陳舜臣の「中国の歴史」にも崖(やまかんむりはない)山悲歌と正気の歌の二章を割いて文天祥を書いているが、著者との違いが面白い。
著者は文天祥を忠君愛国なドン・キホーテと見るのに対して、陳は悲劇の英雄と見る。この違いは研究者か作家か、という違いからなのか。日本人と華人、或いは片や昭和九年生まれの国民学
...続きを読む校卒業(国民学校教育の反動として)、片や大正十三年生まれの神戸華僑という境遇の違いからか。
自分は著者の見解に同する。不遇なインテリが科挙主席という一点を拠り所として国家と己が滅びゆく中で気骨を見せた、という印象である。
喜久屋書店阿倍野店にて購入。