佐野弘好のレビュー一覧

  • 年輪で読む世界史

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    年輪年代学者である著者が解明する気候変動と世界の歴史。

    これ、ポップな表紙と面白そうな題名なので気安く読もうとする人も多いかもしれませんが、読み始めたら思ったよりもてこずるんじゃないでしょうか。本書は研究者である著者が年輪年代学のあらましや研究のアプローチ、成果から導き出される結論と歴史学的な出来事の検証などを紹介した本で、割とどっしりした内容になっています。研究者本人が書いているので、そこらのライターさんがおもしいところをつまみ食いしたお気楽科学本とは違います(僕もこっちを期待して読み始めましたが)。
    知識として木の年輪の幅から気候変動が読み取れる学問がある、というのは知っていましたし、興味もあったのでこの本を手に取ったのですが、年輪が記憶することから読み出せる情報の幅の広さに感心します。そして様々な「木」から得られる年輪をつなげることで(クロスデーティング)1万年以上遡って気候が再現されている、そこまで研究が進んでいるところにも驚きました。研究者たちの探究心の深さと過酷なフィールドワークの賜物ですね。
    さて、まあ予備知識としてある程度のことを知っていたので研究の話はそこそこに楽しめたのですが、一番生々しく読めたのは「ホッケースティックグラフ」のことでした。ホッケースティックグラフというのは地球温暖化に関する気候変動の問題で最も有名なグラフで、ここ1万年の気温の変化の中で直近の200年に急激に気温が上昇していることを示すグラフです。このグラフは産業革命以降の人間の活動が地球温暖化の大きな原因である、とする説を強く補強するもので、今ではIPCCの公式見解となっていますしSDGsの中心的な課題でもあります。ところが温暖化が人為的な原因だと認めたくない(えらい)人たちがこの説を潰しにかかります。この問題は今でも尾を引いていて、アメリカでもトランプ政権では温暖化説が政治的に無視されたりしましたが、このホッケースティックグラフを発表したのが年輪年代学者たちだったというのは知りませんでした。この本ではこの政治的な圧力についても暴露されています。日本でも生物学者の池田清彦さんがホッケースティックグラフについて、研究者が求められた情報を開示していないことから疑念がある、と問題提起していましたが、この本を読めばそんな難癖に必要のない情報の開示までしない、つまり相手にしないという研究者側の対応がよくわかります。ただ、潰す側からすれば訴訟の勝敗よりも相手が(どんな情報であれ)情報開示を拒んだ、という事実があれば十分なダメージを与えられるので、それを狙ったスラップ訴訟のようなものだったのでしょう(この件についてのドキュメンタリー番組もあるようです)。本書ではあまり触れられていませんが、地球温暖化と気候変動について、政治的な思惑が阻害となって対応が全く進んでいないことについてはかなりの怒っている様子がところどころから滲み出ています。
    ともあれ、年輪年代学というあまり知られていない学問がいかに歴史の大事件の学説を補強したりやストラティバリウスの真贋を判定する手助けをしたりしているのかを読み解く、とてもエキサイティングなサイエンスノンフィクションではありました。学者さんが邦訳しているので文章が難しく、そのことがまた読みにくさに拍車をかけていますが、内容的には多角的で大変面白かったです。こうした学問は十分にあるのに、政治的な思惑で未来に活かされない現実をどう受け止めていいのか、困ったものです。

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    2023年08月13日
  • 岩石と文明 上

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    アメリカの地質学者が、岩石と文明の関係について25のテーマで考察した本。
    人間の文明に影響を与えた鉱物、岩石、地質について、エピソードを交えて紹介する。 タイトルは少々手強い感じだが、内容はわかりやすくて面白かった。自身の経験や出会った人々の話も多数入っているが、教養書ぼいこのタイトルからは、少しプライベートすぎる印象もある。 前半は、主に鉱物、歴史、隕石などの話、後半は地層、地質学者の研究成果の紹介など。

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    2021年12月05日
  • 岩石と文明 下

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     新着コーナーにあった下巻を手に取った。
     著者は2021年の今年67歳になる。大陸移動説やプレートテクトニクス、隕石による恐竜絶滅、地中海の干上がり、トランスフフォーム断層、地磁気の逆転、ミランコビッチ・サイクル、氷河形成など、いずれも著者が歩んできた研究人生のなかで、著者がまさの目の当たりにしてきた科学理論の確立の過程(現場)を臨場感をもって伝えてくれる。
     著者の興奮が伝わってくる一冊だ。科学者の世界でも、新しい理論には懐疑的なアゲンストの風が吹くところが興味深い。

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    2021年08月12日