ヒルデ・オストビーのレビュー一覧

  • 海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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    海馬(≒記憶)を主題とする本書は、専門的で難解な内容を扱いながらも、意外なほど平易で、むしろ物語を辿るかのような読書体験をもたらす。
    「大切なことを覚えておくために、不要と判断したものは忘れていく」や「幸せな記憶は、誰もが持つ抗うつ剤ではないか」といった印象的な一節が随所に散見され、記憶に関する本質的な洞察を静かに提示している。
    本書を通じて、記憶や物忘れという現象を、従来とは異なる視座から捉え直す契機を得ることができた。

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    2025年08月13日
  • 海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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    人間に宿るタツノオトシゴ…脳にある海馬を、つまり記憶のしくみについて書かれた本。
    タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて手に取った。
    神経科学や認知心理学など、科学の本でありながら歴史、文学、心理学、建築学、神話学、生物学、環境問題などいろいろな分野の話題を組み合わせながら、情緒的でユーモラスでもある。
    そんな本書はノルウェー人の作家&神経心理学者の姉妹によって書かれている。姉妹同士であることの屈託のなさから、時には喧嘩をしつつも、好奇心旺盛な彼女らはとことん記憶について突き詰め書いたとのこと。とても愛着の湧く本だ。
    姉妹は様々な記憶に、海馬に関する過去の事例や先行研究を紹介しながら、自身ら

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    2022年06月23日
  • 海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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    海馬から始めて記憶への考察実験が始まる。お決まりのラットに電流を流すものからMRIや不幸なきっかけで海馬を除去したヘンリーの記録、ダイバーによる記憶やイルヴァ自身による100日間の実験など実に多方面から記憶を見つめる。そして未来との関係、鬱との関連など興味は尽きない。
    忘れることにも意味があり、忘れてもいいんだよということにほっとした。

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    2021年10月07日
  • 海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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    人の脳に棲むタツノオトシゴ——海馬。作家のヒルダと心理学者のイルヴァ姉妹は、地理と記憶の関係性や、他人の記憶を捏造することは可能かどうかなどを過去の研究に基づいて自らも実験し、記憶を司る器官の謎を探っていく。また、警察官、タクシー運転手、チェスプレイヤー、俳優、テロ被害者でもあるテロ研究者など、幅広い人びとへのインタビューを通じて「人の生にとって記憶とは何か」という問いに軽やかな答えを提案してくれる、記憶と忘却にまつわるノンフィクション。


    面白かった!オリヴァー・サックスに近い読みごこちだが、サックスが脳神経科医として患者の脳に接しているのに対して、こちらは作家と心理学者のコンビなので固い

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    2021年07月21日
  • 海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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    「記憶」に関して医学的、脳科学的に考察した本。特に注目したのが本の表紙にもなっている〝海馬”(表紙はタツノオトシゴだが)だ。体験したことは、人、物事、感覚、行動として個別に記憶に保管される。それらが海馬の働きによって、記憶ネットワークで互いに結びつけられているという。それによって記憶容量に余裕ができ、私たちは自由にものを考えることができる。

    単に記憶と言っても、それを有効利用するような場合と、それに思い出せずに苦しんだり、不要な状況で強引に出てきて振り回される場合がある。本書ではこうしたあらゆる状況について解説していて、どれも面白い。特に、テロに遭遇した人のPTSDやロンドンのタクシードライ

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    2025年01月17日
  • 海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

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    ネタバレ

    記憶と脳の働きについて書かれた本。神経心理学者と作家の姉妹の共著ということで、海馬をタツノオトシゴに、記憶を真珠に例えて、読みやすくうつくしく様々なエピソードを紹介している。今まで読んだ「情動はこうしてつくられる」「私はすでに死んでいる」などに比べると専門性はそんなに高くなくて、実験や研究の軽い紹介にとどまるものが多く、目新しい話はあまりなかったけど、わくわくする語り口と分かりやすさで読んでいて楽しい。
    記憶は何度も何度も再構成して解釈され、全く同じ形を保つことはできない。忘却し、変容する。そうでなくては大事な記憶を守ることができないとは、何たる悲しい性。

    一つ「どうもあれ以降めっきり記憶力

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    2021年07月08日