ジェイムズ・スタヴリディスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小説でありながらリアリティ・臨場感が高すぎて非常に刺激的。震えながら読んだ。
米中お互いが戦争を避けたいと思いながらも、偶発的なきっかけから徐々に規模が大きくなり、報復合戦による原爆で都市が次々と消えていく様があまりにも恐ろしい。
人間の競争心や安全欲求というものが肥大して覇権競争となり、退くに退けない状況となっていく。そして組織である以上、命令されれば実行せざるを得ない。
不利になって更なる被害を受けるくらいであれば、味方の人命もためらわず消す。
ほんとに大事なのは何なのかをつくづく考えさせられる。
そしてこうした、不自由な選択の後に来る喜ばしからぬ結果、甚大な被害を出した上での共倒れの -
Posted by ブクログ
ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻などに見られるように、覇権主義や宗教観の違いから、世界はいつのまにか危い均衡のもと、一触即発のリスクを抱え込んできてしまった。核の脅威に対して通常兵器の延長でしか考えられない鈍感なリーダーが台頭してきている。そんな現代に警鐘を鳴らすリアリティに富む小説である。作り話と放置できない深刻さが感じられる。著者二人は米海軍の重鎮であった経験から、地政学的知識にも造詣の深さが伺える。この小説の発端は、米海軍が中国を牽制するため、南シナ海で「航行の自由作戦」を遂行中に不審船の炎上に遭遇する。同じ頃、中東のホルムズ海峡で米国のステルス戦闘機が制御不能になり、イラン
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Posted by ブクログ
米海兵隊の特殊部隊に従軍していたアッカーマンとNATOの最高司令官も務めた元米海軍大将スタヴリディス提督が書いた米中戦争のシミュレーション。
戦争という国家間の危機においても、当たり前だけれどそこには判断、実行を重ねる個人がいて、その積み重ねが結果につながるのだと改めて感じた。
各登場人物の背景や考え立場が表現されていて、少しずつ思惑のボタンがかけちがうことでエスカレートしていくさまがリアルで、恐ろしくて、興味深かった。
国家間の歴史、関係性や地理、ホワイトハウスの高官や米海軍での役職などの分掌を理解して読むと、より面白さを感じられる気がする。
これからは国防においてはサイバー能力がいか -
Posted by ブクログ
ネタバレいま、ウクライナで『戦争』が起きていますが、これはそれよりも先の話。
ここで描かれているほど、ICT機能においてアメリカが中国に劣勢になるという事は、ちょっと考えにくいのではないかと思いますが、アメリカと中国が何かしらの事柄で衝突するという事はありうる話だと思います。そういう意味で、これは現実の話ともいえるのではないかと。いまから12年先の話ですからね。
それと、思いの外インドが力をつけているのも興味深いですね。これも、現実としてありうる話ですね。インドの経済成長の著しいです。ウクライナでの『戦争』で、中国と同じく独自の立場をとっているのは、その自信の表れなのかもしれません。逆に言うと、ア -
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Posted by ブクログ
米中戦争が近未来で起こるとしたというシミュレーションとして読みました。
作者の一人は米国海軍の重鎮で、小説という形にしたのは、警告の物語として強く記憶に残ると思ったからと述べている。
米中双方の偉い人達は相手の取るであろう行為を推測できるので、結果として全面戦争の抑止力が働くはずという核抑止力の論理は簡単に破られる。「目には目を」というポピュリズムに押される政権は、全面核戦争へエスカレートする道を簡単に選んでしまいそうです。ポピュリズムに負けない、やられてもやり返さない理性的な政権を選ぶ必要あります。ことし選ばれる新米大統領は大丈夫でしょうか?
通常兵器の戦争での負け戦が戦術核を使う理由になる -
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Posted by ブクログ
ネタバレフィクションであり、サイバーに関して極端になんでもできすぎることになっていることに違和感は感じるものの(台湾侵攻の容易さとか中国の行動にち密さと杜撰さが混在していること等、違和感があることをあげつらえばきりがないが、フィクションなのでそこを難詰めすることに意味はない)、米中の対立においてどのような事態が生起しうるのかの頭の体操としては楽しめた。
一番興味深く印象深かったのがインドの行動。
米中の対立に、中立の立場で両者に軍事介入するという行動。
これが実際に行われるのかどうかは全くわからないが、国際社会において存在感を示すという意味で、軍事力の非常に効果的な使用法であり、米中戦争(厳密には戦