著者は事業承継支援コンサルティング研究会。このタイプの本はそれなりに読んだが、もう少し情報を深めたくお試しの気持ちで購入。
感想。とても良かった。「中小PMI」と書いてあると程度感がわからないのだが、読んでわかったけどエンタープライズ以外は、だいたいこれでイケると感じた。特に心持ちや経験量を補う目的では凄く良い。
備忘録。
・M&Aのうち1/3は相手先が競合。M&Aでは経営体制の見直しや人員の再配置が必然。だから心情への配慮が欠かせない。2018年版中小企業白書によればPMIの課題で最も多いのは「企業文化点組織風土の融合」で、次に多いのが「相手先従業員のモチベーション向上」。計画的かつ継続的にコミュニケーションを実施して、時間をかけて双方の意識の融合を実施しなければならない。
・シナジーは協働しなければ生まれにくい。うまく協働するには本音でコミュニケーションし、共通解を導き出してこそ。その点でも、一旦は子会社かに留めて、組織や風土の融合を進めたのちに段階的に統合していく方法を選ぶケースも結構ある。
・PMIでは、各部門や個々の社員には、仕事の新たな進め方を極力早く実践してもらいたい。方針にそぐわない展開は是正したいものだ。仕事の進め方やその重要性の理解を深めるには、裏付けとなる判断基準を提示するのが望ましい。通常の企業活動では、経営方針の浸透や目標設定時に面談によって納得感を形成しようとするが、PMIの集中実施期間にはまだ、マネジメントシステムが確立されてないケースが多いので同じようにはいかない。強引に進めれば関係性が悪化して融合が遅れるし、ゆっくりやるのシナジー創出が遅れてM&Aの失敗を想起しこれもまずい。
・理念やビジョンの再定義、経営計画の策定で方向性の明確化など。経営計画で収益力=事業価値を定量化できれば狙うシナジーもハッキリする。
・PMIはモニタリングも重要。そもそもとても難しいプロセスなので、計画通りできていないところを認識し、おざなりにならないようにしないと、PMIの終盤で全てやり直しになったりもする。
・まずは自社のローカルベンチマーク(通称ロカベン)で現状を整理しよう。「業務フロー」「商流」「4つの視点(経営者、事業、外部関係者、内部管理体制)」で整理するものらしい。
・統合プロジェクトでは、やることを決め、やらないことを決める。中小企業はリソースが少ないので全ての課題に対応することは現実的ではない。
・タックマンモデル。1965年に提唱された古い考えだが、チームビルディングは、形成期→混乱期→統一期→機能期の流れを経る。混乱期(違いが明確になり、意見が衝突し、個人主義の顕在化)は必ずくるので、ここをいかにスムーズに通り過ぎるか。
・簡易DDやトップ会談→基本合意→本格DD(プレPMI)→契約締結(DAY0)→統合(DAY1)。
・PMIは当初の計画通りに進まない。PDCAの連続である。実際に統合して初めてわかる現状がある。それが何かは事前にわからないので、「想定外が連続して発生すること」だけ覚悟しておこう。
・100日プランではクイックヒットが大事。勢いが出る。だから、プレDDの際に、クイックヒットの種を見つけておくのが有効。
・プレPMIで作った経営戦略は、相手の限定的な情報をもとに立案したもの。統合後には相手の従業員を巻き込んで再定義するのが良い。理由①プレPMIの情報に過不足や認識齟齬があるケースが普通。理由②社員を巻き込んだ再定義のプロセス自体が組織の融合に有効。
・但し、普通の社員は「戦略」とか「PMI」とか言われてもそこまで知識がないのが普通。だから伝統的な3CとかSWOTや業務フロー図などが、結局ちょうど良い。
・PMI推進チームは目的達成のために、チーム内の相手がどう感じているのか、こう言ったらどう思うか、などに細心の注意が必要。
・PMIの目的は「シナジーの発揮」にあることを忘れてはならない。具体的には「売上シナジー」と「コストシナジー」の企画と実行が代表的。売上シナジーの例は、クロスセル、販路の拡大、付加価値の向上、新サービス開発。コストシナジーの例は、売上原価項目の改善や共通化や統廃合、販管費も改善・見直し、共通化や統廃合を考えるのが基本。
・まずは事業停止に追い込まれるかもしれないくらいのクリティカルイシューを早々に羅列するべき。
・許認可も一旦全て羅列しよう。その上で一つ一つ、コーポレートアクションを起こした時の影響を確認する。ここは手間でもこれをやるしかない。
・取引先との契約も同じ。契約書を一つ一つ確認するしかない。知財も同じ。
・オープンブックマネジメントも有効。財務情報を開示して、「なぜ●●が必要なのか」を考えさせる。これをせずに「もっと高い視座で考えよう」とか言っても無理。