アンタイラーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『マイカ・モーティマーのような男は、何を考えて生きているのかわからない。……』
という最初のセンテンスだけを思いついてこの話を書きはじめたそうだ。
一言で言えば、まあ堅物の人付き合いの上手くできない人マイカ。
アパートの管理と、パソコンなどの技術サービスをしている。
運転しているときは、『交通監視システム』に、制限速度を守り、ウィンカーを出し、静かなブレーキ操作をすることをしっかり評価されていると空想しながら。
彼女とはなにかチグハグでうまくいかず、そこに大学時代のガールフレンドの息子がやってくる…
そこから色々なことが起き、そのガールフレンドにも何か言われ…
少しずつ人の心がわかってくる -
Posted by ブクログ
石に刻んだように決まりきった毎日を過ごす43歳のマイカ・モーティマー。
なんだか…わりといそうだよね、こういう人、っていう感じ。「完璧」な暮らしをしていて、自分は何も悪くないと思っていて、なのになぜかうまくいかないことが多くて、人生なんてこんなものって思い込んで、暴れるでもなくヤケになるでもなく静かに暮らす中年男性。まるで自分の父親を見ているかのような気持ちにもなる。
主人公マイカの人生はよくあるごく普通の話だし、しかもこんな地味な中年男性。だけど、物語には彩りがある。なんてことはないのに、目が離せなくてどんどん読み進めたくなってしまう。
ちょっと眉をひそめてしまいそうなマイカの家族の話も、 -
Posted by ブクログ
波乱万丈でなんだかいろいろとめんどくさいことになるよりは、「ていねいな暮らし」と言えなくもない決まったルーティンをこなして、淡々と生活する方が平穏に過ごせる。波風なんてたくさん。
そんなことを思って暮らしていくうち、本来なら一回こっきりの錯覚(「アレ」を赤毛の人かと見間違うこと)までもが毎回の「お約束」になり、そのうち思考もがっちりと型にはまったものになり、いよいよ人生そのものが型通りになる。128ページのこのくだりにハッとさせられる。
どんなに規則正しく生きていたって、およそもらい事故みたいな他人絡みの厄介事に心ならずも関わることはある。それは自分のあずかり知らないこと。完璧を期するなんても -
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社会規範を外れること
なんてありえない─
判で押した日々を送る
四十路の主人公。
いつものことばかりの
生活に、
いつもとは違う出来事
が飛び込んできて、
彼の内に波紋を投じる。
そしてその波紋はいつ
しか彼の行動を、
やがては人生を変える。
現状を変えることには
失敗のリスクを伴うし、
えてして多大な労力も
払わなければいけない。
現状維持を選択すれば、
失敗のリスクを負わず
労力も払わなくて済む。
だからこそ、私たちは
いまのままじゃダメだ、
うん、変わなくちゃ!
と思ってもけっきょく、
無意識の内に現状維持
を選択しちゃうんです
よね。
いつもと違う出来事は
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Posted by ブクログ
ネタバレ静かな雰囲気の小説で、心地よかった。
毎朝同じ時間にランニングに出かけるマイカの決まりきった生活に、非日常な出来事が起こっていく。大学時代の元カノの息子が訪ねてきたり、彼女にフラれたり。
家出したブリンクと、その家族たちがマイカの家から出て行った後の、
「もうパーコレーターは、溜息のような音を立てているだけだった」
この表現がたまらなく好き。
最後の「つらい心を抱えた人。おれがそうなっちゃった。」が老人ホームの件と繋がっているところも痺れた。
マイカの暮らしはとっても質素だけど周りは賑やかで、終わりも素敵だったし、なんだかほっこりした気分が残った。
目から入る情報は文字だけなのに、そ -
Posted by ブクログ
「ボルティモア郊外で、コンピューターの便利屋をしながら独り暮らす43歳のマイカ・モーティマー。人付き合いの少ない彼は、毎朝7:15になるとランニングに出かけ、その後シャワー、朝食、掃除……というように決まった日課を守って毎日を過ごしている。
そんなある日、マイカの息子だと名乗る青年が彼の元を訪れる。さらに、恋仲の女性には、とあるすれ違いで別れを告げられ──。
予想外の出来事が続き、日常のテンポがズレ始めたマイカの行き着く先とは」(早川書房HP紹介文より)
まずマイカ、という名で男性というのが飲み込むのに時間がかかった。些細なことだけど、外国文学を読むとこういうことがある。
マイカはきっちり -
Posted by ブクログ
彼のような男は何をするかわからない。
こんな書き出しで形容されることは、彼にとって不本意なことだろう。平凡だが、関西でいうところの、ヘンコかもしれない。
朝のジョギングから始まるスローライフは “今時” だ。途中見かける消火栓を赤毛の女性に(違いない)見てしまう面白がり方は、成熟しきれない面も残している。無頼を気取った部分もあるだろう。しかし、突然現れた学生時代の彼女の子供を観察するにつれ、知らぬ間にずいぶん大人になってしまった自分自身に気づかされたことだろう。
現在の彼女とのぎくしゃくした関係をきっかけに、弱気を見せる主人公。残りの人生を数えるような年齢になってしまったおっさん -
Posted by ブクログ
「マイカ・モーティマーのような男は、何を考えて生きているのかわからない。一人暮らしで、付き合いが少なく、その日常は石に刻んだように決まりきっている」
これが書き出し。そのあと、彼のルーティンの紹介が続く。毎朝七時十五分からのランニング、十時か十時半になると、車の屋根に<テック・ハーミット>(ハーミットとは隠者のこと)と書かれたマグネット式の表示板をとりつけ、パソコンの面倒を見る仕事に出かける。午後は通路の掃除やゴミ出しなど、管理人を兼ねているアパートの雑用だ。住んでいるのは半地下で細目を開けたような三つの窓から外光が入る。
仕事上で出会う客とのやり取りや、つきあっている女友だちとの関係、女