平井太郎、後の江戸川乱歩が二人の弟たちと駒込団子坂に開いた古本屋は「三人書房」
その二階に居候する、乱歩の会社勤め時代の同僚・井上を加えた四人の周辺では、奇妙な事件がいくつも起きた。
古本屋はわずか二年で閉店してしまったが、その後作家としてデビューしたあとも、乱歩の名推理は謎を解き明かしていく。
...続きを読む凄惨な殺人事件などは起こらないけれど、では「日常の謎」かと言われたら、全然日常とは言えない不思議の数々。
同時代の有名人たちも登場し、史実の隙間にお話を作るわけだけれど、証拠の消し方がまた上手い!
『三人書房』
古書の間から松井須磨子の手紙らしきものが見つかる。
島村抱月の他に男がいた?!まさか。
ミステリーの禁じ手ギリギリではありませんか!
ま、乱歩さんの優しさってことで。
『北の詩人からの手紙』
花巻から上京した宮沢賢治と、浮世絵贋作事件について話す。
故郷に帰った賢治から、あの事件のことを考えていたらこんな物語が思い浮かんだと「グスコーブドリの伝記」の構想が送られてくる。
『謎の娘師(むすめし)』
末弟の敏男(としお)は、見世物の怪力美女に夢中。
その頃、土蔵破りが世間を騒がせていた。
乱歩の嗜好もちょっと匂わせの、タネも仕掛けもあるお話。
『秘仏堂幻影』
円泉寺の秘仏を盗みに入った賊が、化け物を見た!と何も盗らずに逃走。
北斎の娘・お栄が、横山大観の師・岡倉天心が守ろうとしたものは?
『光太郎の「首」』
高村光太郎が依頼を受けて製作した頭部の肖像「首」が、立て続けに三作も盗まれ、無惨に破壊された!
乱歩はいたく興味を引かれ、謎解きに挑む。
レトロなおどろ感が出てきた!と思ったら、動機がちょっとユーモラスであった。