池亀彩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本は現代インドにおけるカースト制について語られる作品です。この本は著者の現地での調査に基づいた貴重な記録です。机の上で文献を読むだけでは知りえない、リアルな生活がそこにはあります。
この本を読んで、カースト差別が現在でもこれほど強力に残っているのかということに驚いたのはもちろん、「実際にどんな差別を受け、どんな恐怖、屈辱に生きていかなければならないか」を知り、私はそれこそ恐れおののいてしまったのでした。
圧倒的な成長を見せるインドの影をこの本では知ることになります。この本を読めばインドという強烈な存在を通して私たちの生きる日本についても考えることになることでしょう。 -
Posted by ブクログ
「白人社会で人間として扱われない、認知されない、他の有色人種のように差別してはいけないという意識以下の透明人間なアジア人」という感覚を持っている私は、自ら欧米に進出する日本人(アジア人)を「すげえなぁ。でも俺はこの見た目ほとんど同じ、話し言葉同じの1億2千万ぬるま湯に浸かったままゆったり暮らしていくぜ。わざわざ差別されに外国で暮らすなんてまっぴらごめん。なんで自分の肌の色や出身国をバカにされながら暮らさにゃならんのよ。」と思っていますが、どこにも逃げ場がない人ってインドだけでも数億人、世界全体では数十億人いるんですよね。(世界中の女性を考えれば少なくとも40億人)
さてこの本は私のような「イ -
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本当に「残酷」という言葉がピッタリ。
名誉殺人によって低カーストの夫を奪われた女性、洗濯機を買うより低い価値で働かされる洗濯階級、時計の文字が読めず著者に時間を訪ねる非識字の女性たち、水牛の首を切り血を飲む儀式を強要させられるダリト(不可触民)、「見てはいけない者」でなく「見て愉しむ者」になってしまった上裸のシャーナール女性、大変な仕事をしているのに技術供与を恐れて後継者を育てられないダリト…。
浄と不浄の考え方、子供の命より優先される家族の面子、女性の立場の圧倒的な低さ、苛烈なカースト差別など、まだまだ重すぎる問題がインドには蔓延っているのだと知った。ダリトの女の子とか、生まれた瞬間から -
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手に取れたことに、まず感謝。新進気鋭の文化人類学者とあるが、それをはるかに上回る素晴らしい執筆の力を感じさせる・・今後が楽しみ。
近く、インドは人口数が中国を抜いて世界一位になるという。
この本によるとインドは「男児の出生が絶対」で妊娠中に、女児と分かれば掻爬する様だ。そして一億人余の女の命が抹殺されたとある。
生命の倫理を社会的掟により歪めての人工的社会は今後どうなって行くのだろうと感じる・・難病、発達障害でも性差による発現数が異なる。
モディ首相が先進国と伍して歩む姿をよく見る・・彼はヒンドゥ―勢力の雄。彼の姿には国内指数に現れてこないインド社会の底辺の暮らしは見えてこないどころか、そ -
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この本の指摘する「残酷さ」は、インドにおけるカースト制のことだ。日本でも身分の違いが結婚に対して支障になる事がかつてはあったと思うし、穢多非人のような存在があったが、インドではこれが現存していてあからさまな差別がある。ダリトと呼ばれる不可触民の扱いだ。
著者は女性の研究者で、カンナダ語話者。壁に囲われた富裕層の居住地ではなく、壁の外の住人でありリアルなルポが見られる。
「私はダリトです。そして高カーストの妻と結婚しました。でもいまだに自分がダリトだと告白する時に躊躇する自分がいます。これが黒人差別などの人種差別との違いでしょうね。彼らは見た目からして違うから、名乗る必要がないでしょう。でも -
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昨今のインドの発展は目覚ましく、アメリカなどの高度な教育機関においても教授たる層にはインド勢が増えていると聞きます。一方で、臭いものには蓋精神でもはや見ないものとされているような人々の姿を本書で知ることができました。差別意識を含んだ神話を祀るお祭りがいまだに続いていたり、このタイトルにおける「残酷さ」というのはインドにおける「格差社会」を指しているように思います。女性へのレイプが多い国だとは聞いていましたが、貧困を前にして重婚もok。ダリトへの差別・それを排除しようと立ち上がれないほどに怒りの心理を麻痺するまでに破壊された人々など。知らない側面も多くありました。恥や世間体を優先として罪が行われ