あらすじ
後退するデモクラシー
ここ数年、民主主義に巣食うポピュリズムが大きな注目を集めている。ブレグジットやトランプ政権はじめ各国はデモクラシーに特有の病理に苦しめられているというわけだ。
他方、こうした潮流はいまや「民主主義の後退」として、新たな局面に入ったと捉えることもできる。
その際、鍵となる概念が「権威主義」である。
本書によれば、民主化の「第三の波」(ハンティントン)にもかかわらず、権威主義体制は依然として政治の日常風景となっており、現在、数において民主主義国が権威主義国を超えてはいるが、もしこの傾向が続けばその優位は逆転するという。
私たちは、好むと好まざるとにかかわらず、ビジネスパートナーや援助先として権威主義体制と関わり、また国内の権威主義化に向き合わなければならない地点に立っているのである。
民主化の波に洗われた権威主義は、より巧妙にアプローチしてくる。強権的でむき出しの暴力ではなく、柔軟かつ狡猾な統治がその最新版だ。
加えて、お馴染みの軍事独裁や一党独裁ではなく、個人独裁の比率が近年高まっており、その兆候になるべく早く気づくことが重要になってくる。身を守るための必読書!
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Posted by ブクログ
権威主義体制について正面から解説されている良書。他に類似の本がないので貴重。以前読んだ「市民的抵抗」と同じシリーズで、トピックが細かく区切られながら進んでいくので、非専門家でも読みやすい。世界の全地域(アフリカ、中東、南米が多いが)の情報が網羅されているのも良い。主に第二次大戦後の権威主義の様々な情報をデータ化し、統計的に分析している。
Posted by ブクログ
日本語で権威主義体制について一般向けの書物はほとんどなく、本訳書が出たことは貴重なことらしい。
権威主義体制について、軍事、個人、支配政党型に分類しそれぞれの特質を論じているのは興味深かった。近年は民主主義体制から移行する個人型が増加している。また、権威主義体制であっても民主主義の外形を持つようにしたり抑圧の仕方も公然としたものではなく目立たない巧妙なものに変化しているとのこと。
基本的に第二次世界大戦以降の権威主義体制の状況に対する記述で、近年の学術的成果をまとめたものと思われる。権威主義体制の発生メカニズム・条件、経済成長との関係等が論じられている訳ではなく、その点物足りなさを感じた。