川口勇貴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「灯火のオテル」完結の4巻。
善も悪もなく、ありのままを語り継いでゆく物語となりました。
定められた道を歩むのではなく、道を選択する術を残すための物語。過去を背負い、現在を生き、未来へ進むために。その指標の一つとなるための物語。
苦しみも喜びも悲しみも楽しさも、オテルたちが経験したことの全てを語り継ぎ、新しい世代への道標とする。戦争が終わって世界へと還っていった精霊たちは、姿は見えないけどもあらゆるところに存在していて、オテルたちがいなくなった後もなくなってしまうことはない。
物語を残すのは、いつかいなくなってしまうオテルたちが、再び精霊たちと出会うための約束だと思うと、連綿と続くであろう世界と歴史の行き先に光はあるのだと思います。
その導きとなる明かりを残すための宮廷吟遊詩人という役割。
「灯火のオテル」とはそういうことか。
闇夜の中でも、行き先を照らしてくれる灯。 -
Posted by ブクログ
ドアドアとの戦いの中、ゆきすぎた自己犠牲によって暴走してしまうオテルとフィルギャ。誰かを護りたい、という心胆自体は尊ぶこのであるのは違いない。だからといって暴走してしまっては本末転倒。
悲しみをなくすために、誰かを何かを護る、の中には自分自身のことも含まれている。それを忘れてしまうというヒーローの献身性は、正直見ていられない。
自分という個の核となるものが、他者との関係性に寄りかかることで形作られている側面があるからでしょうか。社会に属している以上、他者との関わりというものからは逃れられずにあるので、難しいことではあるか。匙加減というか、なんというか。
他者への依存でも拒絶でもなく、双方のバランス。
力を得たという責任もあるのだな。
人と精霊のハーフ&ハーフである半神は、本来バランスの取れた状態ではないのかなぁと思います。
暴走の先の対話を経て、オテルとフィルギャがどう成長するのか。 -
Posted by ブクログ
鉄の精霊を救出し、風の精霊の保護へと向かうオテルたち。
敵である氷の国の幹部、氷魔六角の一人・剣角のスルルドとの対決。
魂角・コーレリオの登場、月輪のシクステンの本気と見どころある場面ばかり。
スルルドとの決着回、第13話の英雄譚がいい。
北欧神話とヴァイキングを下敷きにしている「灯火のオテル」。そうである以上、誇りや名誉というのは、避けては通れないもの。どのように扱ってゆくのかが物語の肝になるものなのですが、ここでちゃんと提示されたと思います。
誇りや名誉を振りかざして生き死にを軽く考えるのではなく、それらの信念のもとにどう生命を費やしてゆくのか、ということが物語のテーマの一つかなと思いました。
自己犠牲のもとに、生命を投げ捨てしまう危険があったオテル精神に、スルルドは一つの火種を残したのだと思います。
手を変え品を変え、何度も繰り返されてオテルの成長に繋がってゆくのでしょう。
あと、トロッコ突入大作戦は勢いが好き。 -
Posted by ブクログ
『レッドフード』の川口勇貴の新作「灯火のオテル」。
北欧をモデルにした世界で、剣と精霊で戦争をする勇者たちの漫画です。
冬が延々と続く極寒の世界。森の国の少年オテルが、戦場で火の精霊と出会ったところが物語の始まり。北欧やケルト神話がアイデアのきっかけであると思うので、物語はサーガという意味合いになりますね。
主人公のオテルは物語の英雄に憧れてはいるものの、命よりも名誉を重んじて死に急ぐタイプの勇者ではなく、生き抜くことの大切さと、その覚悟の上で戦いに挑む勇敢さを持ち合わせているような印象。
ただ、生き抜くことの対象が自分を含む味方や親しいもの全体に波及していて、優先順位で言うと、自分が最も低いところにいるような気がするなぁ。自己犠牲であれば、簡単に命を擲ってしまいそうな危うさは感じます。
勇気と自棄が紙一重のところにあるのはよくない。
精神の強さは別として、持たざる者だったオテルが火の精霊の力を得て、どんな戦士になってゆくのか。敵である氷の国の戦士が、今のところことごとく残虐非道なクソ野郎なので、あちら側に心を寄せてしまい苦悩する、ということにはならなそうです。自己の安全を考えない、と言う危険は常にありそう。1巻途中で始まった修行編で、改善されれば良いのですが。
裏表紙に採用されている1コマ。
焚き火に斧をかざして鉄板がわりに焼き魚を料理している場面です。こういう戦場での、その場の工夫が見られるシーンは好きです。
なんというか、ディテールアップパーツだと思います。