突然、知らない人から来たメッセージ。怪しすぎると思いながらも、返信をしてしまったナツキ。最初は半信半疑だったものの、謎の人と交信は、淋しい気持ちを埋めるかのようにずっと続いていった。
返信が来るのはいつも2日後。お互いの言葉にズレが生じるものの、いつしか謎の人に恋をすることになった。
そして告白しようと思ったが、謎の人が今どのような状況になっているのかナツキは知らなかった。
1ページ約140字が積み重なってできる恋愛SF物語。
実際にTwitterで投稿していて、全然知りませんでした。
言葉を選んで140字の物語を作ることも凄いですが、物語の展開も凄かったです。
まさか、未来の物語だったとは。二人それぞれから見えてくる不自由や常識など、「壁」があるからこそ「愛」の深さもあって良かったです。
当たり前だと思っていた常識や習慣。知らないからこそ、理解しようとする姿勢。文字だけで交流する二人の恋には純愛だなと感じさせてくれました。
ただし、物語の奥深さというのはありません。というのも、文字数が制限されているので、最小限に物語の世界観を作っています。
いわゆる大勢で演奏しているのではなく、アコースティックのような例えでしょうか。
なので、好き嫌いははっきりと分かれるかもしれません。
また、10年間の物語ですが、順々に時系列通りに描いているわけではなく、途中行き来したりしているので、わかりづらいという点はありました。
さらにナツキ視点で進行するだけでなく、謎の男のパートやナツキの友人の視点も登場します。きちんとパートごとに紙の色も変えているので、工夫が施されています。
若干友人のパートは薄い灰色なので、明るい所で読むことをお勧めします。
段々と明らかになっていく謎の男の正体。別の世界で生きる男の背景といったら・・・絶望なのかなと思ってしまいました。
その土地で生きなければならない状況。死と隣り合わせの状況の中で、ナツキとの交流には是非とも幸せになってほしいとも思ってしまいました。
困難な状況を経ての二人の出会い。文字とは違い、字だけでは伝わらない「声」としての魅力も感じられ、ジーンときました。
生身あっての存在がいかに大事か。感動を誘いました。
このご時世で、なかなか人に会えない苛立ちさ。
この状況が終わった時、状況とは違えども、通ずるものがあるかもしれません。
その時まで、首を長くして待ちたいと思います。