中井遼のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
意識調査・世論調査等には今まで一度も回答したことがない。ニュースソースなどで取り上げられるようなその類のものを見るときはいつも眉唾物扱いだ。本書では過去のそのような各国の論文として発表されている調査的なものを(ご自身のものも含め)幅広く取り上げその論旨を読み解き客観性を高めようと尽力していることが感じられる。
あとがきで「実証研究にフォーカスした本であればという条件でお引き受けすることになりました。」とあるとおり、タイトルは壮大だが大言壮語するような姿勢はみられず好感が持てた。ひとつのことに単純に割り切れるようなテーマではないので、これからも色々と読んでみて様々な角度から物事をみることについて体現していこうと思った。 -
Posted by ブクログ
ナショナリズムとは、ネーション(国民、民族)による政治を重視する主義である。国民の政治に関わる意識、またそれを推進するイデオロギーの要素であり、また国民の生活の様々な場面で顔を出す国民にとって日常的なものでもある。
そのナショナリズムは帰属意識、愛国心、排外意識という3つの側面を持つという。その3つの側面に関して、それぞれ現在までの学会の研究成果に基づいて解説を加え、これまでナショナリズムについて持たれてきた一般的な言説の当否なども検討する。
また、ナショナリズムが実際の社会で政治や経済現象、国際社会での暴力や国内紛争の発生とどのような関わりがあり、またどのような時にどのような影響を及ぼしあうのかなどを丁寧に説明する。
ナショナリズム研究の現在を知る上での必読である。 -
Posted by ブクログ
素晴らしくわかりやすかった。流石サントリー学芸賞受賞の学者さんの新書というクオリティ。ナショナリズム=右派というイメージが強いが、歴史的文化的な文脈においてはむしろ左派こそがナショナリズムを活用していたこともあるし、現代においても国や地域によって様々である。そして、左右とは何なのか、ということを一軸ではなく経済的な文脈(分配・平等か市場の自由か)と社会文化的な文脈(GAL-TAN)の二軸で捉える視点やナショナリズム意識を構成する意識の分類や相互関係など、メディアや一般的なイメージでは雑に捉えられているものが最新の研究の世界ではどのように整理され、探究が進んでいるのかよくわかって、これから参照する機会が多くなりそうな良書と出会えました。教えてくれた人に感謝。
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Posted by ブクログ
様々な学術研究結果を参照しながら、ナショナリズムがどう形成されるか、社会にどう影響し得るかを説明した本。
ナショナリズムの構成要素として、
①帰属意識(National Identity)
②国民としての誇り(National Pride)や愛国心
③優越感情(Chauvinism)や排外主義
に分けられると説明されている。①≠②≠③であることは述べられているが、個人的には①⊃②⊃③なのではとも思う。例えば、帰属意識はあるが国民としての誇りはない、という場合はあるがその逆はない気がする。
仮にそうだとすると、全ての起点は帰属意識で、社会はこの恩恵と弊害を常に受け続けているのだなとつくづく思う。国家に限らず、共同幻想で作られた集団への帰属意識という諸刃の剣を扱うには、本書のような冷静な分析を知っておくことがまず重要だと思う。 -
Posted by ブクログ
ナショナリズムは多くのイデオロギーとともに近代に生まれた概念。ナショナリズムが台頭している背景にはそうでない国が戦争に敗れて消滅しているから。その意味で国家の数は徐々に減少している。
ナショナリズムは本質的に同胞愛などの正義と結びつくため危険である(主観的正義)
グローバル化は世界のと競争が促されるためグローバル化が進む国ほどナショナリズムは強く働く。
ナショナリズムは近代化とともに醸成される。教育、軍隊、鉄道、出版の普及。
ナショナリズムは帰属意識、愛国心、排他主義の3つの要素から成る。
帰属意識は必ずしも自国を肯定するものではない。
経済格差を国内から問題の目を逸らせるため政府は愛国心を煽る(ナショナリズムの陽動理論)
低学歴低収入ほど不安に駆られてナショナリズムに走りやすい。
排他主義は個人的感情よりも抽象的な脅威認識であり本人にとっては正義となる。
福祉や民主主義といったリベラルな社会装置はナショナリズムに基づく共同体意識なしには成立しない(リベラルナショナリズム)
アメリカは自助努力こそがアメリカ人の要件とする意識が強く帰属意識がと強いほど再配分や福祉への反対が強くなる。
天然資源や自然はナショナリズムの源泉
戦争よりも内戦が5倍多い。経済格差と民族の違いが結びつくと内戦になりやすい。
民族を恣意的に区分けし、敵視する構造を作りすぎるとナショナリズムを煽りやすくなる。リトアニアやウクライナのユダヤ虐殺の例。
『そうであるか』と『そうでないか』の二択しかなく、妥協の中間というものがない。
小選挙区の方が比例代表よりも5倍内戦率か高くなる。
明治維新もナショナリズムが持つ階級横断的な平等ではなく、内部の一体感が膨張されのちの対外戦争に繋がった。
被害を受けたという事実ではなく被害を受けたという認識が人を動かす(被害者ナショナリズム) 歴史をどのように記憶するか?
ファシズムはナショナリズムの量的な強化版
ナショナリズムに基づく共同体意識は、人々が福祉を提供することに肯定的な効果をもたらしたり、政治参加を促す効果がある。
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Posted by ブクログ
なかなか面白かったですね〜
まぁ、ナショナリズムといわゆる「右」とか「左」ってどのように結びついてるかって話で、ざっくりと結論を言っちゃうといろいろあるよってことなんよ
ナショナリズムひとつとっても色々な意味を内包していて多義的なんよね
で、日本で言えばナショナリズムって「右」と密接に結びついてそうなイメージなんだけど、時代の移り変わりであったり、国によっては全然そんなことないよ
ほんと色々あって、その色々を踏まえた上で考えるのが大事なんよってことなんよ
特に印象に残ったのが、ナショナリズムとLGBT平等の関係性についてってところ
みなさんはどんな印象を持つ?
わいはそれって相反するイメージなんですな
いわゆるナショナリストなんて呼ばれる人は同性婚なんて絶対認めません!って感じ
でももうこの時点でダメーってことらしいです
そう思う時点で潜在的な差別意識が働いてるんじゃね?ってさ
国によっては「ナショナリズムとLGBTって関係なくね?」ってところもあれば、伝統的にLGBT差別もってのほかってところはむしろ「ナショナリズムってLGBT平等実現してこそじゃね?」って国もあるんよね
他にも色々と国によって違っていて、大変興味深く読み終えることができました
良書!
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Posted by ブクログ
ネタバレナショナリズムは決して、保守に限った話ではなくLGBTなどのリベラルや平等を目指す主張の際にも使用されることを知った。そのためナショナリズムを用いて、各々の政党が掲げる色に変化させることができるらしい。
またハンガリーとポーランドの民主主義におけるマイノリティの排除に対して、ナショナリズムが切り崩す構図はとても興味深かった。民主主義といえば国民の意見をダイレクトに反映するといったイメージがあったが。だが、実は意を唱える少数派の人間を弾圧する政党の存在を知り、それはやはり好ましくないと思った。そのため、ブレーキの役割を担うナショナリズムにより、2010年代に民主主義が後退したのもよく分かる気がした。
そして現代では政治を考える際に、経済よりもさらに社会文化的な側面を重視する傾向を知った。これに対して、確かに政党比較をする際に自身が理想とするライフスタイルをを重視して考えていることを改めて気づいた。
最後に、我々日本人が抱く左派と右派のイメージは決して、世界では決して通用するわけではないことがわかった!! -
Posted by ブクログ
日本語で権威主義体制について一般向けの書物はほとんどなく、本訳書が出たことは貴重なことらしい。
権威主義体制について、軍事、個人、支配政党型に分類しそれぞれの特質を論じているのは興味深かった。近年は民主主義体制から移行する個人型が増加している。また、権威主義体制であっても民主主義の外形を持つようにしたり抑圧の仕方も公然としたものではなく目立たない巧妙なものに変化しているとのこと。
基本的に第二次世界大戦以降の権威主義体制の状況に対する記述で、近年の学術的成果をまとめたものと思われる。権威主義体制の発生メカニズム・条件、経済成長との関係等が論じられている訳ではなく、その点物足りなさを感じた。