星野道夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
静かで力強い文章がアラスカの自然と絡まって、滲み出るような壮大さを感じさせる。
動物写真家であるものの、本からは人間が連綿と続く歴史の中で自然と共存共栄する過酷さを感じた。インディアンの老人の物語、セスナの運転士の生き様、亡くなった友人たち、それぞれがここに書かれている以上の背景があり、奥行きがある。
トーテムポールに寄り添うような鹿の話を読んでて、とても写真を見たくなりgoogle検索した結果、壮麗な写真とともに筆者の凄惨な亡くなり方を知ってしまいひどく動揺した。
穏やかで力強い文章が続くので、とても年老いたイメージが湧きやすかっただけ、若くして亡くなったことが一瞬理解できなかった。
解説 -
Posted by ブクログ
著者は、著名な写真家。カムチャッカ半島での取材中にヒグマに襲われて亡くなっている。
20代でアラスカに渡り、亡くなる前にはアラスカを永住の地と定めて生活を開始していた。
この本は、ある写真家の方からお勧めの本として紹介され、手にとったものだ。
写真を趣味としてはじめた今日この頃だったので、何か撮影に役立つようなことが書いてあるのかな~
くらいに思って読み始めたが、びっくり。
こんなきれいな文章、というか景色を描き出せている小説はなかなかお目にかからない。
それこそ、世界はこんなに素晴らしかったのか、と目を見開かされ、
行ったこともなく、経験をしたこともないはずのアラスカの景色、動物、人、が -
Posted by ブクログ
旅本としてずっと気になっていた一冊。
著者は16歳の時にアルバイトをしながらお金を貯め、ヒッチハイクでアメリカを旅する。
また、アラスカ大学に入学する際には合格点に至らなかったにも関わらず、学長にここで学びたいという熱い情熱を伝え入学することが出来る。そして、アラスカをはじめ様々な国へ冒険の旅に出かける。
何て情熱と行動力に溢れているんだろうと感服してしまう。
自分も大学時代にインドを旅したり、イタリアに一人旅に出かけたりしたが、とてもスケールが違う。自分は沢木耕太郎の深夜特急に惹かれてバックパッカーの旅をしたが、この本にもっと早く出会っていたらアラスカの雄大な景色に憧れを持ったかも知れな -
Posted by ブクログ
時々、不意にどこかへ旅に出たいという衝動に駆られることがある。
日々の生活のいろいろなしがらみから解放され、誰一人として自分を知らない場所で、のんびりと過ごしてみたい…。若い頃は思いたったが吉日とばかりに、ふらっと旅に出たものだったけど、最近めっきりなくなった。
本書を読んで、著者が歩んだ旅の道のりを共に辿っているような感覚を覚えた。美しいアラスカの大自然を軸に、世界のあちこちを巡る旅。
その旅路で感じたこと、出会った人たちのことが、著者の優しい言葉で綴られている。
壮大な自然の原風景と動物たちの息吹きが脳裏に広がる。自然の摂理は生と死が隣合せで、その姿は、著者の旅、人生そのもの。儚さや強 -
Posted by ブクログ
1996年に亡くなった星野道夫さん、一流の動物写真家であり、またアラスカを中心とした大自然への向かい方について数多くの随筆を残している。そんな彼の幸福感が感じられる内容となっている。
22歳でアラスカに渡り、現地の気候や大自然の洗礼を受けながらもやがて逞しくその感性を磨いていく。現地のエスキモーやインディアンとの交流を通して、数千年の悠久の時を経て築かれてきた人と野生の関係性を美しく切り取っていく。
我々が彼の写真や言葉に惹かれるのは、根源的欲求として持つ自然への畏敬の念と、そこから隔絶してしまった都市生活の距離を、これら著作によって埋めることができるからだろう。それは現代社会の満ち足りな -
Posted by ブクログ
「星野さんが出会った人たちは、この本を読んだのだろうか。この本を読んでいると、星野さんがまだ生きているように私は思える。
憧れの写真家の1人で、小学生の時に国語の教科書に掲載されていた星野さん。
彼が人との繋がり、そして人と自然の繋がりを一生涯、大切に思い、それを言葉で写真で伝えてきたことが分かる。
きっと、彼が亡くなったとき彼と出会った人たち全員が深い悲しみに包まれただろう。でも、その悲しみの中できっと彼の温かさや誠実さを改めて感じたと思う。
私は、彼に会ったことがもちろんないけれど、今すぐにでもこの本を持って彼が大切にしてきた人、生き物、風景たちに彼の想いを伝えに行きたい。」