あらすじ
昭和21年、栃木県足利郡にてひっそりと暮らす中山太郎の元を、下野新聞の記者が訪れる。探偵小説執筆の参考に、かつて柳田国男に師事し異端の民俗学者として知られる中山の、同時代を過ごした偉人達との交流について話を聞きたいという。明治、大正から昭和初期にかけて、柳田のほか、種田山頭火、宮武外骨、南方熊楠、そして平井太郎らと過ごした日々は、謎に満ちていた――。話を脱線させつつも、中山太郎は奇妙な出来事の数々をゆるりと語っていく。『三人書房』で鮮烈なデビューを飾った著者による、滋味溢れる連作ミステリ。/【目次】「オシラサマ」東北へ向かう汽車の中で柳田国男は奇妙な男と出会う。/「外法頭」宮武外骨と中山は二人で《明治文化探偵会》を立ち上げる。/「百物語」森鷗外も出席したという百物語の会場で高価な首飾りが消失する。/「秘薬」高橋お伝処刑の際に起きた椿事の背景を、若き日の江戸川乱歩が解き明かす。/「生人形」忘れられた生人形師の作品にまつわる不思議な現象。/「忘れない熊楠」南方熊楠が遺した謎の言葉の意味を下野新聞の記者とともに紐解く。
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Posted by ブクログ
この数年、大正から昭和にかけての実在の人物達を登場人物にしたフィクションが次々に刊行され、気になったものは手にとり楽しませてもらっている。この連作集の中心人物は中山太郎。取り巻く人物達は種田山頭火や江戸川乱歩や三遊亭円朝や宮武外骨。そして、中山太郎を「軽薄なる人」と痛罵した南方熊楠。作者は、作中で、この熊楠の言葉の真意を、想像を膨らませて語ることで、あの世での中山太郎との和解を願っているようにみえる。実際にはどうだったのか、誰にもわからないけれども。
Posted by ブクログ
新聞記者が民俗学者の中山太郎を訪ねて、彼の同時代の偉人たちのエピソードを聞き出すというスタイルの連作短編集。柳田國男、種田山頭火、南方熊楠などが登場する。
一見怪異のように見える話も実は…という種明かしがいまひとつインパクトに欠けるので地味な感じだが、柳田國男がオシラサマにビビっているところなど面白かった。
Posted by ブクログ
言うほど民俗学してたか?地方を扱っているのはオシラサマくらいじゃない?
著者は69歳でデビューだそうで、幾つになっても希望を捨ててはいけないという一例。