Posted by ブクログ
2021年12月13日
いつだったか、インドでのカースト制度はもう古い昔の話だと話す人を見かけたことがある。それはインドの一部の人に対してはそうともいえるが、正しい認識ではないことがわかった。IT業界で高収を得られる一部のエリート、海外で働くことができる一部のエリート(こちらもたいていITである)に限っては、縛られない自由...続きを読むな生活をしているのだろう。
私の中のインドのイメージといえば、算数がとても得意で2桁×2桁の計算を簡単に言えるとか、インド人はとても優秀だとか、最近だと世界のワクチン製造国だとか、そんなところだった。実をいうとインドに行った事がないので、インドのことはよく知らない。インドに行った人は、インドが最高と言うか、インドは最低と言うかのどちらかで、非常に興味深いものの私は水場の清潔度を重んじるタイプなので、おそらくインドは水に合わないだろうと勝手に思っている。
本書に出てくるのはそんなインドのイメージとは全く合わないエピソードばかりだった。まず身分の違いにより両親に結婚を反対された女性が出てくる。女性の方が男性と比較すると上位カーストで、男性の方は旧不可触民(ダリト)と呼ばれるカーストに属しており、2人は大学で出会い、恋をし、女性の両親に猛反対を受けながら結婚をする。と、ここまではよくある話で駆け落ち婚のようだ。ところが両親の嫌がらせは続く。ここまでもよく聞く話のように思える。ある日、夫婦が2人で歩いていると、5人組の男たちが夫に向かって襲撃をし、夫が殺される。夫を殺した人間を雇ったのは、彼女の両親である、と。
おいおいまじかよインド。殺すのか。と頭の中がはてなマークでいっぱいになっているところで、インドの根底にある考え方に浄性があると説かれる。浄・不浄の考え方では、カースト上位ほど浄性が高いとされ、下位の人間と交わると穢れると考えられる。なるほどこの考え方は日本で理解はできる。
本書ではこのような、生のインド人の価値観を誤解のないように書かれている。それは良いとか悪いとかではない。それにこの作者の人間関係とフィールドワークに基づく作品なので、これがインドというものではない。インド人共通の考え方と価値観にこんなものがあるのだなと少し垣間見れるのだ。
さて日本ではどうだろう。インドほど残酷だろうか。東京医大が入試で女性の点数を一律で減らして合格調整をしたことが明るみに出た時、憤りはあるが、なんとなくそんなことがあるだろうと理解できた。就職試験で縁故関係なく、性別で下駄を履いているなと思われるシーンにも遭遇した。
親戚を見渡すと、男が産まれた時は喜んで、やっぱり男の子は違うねえ、とほざく。(姉の前でだ)
女を産むと、男を産めと言われる。友人は妊娠した子が女の子だと祖母に言ったら「出てきたら男の子ということはないかね?」と言われて嫌な気持ちになったと言っていた。
本書の池亀さんのような視点で日本人を論ずる本があれば読んでみたいと思った。