市川森一のレビュー一覧

  • 蝶々さん(下)

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    ネタバレ

    男性上位の維新後の世において、侍の娘として生まれ、幼いときから『葉隠』を手本として生き抜くには、相当の覚悟と強靭な意思が必要である。それを体現して見せたのは、「伊藤蝶」、通称蝶々さんその人であった。武士道という言葉を聞けば、その顛末が自刃による散華となることは容易に想像できる。本作でもその部分は、そっけないほどに簡潔に書かれている。つまりは、散ることの美しさではなく、散るに至るまでの生き方や自害を判断した心の美しさを描くことが必要なのだということを、『蝶々さん』は教えてくれる。

    長崎式結婚――そう呼ばれた体のいい「買春」のためのシステムは、主に結婚という手続きを重視するキリスト教が要求する規

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    2020年09月28日
  • 蝶々さん(下)

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    ネタバレ

    上巻に引き続き、一気読み。
    プッチーニによって「マダムバタフライ」としてオペラ化されている、明治の長崎を舞台にした蝶々さんこと伊東蝶という1人の女性の人生を描いた作品。

    蝶が学校に通っていた頃は幸せな毎日だった。
    父の形見の学問のすすめを読み、ユリと仲良く、母と2人のババ様と暮らした生活がいかに恵まれていたかが読み進めると強く感じる。

    母が将来を見据え、6年後の女学院入学を申し込みに蝶を連れて行ったのがすごい。
    オランダ坂で蝶に言った言葉が印象的。この時代に生きた人としてはすごく強い女性だなー。やえさん。

    母とみわババ様の死後、しまババ様の痴呆悪化後の蝶はキツい目にあいながらも大事な人た

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    2012年02月08日
  • 蝶々さん(下)

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    美しいという言葉は蝶々さんのある言葉だと思う。彼女は最後まで誇りを捨てなかった。本当に武士の娘であり続けた。明治という激動の時代に飲み込まれるのではなく、しっかりと人生を歩んだと思う。私はだれのおもちゃでもないと証明する。独立した心をもつ女性であった。上巻は嫌われ松子を思い出させるような展開だったが、下巻は不遇ながらも強く生きる彼女に感銘した。

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    2011年12月27日
  • 蝶々さん(上)

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    市川森一は、たまたまDVDで『淋しいのはお前だけじゃない』(1982年放送のTVドラマ)を見て以来、とても気になる作家になった人で、今夜(2011年11月19日)のNHKで放送のドラマ『蝶々さん 最後の武士の娘』の原作が本書ですが、はたして時代に翻弄された薄幸の女性・蝶々夫人こと伊東蝶を、宮崎あおいがどう演じるのか、今からドキドキしているところです。

    TVドラマ出演としては『篤姫』以来3年ぶりですが、あの時の興奮は細部にわたってすぐ思い出せると同時に、まったくあきれるほどの彼女のみごとな名演は、本筋のストーリーを満足して見ること以上に、私の眼と心にカタルシスを与えてもらったのでした。

    たし

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    2011年11月20日
  • 蝶々さん(下)

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    p.426「私が、だれのおもちゃでもなかったという証明だけはしなければならないと」
    p.442「美しく生きるために命がけになる。」

    今まで時代劇を見ていても、サムライの自害をどうにも理解できんかった。
    でもこれを読んで蝶々さんの生き方を知って、侍の誇りとか生きることへの意識とか、少しは納得できるかな。

    辰さま&お絹さんのエピソードは運命的すぎて心が弾みました。

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    2011年11月08日
  • 蝶々さん(上)

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    蝶々夫人、なんてタイトルくらいで内容もよく知らない。だからあの蝶々夫人が実在していた!と帯にうたわれていてもへぇぇくらいだった。
    それでも夢中になった。
    貧しくてどちらかといえば恵まれない人生を生きたお蝶の“美しい生き方”に魅せられ、顛末のわかっている物語なのにつんのめるように先へ先へ読み進め、今し方すべてを読み終えた。

    長崎の情景がすばらしく、憧れが増した。
    今度はお蝶の生きた跡を探そう。

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    2011年08月20日
  • 蝶々さん(上)

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    ネタバレ

    蝶々さんと出会ったのは、島田雅彦氏の『彗星の住人』に登場人物として登場したことがその端緒だったと記憶している。父の足跡を辿る形式で描かれた『彗星の住人』は、衝撃的な出会いだった。以後、島田氏の著作は、数多く読んでいる。島田雅彦という作家に心酔したのは当然のこととして、歴史に翻弄されつつ、その歴史の渦にともすれば飲み込まれそうになりながらも、おのが恋と意志を貫いた蝶々さんという一人の女性に心惹かれた。自分でも蝶々さんの足跡を少しでも辿ってみようと、数々のマダム・バタフライに関する著作を読んでみたし、蝶々さんの故郷である長崎の町を再訪したりもした。

    プッチーニの手になるオペラ『蝶々夫人(マダム・

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    2020年09月24日
  • 蝶々さん(上)

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    オペラで不思議に感じていたことが実はこういうことかと認識できました。日本人だから、アメリカ人だから、そう考えるのねーと。

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    2013年04月21日
  • 幻日

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    市川森一さんの最後の小説です。島原、天草の一揆と弾圧されたキリシタンとが一緒になった島原の乱、天草四郎の生い立ちなどよくわかりました。市川さんがキリスト教徒だからでしょうか、乱を起こしたキリシタンにも、それを追討する幕府の上使にもどちらにも愛情をもって書かれています。

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    2012年06月05日
  • 蝶々さん(上)

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    やはり時代小説なだけあって始めの導入部はややかたい。蝶々さんの身にふりかかる幸運と不運。不運の出来事が目立つものの私は蝶々さんの出逢い運は凄いものだと思う。いつの時代も人生は出逢いによって変わるのかもしれないと思った。下巻早く読み始めたい!!

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    2011年12月23日
  • 蝶々さん(上)

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    難しかった。けど面白い。
    いつも現実を受け入れる蝶々さんの姿に圧倒される。
    下巻も買ってこよう。

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    2011年11月01日
  • 幻日

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    たくさんの史料を読み込んで構成されているだけに、
    異聞ながらも史実からは離れず、面白いお話に仕上がっていました…。

    脚本家さんらしく、キャラクターの設定や動き、台詞がはまっており、
    天草四郎を、単に美しきヒーローとして描いていない点がいい感じの要素に…。

    歴史にifはありませんが、
    もし、長崎が奪還されていたとしたならば…、どぅなっていたんでしょうか…。

    ただ、キリスト教についてあれこれ言ぅつもりはまったくありませんが…、
    殉教の考え方だけは…、やっぱり理解できないし、支持もできないなぁ~。

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    2011年10月26日