木村映里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
看護師として働く中で、葛藤を抱えながら紡がれる言葉が胸に刺さる。
6章では、目の前の人の命に生産性で優劣をつけていた自分の浅はかさを前に立ち尽くし、引き受けたネガティブな感情を、『属性』に帰結させないようにしようと背筋を伸ばし続ける姿が印象的だった。
過去の自分の傲慢さを思い出し、心に留め置いておかなければならないと感じた。
9章では、「頑張っているから差別しないでほしい」という主張が、裏を返せば「頑張っていない人は差別されても仕方がない」という論理になり得る。
その視点にハッとさせられた。
自分の主観で他者をジャッジしていることに、無自覚だったのかもしれない。
働く上で、組織やチームに信頼関係があり、率直に話ができることや、感情を殺されずにケアされることは、とても大事だと感じた。
あらためて、患者と近い距離で働く看護師という存在に、深い敬意を抱いた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレきっと筆者の評価しない姿勢が、これだけの言葉を彼女に託したんだろうなぁと思った。
たぶんセクシャルマイノリティー、シングルマザー、水商売、生活保護、精神疾患など
関わることがなければ他人事のように感じてしまう自分の周囲にあるものを身近に捉えてそれを文章に認めたことに感謝を覚えた。
自分のことを語るにも勇気がいる。
とても芯がある人だと思った。
別の著書も読んでみたいと思った。
著作の中で医療従事者の自分も心に留めておこうと再認識した箇所
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友人の医師は、生活保護受給者への医療従事者の目線に関して、「生活保護の受給者のごく一部に、どうしようもない性格で社会不適応であるがゆえに働くこともできず、病院に来てはクレーマーのような態度を繰り返す、こちらのモチベーションを根こそぎ奪っていく人がいて、少数だが複数いる上に同じような経過を辿っていく。医療従事者は超精鋭とでもいうべきそういった特殊な生活保護受給者の相手ばかりしているうちに、生活保護受給者全体に対する偏見が形成され、生活保護叩きに至る」と話します。その上で、「医師や看護師は彼ら彼女らを受け入れ治療することを強いられる。彼ら彼女らをつまはじきにしてきた社会からそれを要請される。生活保護の知識がなければ、生活保護受給者とはあまねく性格のゆがんだつまはじき者だというイメージが植え付けられかねない」と語っていました。
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自分も病院でその偏見を耳にしていたし、その偏見を信じていた時があった。けど、生活保護について知るうちに「生活保護」で括ることに違和感を覚えるようになった。今の自分なら同じようなことを後輩に言う気がする。 -
Posted by ブクログ
医療従事者が治療の枠の中から人々を見続けていることによって無意識の差別的意識をもつことを、各章で散々思い知らされる。しかし、医療従事者が差別される立場に置かれた感染パニックを経て、条件付きの差別の禁止をうたうことも誤りだったと筆者が自覚する。
看護師のフィールドは、苦しみと傷つけ合いの連続だけど、それでも迷いながら、誤魔化さずにやっていけたら……、と結ぶ(ように思う)。
明晰な文体、豊かな感性、凄い。木村さんの視点からみえる、繊細な気づきと緻密な整備を覗かせてもらうことができて、良かった。赤裸々な人生告白も読み物としては興味深い。
ただ、誰も傷つけたくないという配慮がやや過剰な感じを受ける。主張の内容を批判されることは悪いことではないし、全く誰も傷付つけないのは不可能だろう。
「自身の配慮のなさ」「自身の愚かさ」に気がついて愕然とする場面が多々あるが、そんなに瞬時に抵抗なく自身がいかにダメかについて気がつけるものなのか。
後から恥ずかしくなる経験、ようやく何が問題だったのか理解できることなどはたくさんある。その時々で適切に感じ取り完璧に対応することは不可能なのだから、もう少し、楽に構えてみたら?と著者のメンタルが心配にもなった。 -
Posted by ブクログ
『医療の外れで 看護師の私が考えたマイノリティと差別のこと』木村映里
こんなにすーっと心に入ってくる文章、久しぶりに読んだ。物事をここまで自省的に、かつ鮮明に描けるのはすごいことだな。絶望するほど重いテーマなのに、前向きな願いに満ちている。
noteやtwitterで色々と発信されている、現役看護師木村映里さんの初書籍。
社会から排除されやすい人々と、医療との距離について。
「セクシュアルマイノリティ」「性風俗」「院内暴力」「子どもを愛せない」「医療不信」「依存症」「性暴力」「医療従事者」の9つのテーマで、貧困や差別に対して医療従事者がどう向き合うべきか論じられている。
筆者本人が当事者であったり、当事者とかなり近い位置での観察者である様々なケース。
単なるナラティブとして現状を嘆くだけではなく、フラットで曇りない分析がなされている。そのうえで、医療従事者だけでなく、私達全員がどうあるべきか、まっすぐに問いかけてくる。
6章、生活保護のお話が一番心に残った。
「なんとなく努力しない人たちのような気がする」記号として、分かりやすい侮蔑の対象となっている人達。自分にもたらされる快・不快をその人の属性に帰結させてはならない。生活保護に限らず、人間に付随する属性や記号の扱いはいつだって難しい。
木村映里さんの人柄が文章の端々からあふれでているように感じる。『「もうだめかもしれない」と思う度に日常の岸に引き戻してくれた大切な人達』が、誰にとっても存在するものであってほしい。愛に溢れた願い。 -
Posted by ブクログ
看護師が考える「マイノリティ」って何だろうと読み始めた。
はじめにから、病院の世話になるくらいなら死んだ方がましと考えている飲み飲み友達からの電話、医療現場のヤバい人の発言など著者の付近で見聞きした事や「社会から排除されやすい人」との書かれ方がしっくりいかず、読み進めるごとに「はて、そうなのか?」考えてしまった。
3章、せん妄で暴力を振るった山本さん。髪を摑まれてベッド柵に顔を打ちつけられた事が冒頭にありますが、何故せん妄状態の理解があるのに不用意に1人で手が出せる近距離で関わったのだろう、なんで山本さんを加害者にしたのだろうと苛立ちも感じた。
以降、マイノリティと著者が括る人たちの話をしたいのか、著者自身の話をしたいのか頭の中が整理出来ないまま終章に辿り着き、著者もマイノリティの属性で括る行為への抵抗や葛藤がある中で発信された事、様々な反響があった事が書かれていて少し気持ちが落ち着いた。
マイノリティって言葉、いつからこんなに使われるようになったのかな。 -
Posted by ブクログ
筆者自身が体験したことを綴っている。
看護師であり、歪んだ家族関係から、認められたい気持ちが拒食症を発症。やがては仕事で鬱という経過がある。
読んでいるとなぜそんなにと感じでしまう自分は、少しでもこれらで苦しんでいる当事者の言葉を読み、どういう状況で思考で、そのようは経過を歩むことになったのかを知ろうとしているんだと気づいた。
でもやはり、どこかで、遠い世界のような感覚もある。
この本の中で、身近に感じた文章がある。『あまりの多忙さと、看護師の上下関係の厳しさに呆然としました。疾患の治療を最大の目的とした病棟で最優先すべきは、適切な処置と循環動態の観察、そして患者さんのその瞬間ごとの身体の安全の確保で、患者さんの背景や家族の背景といった、目に見えず、データにも表れない事象について考える時間も、気持ちのゆとりもありませんでした。「間違えたら、見逃したら死ぬ」人を同時に何人も看るプレッシャーに加え、患者さんの髭や爪を気にするだけで......
徐々に目の前の人が自分と同じように心を持つ人間だと思えなくなっていきました』という文章を読んだ時、涙が自然に溢れてきてしまいました。
自分にもそんな瞬間があったなぁと振り返ることができました。 -
Posted by ブクログ
看護師である筆者が実際に体験した事とその体験に対して考えた事。筆者自身が様々なマイノリティ(LGBT、貧困、依存、などなど)と接し、筆者自身がそれらとの境界を生き、医療職としての自分と当事者としての自分の葛藤が書かれている。非常に生々しい体験がいくつも綴られているのだが、分析的で冷静な文章のおかげで読み進めることができる。
私自身は業界のほんの片隅で、このようなことを内側の人間として経験することはないだろう。しかし患者として医療と接する可能性は常にある。筆者が感じたようなこと、医療者がどのようなことを考えて業務に取り組んでいるのか、ということは参考になる。