大川内直子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ビジネスパーソン向け文化人類学入門書の決定版といって過言ではない。
本書の特長は二つ。
ひとつ目は、あくまでビジネスパーソンの視点に立ち話を進めている点。「文化人類学とはなんぞや」みたいな高い位置から話されている感じが一切しない。
ふたつ目は、筆者の丁寧で分かりやすい説明だ。噛み砕いて説明するが、単純化しすぎたりしないよう注意を払っているのが伝わってくる。
個人的には、「問う力が必要」「ネガティブケイパビリティを大切にすること」が特に印象的。またこの二つはセットで保持しなければならないと思う。問いを立て、一旦正解らしきものを導出する。ただしそれは真理ではないから、「分からなさ」は保持し続ける。そのうえで、問いも正解らしきものも、常にブラッシュアップし続ける。
このサイクルが大切なのだと思う。
特にこれからは外部環境の変化が激しい時代だから、いつまでもひとつの「正解」に固執し続けるとあっという間に時代遅れになりそう。
重要な視点と気づきを得られた。人に薦めたい一冊。 -
Posted by ブクログ
タイトルは売れ行きを狙ったものだが、中身は文化人類学という学問を一般の人でも理解できるようによく整理された本。「遠くのものを近く見る」「近くのものを遠く見る」の2点で整理し、特に前者については文化人類学が発展してきた歴史を順序だって、進化主義・文化相対主義・機能主義・構造主義・解釈主義を具体事例とともに説明。後者はこれら文化人類学で使われるレンズを自分の身の回りの「あたりまえ」に適用し、自分を相対化する手助けをすることを解説。
最近デザインの勉強でも文化人類学という言葉に触れることはあるが、文化人類学特有のフィールドワーク(参与観察)から波及した分野はデザインだけでなく、多々目にする。文化人類学を身近にする最初の1冊としてはとても良い本でした。 -
Posted by ブクログ
資本主義について、歴史も含め分かりやすく整理・検討し、新たな視点を提示してくれる一冊。
著者は資本主義を「個々人の『将来のより多い富のために、現在の消費を抑制し投資しようとする心的傾向』から生じる経済行為の総合的な表出である」と定義する。
特に、「資本主義は個々人のミクロな振る舞いの総合的な表出」として、文化人類学的視点からアプローチしている点が大変刺激的。
そして第一部では、空間・時間・生産=消費という、三つの次元における伝統的なフロンティアがほぼなくなったことを示す。
第二部では、フロンティア消滅がインポリューション(内へ向かう発展)に転換していく様を整理した。
その後、伝統的フロンティアの消滅、資本のコモディティ化(カネ余り)、分かりにくい世界がアイデア資本主義の到来に結びつく。そしてアイデア資本主義の事例を示しつつ、その可能性や未来への希望を示す。
最後に、著者の資本主義の定義である「個々人の『将来のより多い富のために、現在の消費を抑制し投資しようとする心的傾向』から生じる経済行為の総合的な表出である」が効いてくる、一本に繋がってくる。
ビジネスパーソンや資本主義を考える全ての人に、まず足がかりとして読んでほしい名著。ぜひ。 -
Posted by ブクログ
何となくみんなが感じていたことを、明確に説明してくれた気持ち良さが本書にはあります。
常に進出するフロンティアを見つけて来た私達。フロンティアが見つからないことが今の閉塞感の原因の1つのように思えます。
そんな時どうすべきか。
著者は文化人類学の概念でインボルーションを提唱しています。内へ向かう発展です。もとはジャワ島の農業発展の特徴を表したものです。
そしてインボルーションを加速させた時に最終的にたどり着いたのが「アイデア」。今のところAIでは不可能な人類だけのものです。
この財産は、新たなフロンティアが見つかった時にはもっともっと活かされると思います。きっと物凄いROIになるはずです。 -
Posted by ブクログ
プロローグを読んだ時には、さすがコンサル、分かりきったことを小難しく書いてるわ、と思っていたが、読み進めるうちに真っ当なことも書いてあるのが分かってじっくり読み始めた。
仮説を生成することが文化人類学の強み。仮説を検証するのが既存科学であるのに対し、文化人類学は現場に入り何が問題なのかを見つける。このフィールドワークという手法こそが文化人類学。その手法はビジネスにも応用できると主張している。
結局、現場を深く理解しなければ適切な判断や行動ができないということを、文化人類学という新しく独自性があると思われるフレームワークで定義しているに過ぎない。でもそれだけのことに、いろいろな尾鰭をつけて説得力を持たせているのはさすがコンサル。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ文化人類学について初めての人にわかりやすく体系的に説明された書籍だと思う。学問がどのように進化してきたか、それによりどのようば視点を獲得してきたか、そしてそれがどのように活かせるか、平易な言葉で興味を持てるように書かれており、非常ににわかりやすい。
知っている内容も多く、個人的には物足りなかった部分もあるが、良書だと感じた。
ネガティブケイパビリティ:わからないという状態に耐えること、という概念は初めて知り、今の世の中はあまりにもわかりやすさを求めすぎている、人間を深く理解するにはネガティブケイパビリティが必要というメッセージが印象に残った。 -
Posted by ブクログ
資本主義は、行き交う車や株価の上下だけで語られる時代を過ぎた。いま最前線にあるのは、形なき「アイデア」である。文化人類学者・大川内直子は、その動きを市場の論理だけでなく、人びとの暮らしや価値観の編み目から読み解く。
発想は一人の頭の中に生まれるが、共感という回路を通って社会に広がる。そこでは効率よりも物語が、所有よりも共有が力を持つ。
だが、創造性さえも競争に組み込まれるとき、私たちは何を拠り所とするのか。
利益の先にあるのは、人間の想像力をどう守り、どう育てるかという問いである。アイデア資本主義とは、経済の話であると同時に、人間観の試金石なのだ。 -
Posted by ブクログ
書名から想像する内容と読後感が微妙に違うが、切り口はそれなりに興味深かった。
「将来のより多い富のために現在の消費を抑制し投資しようとする」ことができる人は、ある意味いくばくかの富と冷静な論理思考を持っている恵まれた人だろう。残念ながら自分自身を含め、大多数が不安で仕方がないので、やむをえず現在の消費を抑制し、なけなしの金を貯め込んでしまうのが実情かと感じてしまった。
しかし、経済を回しているのは「将来のより多い富のために現在の消費を抑制し投資しようとする」少数の勝ち組なので、大多数の搾取される側の人々はあまり関係ないというか誤差の範囲なのだろう。