二人とも猫好き。杉松は働くが、著者は働かない。
その著者の文章に「自己の濃度」という言葉が使われていた。凄く分かる気がする。これは「他者の視点」の対岸にある言葉だ。人に会わず、合わせず、時間を意識せず、居場所に縛られず、自らの価値観だけで生きていると、濃度は高まる。自我1 -
Posted by ブクログ
タイトル見た時に想像していた内容とは大分、いや一部はその通りだったが、いい意味で裏切られた本だった。
にしても、本を読む習慣がなかった人が、いくら時間があるからといって脳の本とかを読んで、よくもまあこんな視点を獲得、いや元々持っていたモノを知覚したのかな。
同居人とは何もなかったのか甚だ疑問ではあるけれど、同居人もかなり変わった人なのだろう。
今更こういう人生を送りたいわけではないが、今家にある本だけでも繰り返して読めば、あるいはこの人のような視点を得るのかもしれない。
表紙はあえてこのようにしたのかもしれないが、学者が書いた自分の考えを、実際の人生で体験し、それを自分の言葉で表しているから、 -
Posted by ブクログ
ネタバレめっちゃ面白かった。
もともとエッセイが読みたくて手に取った作品だが、その実中盤は自己啓発本、後半は哲学書みたいな本だった。
人間のデータベースを作るパートで十分病んでると思うが、そのへんは全然序章だった。
人間は人間関係の中で自己を意識するため、人と関わらないと自己の感覚が薄くなり肉体が強く意識されるようになる。
「自分を変える」ということは自己を再定義した上で自己を否定することであり、それゆえ再定義の過程でかりそめの自己が強く意識され、人は変わることが難しい。
↑
この辺、自分が2000連休取ったとしてもたどり着けるとは思えない領域だな…と思った。
作者と杉松の退廃的な生き方に憧れる… -
Posted by ブクログ
これは哲学書だ。
読む前は途方もないニート生活の中での出来事を面白おかしく書かれたエンタテインメントだと思っていたが、読み進めるうちにそんなありがちで簡単に想像できる話ではないことを思い知らされる。
仕事を辞めて住むところがなくなり転がり込んだ先の同居人・杉松と拾い猫の毛玉とのコミュニケーションや、仮住まいとして与えられた物置に籠り、様々な方法で積み重ねた自身との対話を経て、最後に「知覚点」まで削ぎ落とし、人間の世界や生死へ向けられた考察には思わず引き込まれた。
絶妙な言葉選びや日常描写も秀逸で何度も思わず笑わされた。上質なエンタメとしての一面も持ったハイブリッドな一冊。おすすめ。 -
Posted by ブクログ
哲学者と研究者とシステムエンジニアと主集マニアの自分を用いた人体実験。
n数を増やして、論文にされるとよいかと。
連休は引きこもりではない。
横道世之助の中に、一年間の引きこもりを、一年間いらないと言っていると、表現していたが、そうなのか?仕事してるから意味があって、対外活動していないといらないになっちゃうのか?少なくとも、いろいろと飽きちゃうんだろうというのは、知れてよかった。
『日常的な意識状態が変容して、それまでとはちがう認識世界に至ったとき、それを真実の世界だと思い込んでしまう。これは危険な罠なのだと理解した。無防備なままに神秘体験をすれば、「日常世界は仮のもので、これこそが真実の -
Posted by ブクログ
オモコロ20周年に関する記事を読んで興味を持ってライターさんの本。
人生に行き詰まりを感じ仕事を辞めた著者が、至福の日々も束の間、迫りくる不安に対抗すべくもがきはじめ、ひたすら内省と実験を行っていくという体験記。
「連休」だからといって何もしていないというわけではなく、「ひたすら自己と向き合い続ける」というのが、変にネガティヴでもなく(かといってポジティブでもないが)、重くもないトーンでどんどん進んでいく。どこか共感できてしまうというか、普段意識しない自分の心の奥底にも似たようなものがあるのかも、、、と考えさせられます。
濃淡関わらずこれまでの人生で接点を持った人・行った場所・自分の行動・その -
Posted by ブクログ
300連休くらいまでは「うわ〜わかるわかる」と楽しかった
休みが永遠とも思えるくらいに続く初日の緊張と展望、まずは何もしないを楽しむぞ、と意図を持っての無為の日々、次第に飽きてきたところでさてこれはどうしたもんかと目標を立て、毎朝晩のヨガ、朝日を浴びる、ベッドメイク、散歩などをルーティンとする、気づけば夜になる毎日に焦りtogglで全ての行動記録を取り、必須行動と投資と娯楽の割合を対等になるように振り返り続ける、家計簿の全ての取引履歴の店名をあらゆる手段を使って思い出し入力、スクリーンタイムにパスワードを設定し、SNSアプリをスマホから削除する、資格勉強に打ち込み、目標勉強時間に足らないとうず -
Posted by ブクログ
カフェ従業員を辞めて、知り合いの杉松さん家の物置で2000日以上過ごした生活を送った人の記録本。考えたことが淡々と綴られており、悲しい内容や自虐はほぼない。家の外には出ているようだが、食事の話、街並みの話、年末年始の話、ニュースの話といった日記でありそうな話題が出てこないのが特徴的。
途中で自分の人生を詳細にデータベース化したり、睡眠食事風呂以外の刺激を禁止した生活を送ったりと、人体実験を行っていることも多い。自分が2000連休になっても同じようにはならないと理解させられるとともに、著者の実体験は納得感が強い。
しかし最後まで読んでも作者の人となりはほとんどつかめなかった。途中で好きな食べ物を -
Posted by ブクログ
軽めのタイトルとポップなカバーからは想像もつかない重い内容。実験的な観察日記から、最後には哲学的な試作の書に変わる。自分とは何か考えていった果てに、自我が世界に溶け出していくのが面白い。それでいて、生来の笑いの感覚がそこはかとなくやどっているのが絶妙。真面目な議論を突き詰めると、どこかで笑いに変わってしまうのはなぜだろう。世界から一歩引くメタを利用して現実をズラす共通点があるからだろうか。
離人症のきらいがあったからこそなんだろうが、著者も指摘するように悟りとか、洗脳とかに近しいところに踏み込みながら理性的に記述できるのがすごい。少しは哲学、というか心理学的素養がある方だと思うが、一から哲学 -
Posted by ブクログ
ネタバレ筆者が仕事を辞めて、ブログの女性読者「杉松」が借りる家の物置(一畳半)に居候し、雑誌の大喜利連載のアルバイトで月数万稼いで暮らしていた「2000連休」の実体験が書かれてある。
まず、筆者と杉松は、私には“お互いドライそうに見えて大分仲の良い弟と姉”みたいな関係の友人に見えた。ネットで知り合った男性を家に居候させることにした杉松はすごいなと思った。
連休中に今までに出会った人の名前、読んだ本、聴いた音楽や、記憶をPCにデータベース化したのだが、そのために卒業アルバムを実家から取り寄せたりと徹底しすぎていて、「狂っている……」と思った。長い連休を経験しても、そのような行動を取る人はなかなか