岩田文昭のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
周囲のお薦めで読んでみたけれど、これが専門外の方が書いたのかと思うくらいまとまっていて深みのある内容だった。
初期仏教からの流れで七高僧、そして法然上人、そのお弟子たち、そして親鸞聖人、果ては近代真宗についても触れられる壮大かつ丁寧な内容であった。
親鸞聖人の部分については、これはいろんな見方が出るところかなと思うが、それは自分が真宗中心だからそう感じるのかなとも思う。
物語でしか分からないわたしたちという大きなテーマがある。そうだなと感じる。ただ、物語のその向こうを感じていくことをしたいのだよ!!ということもある。物語でこれでいいではない。そういうことも思わされた。
これが大正解! -
Posted by ブクログ
一般的な浄土教や浄土思想の概説書というよりは、あとがきで筆者の記述があるとおり、ポール・リクールを代表とする「物語論」に立脚して、浄土教や浄土思想の変遷をまとめている点が本書の特徴だと思う。
ただ、概説書としての役目も果たせている内容かと思う。「物語論」や浄土思想の詳細について知識がないまま読み始めても、十分な脚注があるためストレスなく最後まで読みきることができた。
第六章の近角常観に関する記述については、筆者が近年力を入れている研究テーマとのことだが、浄土教そのものについては、筆者の専門ではないようだ。
本筋とはあまり関係ないメモ:
霊的体験を主張の根幹とする姿勢ついては、個人的にあ -
Posted by ブクログ
ネタバレ嘉村磯多集
編者:岩田文昭
発行:2024年3月15日
岩波文庫
嘉村磯多(1897-1933、明治30-昭和8)の短篇小説8編、随筆6編、書簡6通が、編者・岩田文昭氏により甦った。嘉村磯多の名は、岩田氏が10年前に上梓した「近代仏教と青年~近角常観とその時代」(岩波書店)で知っていたが、嘉村作品を読むのは初めて。編者の解説によると、嘉村文学は「私小説の極北」と言われているらしい。嘉村のプロフィールが書かれており、それを知った上で読むと小説もすっかり理解でき、かつとても楽しめる。
初読というか、楽譜でいう初見では、少し読みづらいところもあるが、1.5回程度読み(1回読んで主要なところを読 -
Posted by ブクログ
浄土教ないし浄土思想についての概説的入門書です。
法蔵菩薩のエピソードや浄土三部経についての簡単な説明のあと、中国仏教における浄土思想のなかで、善導に焦点をあてて解説がなされています。つづいて、日本での浄土教の展開に移り、源信、法然、親鸞のほか、法然の弟子のひとりである證空についてある程度ページを割いて解説がなされています。
著者は、浄土思想にかんするさまざまな物語がもつ力に注目することで、過去から現在にまでおよぶ浄土思想の意義を把握することをめざしています。そうした著者の姿勢は、浄土教の非神話化を推し進め、近代以降に哲学者たちによってその思想の意義がさまざまに論じられた親鸞をあつかうさい