上田としこのレビュー一覧

  • フイチンさん 復刻愛蔵版 下

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     少女マンガといえば恋愛マンガのような印象を覚える。しかし、『フイチンさん』連載時、男女の恋愛を描くのはタブー気味。思うに、戦後社会が「女の子は花嫁修業を経て、両親が決めた相手と結ばれるべし」という空気だったのだろう。
     何と、下巻でリイチュウ坊っちゃまがフイチンに告白。大旦那の思惑の中、第一夫人という玉の輿が彼女に用意されていた。
     それを最終回であっさり断るフイチン。どこまで画期的なヒロイン像だったのか。

    1
    2021年01月05日
  • フイチンさん 復刻愛蔵版 上

    Posted by ブクログ

     時代を超えた作品である。満州という幻の国家の様子を伝える証言でもある。
     マンガならではの闊達さというか、本作の舞台は「戦前のハルピン」と「描かれた当時のニッポン」の二重写しになっている。
     フイチンは言うに及ばず、リイチュウ坊っちゃまの言動が愛らしい。
     『フイチン再見!』村上もとかの講演の中、「手塚治虫に始まるマンガの系譜とは別に、戦前の挿し絵文化の流れを受け継ぐマンガがある」とそのような発言があった。ヒロインの伸びやかな手足がそれを如実に物語っている。

    0
    2021年01月05日