福田利之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大学で気象学の研究をする藤巻博士と彼をとりまく人たちを描いた連作短編。
藤巻先生が彼の妻となるスミと出会った1958年から2022年までの藤巻家四世代の歩みを、6編に分けて時代を追いながら、とても静かに語られる物語たち。
主人公である藤巻博士自身の多くは語られていないけれど、時おり先生の口にした言葉によって、その温かいお人柄がうかがえる。
博士は少し変わった気質だけれど、その傍らでそれぞれ力強く生きる家族の姿がほほえましく、ままならないからこそ、なおいっそう家族が愛おしいと思える、何だか不思議な魅力をもった家族の物語だと思います。
二十四節気に合わせて、藤巻家が行う行事に、とても心が和み -
Posted by ブクログ
2025/02/27
天気にとても詳しい藤巻昭彦という大学教授の息子だったり、その家族だったり、親戚だったりといった人たちの半生がこの人を中心に、主人公が移り変わる短編となっている。
物語の中心となる藤巻さんは最初に生い立ち等が語られているが、その後の話ではちょっとしか出てこない。けれども、藤巻家と関わりのある人たちが年月の経過とともに色々な人生を送っている様子が丁寧に描かれていて、時代の移り変わりと家族の関わりや関係性の変化の機微が読んでいて次の展開や中心人物に興味を惹かせるようになっていると思う。
全体的にほんわかする小説だと思います。 -
Posted by ブクログ
最近時間があっという間に過ぎていって焦りがあったけど、やっぱり本読む時間があると、落ち着ける。いい。
正和堂書店で、月別文庫本ランキングの一位になってたから読んでみた
遊園地で働いてる何人かの人のことが、章ごとにその人目線で書かれているお話。山田の引退ライブのとこじーんときた。
特に水曜日の章の八重子さんと野上さんが出てくるお話が好きだった。何回か会ったことある人のことをちょっと知れて、いい一日にだったって思えるところが好き。
あと、日常の中に気づかない変化があるみたいなこと書いてある部分も好きだった。
何年後かにまた読んだら、共感する相手が変わるかもだし、また読みたいなっ -
Posted by ブクログ
大阪北部の遊園地を舞台にした、7編からなる群像劇で、描かれるのは日曜日のイルミネーションイベントに向けた1週間です。
訪れる人が笑顔になるのが遊園地というものだけれど、従業員にはそれぞれ抱える事情があり、性格があり、人生観があります。
彼らのそんな姿が、寺地はるなさんらしい丁寧なタッチで紡がれていました。共感と希望を心に残してくれるストーリー展開も相変わらず見事です。
感心するのは、各話の脇で登場する人物にまで十分な存在感を与えるキャラ設定をしているところです。
佑や「木曜日」の照代さんはともかくとして、「水曜日」の野上さんや「金曜日」のあおいさんにまできちんとした背景を用意し