ジェフホーキンスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者がもともと携帯端末Palmの開発者であったこともあり、人工知能に関するトピックも扱われているが、興味深いのは、やはり新しい脳理論について述べた第1部である。
著者の設立したヌメンタ社における研究によれば、脳の新皮質は「皮質コラム」と呼ばれるニューロンの塊を一つの単位として働いている。
そして、それぞれの皮質コラム(計15万個!)は、構造的には同等のものであって、しかも共通のアルゴリズムに従って働いている。
もっとも、皮質コラムは場所によって異なる役割(例えば視覚を担当するか触覚を担当するか)を持っており、役割の異なる皮質コラムが組み合わさって認識や思考が形成されている。
また、著者は、皮質コラムの本質的な機能は、モデル化及び予測であるという。
「停止しているエスカレータ」を上り下りする際の経験を思い出すと、これが腑に落ちる。
エスカレータが停止していることは明確に認識しているのに、最初のステップに足を乗せる時の体重移動は、どうしても動いているエスカレータのステップに乗る時と同様になってしまう。
これは、脳が「エスカレータに乗る時の身体の動き」をモデル化しており、「エスカレータに乗ること」を予測すると、それが停止している時でもそのモデルに従った動きをするよう、脳が身体に指令を出しているからだろう(なお、本書によれば、新皮質は直接的に「指令」を出すのではなく、まずは古い脳に「依頼」を出すのだという。)。
脳の構造という点からもう一つ重要なのは、主に生命維持や情動を掌る「古い脳」(旧皮質)と、知的機能を担う「新しい脳」(新皮質)の区別である。
人は「古い脳」なしには生きていけないが、著者は「古い脳」のために人類が滅亡してしまう可能性があるとも主張している。
本書では、例えば外国人に対する排外的な行動も「古い脳」による本能的なものと説明されており、昨今の国際/国内情勢を見ていると、「古い脳」が世界を滅ぼすこともあり得ない話ではないと思えてくる。 -
Posted by ブクログ
脳に関して現在分かっているしくみを学べた。
脳は知識や経験を座標で蓄積するんだ!
ノートや辞書のように並べてるんじゃないんですね…
そして脳内にモデルを作り、それを基に予測しながら世界を見ているというのも驚いた。脳の予測と違うことが起きると誤りに注意を向けて脳内モデルを更新する。
日常の慣れきった行動は(脳内予測と同じなので)無意識に行うが、何かちょっとした違和感を感じるとそちらに意識が向く、というのはのその予測モデルから外れるせいなのか!
また先ほどの座標の話も、たまたまXで「育児疲れで義実家で爆睡後起きた母親が『私は今学生?就活してるんだっけ?あ、子供を産んで育児中だった…』と一瞬自分の時空を見失った話」を読み、ああこれは疲労などで脳内で座標の混乱が起きたせいで脳が時空を含めた現在軸を一瞬見失った話だったのか!と合点がいった。
記憶喪失とかもそうなんだろうな。
言葉は理解できるし、身体機能も問題ないし、常識も覚えているのにある記憶だけ抜け落ちたり混乱したりするのは、その記憶に関する座標がうまく機能しなくなっているせいなのだろう。
また古い脳と哺乳類だけにある新しい脳(新皮質)の違いも分かった。
人間の筋肉などの身体機能は古い脳でしか制御できず、知能を担う新皮質は直接筋肉に作用することはない。
また、我々の行動を導く「感情」というものは古い脳から生まれる。
人間の行動は「感情」から生まれ、古い脳が攻撃的なら攻撃行動をうまく行うために新皮質のモデルを使用し、古い脳が情け深い人なら新皮質のモデルを情け深い目標を達成するために使う、とも。
つまり新皮質や知性それ自体には目標はなく、古い脳が自らの目標を達成させるためにそれらをうまく使っていると。
そういえば私は学生の頃人前に出る、発表するというのがとても苦手で、自分の順番が近づいてくると、勝手に心臓がバクバクと激しく動悸し顔には血が上り、声が震えてどうしようもなくて、頭のなかでは大したことないから落ち着きたいとどんなに思っていても体の反応が頭と逆だった。それは古い脳が「ほかの人間」「人前」を評価してくる敵と認定していて、血流と心拍数を上げて戦闘態勢と恐怖の心理作用を起こしてたんだな…新皮質(知能)は古い脳を制御できないし、つまり身体機能も制御出来ないので、だからいくら落ち着けと心で思ってもだめだったんだな、と理解できた。
(こういう場合はいくら言葉や頭のなかで言い聞かせても身体反応を制御できないので、同じように身体的な行動である深呼吸などが大いに効くらしい。気休めじゃなかったんだ…)
後半はAIの話。
機械の知性と意識について。
AIには人間と同じような自己更新できる知性ある新皮質のような脳が必要だ。AIは意識は持つだろうが人間の古い脳のような死への恐怖や悲しみといった要素は不要なのでそれをわざわざセットすることはないという前提で、感情はないだろうとも。
後半ではAIの話と並行して、人間は古い脳によって感情を支配されているのでせっかくのテクノロジーを誤った信念を持つ人たちに悪用されやすく、滅亡の可能性を捨てきれないと言った重点を置く。
ただ著者は古い脳に対する新しい脳(知能)の勝利を希望してやまない、ハッピーエンド志向で終わらせているのが、警告はあるものの恐怖を煽らない良いまとめ方で良かった。 -
Posted by ブクログ
『脳は世界をどう見ているか?』は、脳を単なる情報処理装置ではなく、世界をモデル化するシステムとして描いている。
人間の脳は、古い部分の上に新しい部分を積み重ねるように進化してきた。古い脳は生存や感情を司り、新しい脳である新皮質は知能や思考を担う。この2つはルームメイトのような関係にあり、たとえば新皮質が「健康のためにケーキを我慢しよう」と考える一方で、古い脳は「美味しそうだから食べたい」と訴える。人間の行動は、そんな2つの声のあいだで揺れながら決まっていく。
特に印象に残ったのは、新皮質の構造に関する説明。
新皮質は、くしゃくしゃになった一枚のシートのように見えるが、実際には「皮質コラム」と呼ばれる小さな柱が15万個も並び、それぞれが知能の単位として働いている。新皮質に明確な境界線はないが、コラムの集まりはゾーニングされ、視覚野や聴覚野といった感覚ごとの領域を形成している。
各コラムは感覚情報をもとに対象を座標系で理解し、世界のモデルを構築する。脳は常に過去の経験を参照しながら複数の予測を立て、それらがコラム同士の「投票」によって統合され、ひとつの知覚としてまとまる。ホーキンスはこの仕組みを「1000の脳理論」と呼ぶ。
この理論を読みながら、いくつかの問いが浮かんだ。
まず、人はどうやって「私」を認識しているのか。
自己という感覚も、外界と同じように脳がモデル化している結果なのだろう。古い脳が身体の状態を監視し、新皮質がその情報を整理しながら「私はいまこうしている」と構築していく。自己意識とは、脳の内側に描かれた自分という世界モデルと言えそう。
次に、人によって思考力が異なるのはなぜか。
思考は新皮質が司る機能であり、新皮質はコラムの集合体として、感覚対象を座標系で理解し、世界モデルを構築する。数千のコラムが投票を重ねて一つの知覚を形成することを考えると、思考力の差は、世界モデルをどれだけ柔軟に再編成できるかという力の差として説明できる。
コラム自体に先天的な差があるのかは本書からは明確ではないが、もし差がないとすれば、投票の精度こそが思考力を分けるのかもしれない。
暗記法でよく言われる五感を使った記憶にも、この理論に通じる根拠があるように感じる。そうした示唆は本書にも見られた。
最後に、「美しい」という様な価値判断はどのように生まれるのか。
ここでも、古い脳と新皮質の関係が鍵になりそう。脳が予測した世界のモデルと実際の感覚が一致したとき、古い脳が快感として応答する。美とは、予測と現実が重なった瞬間の喜びなのだと思う。
そう考えると、既知の感覚や世界モデルとまったく無関係なものが美とされることは、脳の仕組み上あまり起こらないのかもしれない。ただ、既知との完全一致は、新皮質が行う予測が意識化されないため、快感には繋がりにくそう。美しさとは、未知の中に既知を見出す瞬間に生まれるとは言えそうだが、それ以上は分からない。
脳科学の本としての興味から本書を読み始めたが、AIとの関係や人類滅亡に対する提言など、想像以上に刺激的な本だった。 -
Posted by ブクログ
ポイント
● 知能・脳(新皮質)の主要な機能は「記憶による予測」である。これが本書の一貫した主張。
● 知能を備えた機械を作ることは可能。しかし、それは人間に近づけたり人間を超えることとは別の話しである。そこを理解できるかが人工知能を使う一般ユーザーが持つべき前提としての知識。
●脳の働き方を、組織のあるべき情報伝達に当てはめて考えながら読める。
以下メモ
知能・脳(新皮質)の主要な機能は「記憶による予測」である。これが本書の一貫した主張。 →読み進めると言っていることがわかってくる。
脳ある人間は、あるがままの世界をそのままの形で知覚し、考え、行動するのではない。これまでに蓄積され、記憶された経験から、予測した世界との答え合わせで世界を見ているし、どんな知覚も行動もこの予測に基づいている。 →なるほど。と思ったしたしかにそんな感じがする。
脳は階層構造をしており、上下には具体的な知覚から抽象的・普遍的な知覚があり、それらは上下に相互に連結し連携している。階層の横のつながりももちろんある。
→下部は知覚を具体的・個別的に上部に送る。上部は個別具体的な情報をこれまでの経験から抽象化・一般化して理解する。上部と下部は一方通行ではなく、上部の予測は下部に伝達されそれとの比較で下部は世界を知覚しようとする。
→会社などの組織構造にも当てはめられる考えだと思った。如何にして下部である現場部隊は、上部であるマネジメント層に、適切な情報を伝達すべきか?そしてマネジメント層はその情報を経験を活かしてどのように抽象化し、意味を与えたり見出すべきか。そしてマネジメント層からの予測や一般化と照らし合わせた解釈を現場層が如何にして照合し、添削するか。これまでの会社組織であるような上意下達の情報の流れではなく、アメリカ海兵隊のような双方向の情報の流れが、我々の脳の動き方に近いし、それ故に組織体制としてもそのような情報の流れが良いのではないかと思った。
人工の知能の今後について。人工知能は人間の持つ感覚器官をそのまま持つべきだとは言えない。脳がどのような感覚器官であれ、脳の内部での刺激を同じような仕組みと様式で伝達している。人工の知能も感覚を最終的にコンピュータ上で伝達できる形式になっている必要があり、それは触覚や視覚、聴覚のような形態を取る必要はない。感情は旧脳の分野なので、記憶による予測を知能と定義した場合には、それは新脳の分野でしかないので、感情は不要。
→これはむしろコンピュータ科学者がどのように人工知能を設計していくかというよりも、ユーザーがこの考え方を理解しているか、それとも理解せずに盲信するかというところに関わっていると思った。 -
Posted by ブクログ
2004年に書かれた本なのに、今の大規模言語モデルを予言している。
松尾先生の解説から読むと凄さが判る。
まともな音声認識もなかった時代に、CNNや深層生成モデルやトランスフォーマーに近いモデルを論じている。自己教師あり学習のNext Word Predictionや画像のinpainting処理は現在のAIで基本になっている技術である。
本書の予言のいくつか(音声認識、画像認識、自動運転、天気予報AI,タンパク質折り畳み問題を解くAI)は、すでに現実になっており、次は何かを予測して運動の命令が発せられ結果的に行動するロボットができてくるのか?すべてを同一アルゴリズムで扱うマウントキャッスルの法則に基づくロボット・・・・
「わたしの自信の根拠は、主として、知能の問題に長い間取り組んできたことにある。 中略、 おそらく、わたしの脳には技術や化学の変化がどのように起きるかについて高レベルのモデルが構築されている。そして、そのモデルが急速な進展を予測している。いまこそ転機だと」
もう一度 著者の脳は世界をどう見ているのか の未来予測を読み返さなければ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前半は「脳は座標系でものごとを認識する」というお話。自分の周囲に置き換えると確かに座標で紐付けて考えてる。ただ座標系でパッと浮かぶxyz次元じゃなくてもっと複雑な次元。よくわからんイメージできない。
後半は人間の古い脳(本能)と新しい脳(理性)という視点を基にした今後のAIの発達についてというお話。
世界との物理的相互作用が無ければ学習はできないという性質上、学習スピードが早くても新しい知識とスキルの獲得には時間がかかるので知能爆発は不可能(どれだけシミュレーションが優れてても再現は必要)。AIによる人類滅亡も人類が手引きしないと起こり得ないという話。冷静な考え方だな。人類の脳と人工知能を結びつけて展開される議論になるほどなと。
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Posted by ブクログ
●2026年7月1日、ツィッターでフォローさせていただいている「kuto(Bil)(@kutobill)」さんが以下をツイートで紹介していた。
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主「世界には関連するが、あちこちに点在している知識がある。これらを集めて統合し、パッケージしたほうが良い。例えば習慣化や自己管理の知識等だ。一つの体系的なパッケージにできるはず。」
静(@sizuka jpa)「この自分の中の「知識を体系化」する技術というか、お作法は、割と軽視されているのではないかと思う。AIに手伝ってもらうとしても、その作法は知っておきたい。書籍で、「思考術、言語化、書き方」というのは多いけど、「体系化」の本はあまり見たことない(自分が知らないだけかも)。」
主「実はこのネタはこの本から拾ってきた。
「この本では様々な研究を拾って集めて知能の統合理論を作る(大意)」という話から始まる。」
→これは読む価値が高そう!