星野道夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
穏やかで美しい詩のような本だった。
自分もアラスカを歩いている気持ちになる。
自身のお気に入りの写真家や作家の本を引用している話も多く、読書家だったのだろうなと。
ただ「自然が好き」だけでなく、
壮大な自然への敬意や、百年後の地球へ責任を持つこと、狩猟民についての話が面白かった。
ルース氷河、旅をする木、十六歳のとき、カリブーのスープがお気に入り。
「氷河の上で過ごす夜の静けさ、風の冷たさ、星の輝き…情報が少ないということはある力を秘めている。それは人間に何かを想像する機会を与えてくれるからだ。」
「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日 -
Posted by ブクログ
著者の本は、ずいぶん前に『アラスカ 風のような物語』と『ノーザンライツ』を読んだ。
そのイメージで読んだんだけど、これはそれらとはちょっと違う感じ。
最後を見たら、雑誌に連載されたものに加筆した文章と書き下ろしで構成されているらしい。
大自然の描写より、著者のホームタウンとなったアラスカや撮影の旅で出逢った人の話が多いように感じたのはそのせいか?
それとも、著者が写した写真がないからかな?
著者が神田の洋書店でアラスカの本を見て、そこにあった村の村長に「そこに行きたい。お世話してくれる人はいませんか?」みたいな手紙を出すエピソードが面白かった。
この本の前に読んだ『そして、ぼくは旅に出た。( -
Posted by ブクログ
2025.5
ちびちび読んでいて、
読みかけのまま長い間放置していたけど
久しぶりに本棚に手を伸ばして
最後の40ページ程を一気に読んだ。
気づいたら泣いていた。
あとがきと解説も素晴らしかった。
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P231 最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である。頬を撫でる極北の風の感触、夏のツンドラの甘い匂い、白夜の淡い光、見過ごしそうな小さなワスレナグサのたたずまい・・・ふと立ち止まり、少し気持ちを込めて、五感の記憶の中にそんな風景を残してゆきたい。何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時を、大切にしたい。あわただしい、人間の日々の営みと並行し -
Posted by ブクログ
☆☆☆ 2025年7月 ☆☆☆
2025年7月。この本を読んだのは2回目。
一回目に読んだ時よりもずっと心に染みた。
星野氏の自然に対する眼差しやアラスカの自然の雄大さを感じることができた。
本書で触れられているが星野氏は20代前半で親友のTを遭難事故で亡くしている。そのことが彼の人生に大きな影響を与えているようだ。全体を通して「命の儚さ、人生の短さ」ということがテーマの一つになっていると思う。
ただ、本のタイトルになっている『旅する木』のように、朽ちてしまった命でも別の命の拠り所になったり、食物となって脈々と引き継がれていく。
1996年に熊の事故により命を落とした筆者。
彼の思いもまた本