医療の外れで

医療の外れで

1,760円 (税込)

8pt

「病院の世話になるくらいなら死んだほうがまし」
そう言った彼に、わたしはどう答えたらよいのか?
若手看護師が描く、医療と社会の現実。

生活保護受給者、性風俗産業の従事者、セクシュアルマイノリティ、性暴力被害者などが、医療者からの心無い対応で傷ついたり、それがきっかけで医療を受ける機会を逸している現実がある。医療に携わる人間は、こうした社会や医療から排除されやすい人々と対峙するとき、どのようなケア的態度でのぞむべきなのか。看護師として働き、医療者と患者の間に生まれる齟齬を日々実感してきた著者が紡いだ、両者の分断を乗り越えるための物語。誰一人として医療から外さないために。

「白黒単純に塗り潰すのではなく、鮮明な解像度で描写する。
そうでしか伝えられない景色を、この本は示してくれた」
──帯文・荻上チキ

「社会から排除されやすい人々と医療従事者の間には、単なる快不快の問題でもなければ、一部の医療従事者にだけ差別心があるといった類の話でもない、もっと根深く、致命的なすれ違いがあるように思います。マイノリティや被差別的な属性の当事者が積み重ねてきた背景と、医療従事者が積み重ねてきた背景は、社会の中で生きているという意味では地続きのはずなのに、しかしどこかで分断されているような気がする。各々の生きる背景を繋げる言葉が必要だと感じ、書き始めたのが本書です」(「はじめに」より)

【目次】
1章 浩はどうして死んだのか──セクシュアルマイノリティの患者さん
2章 医療が果歩を無視できない理由──性風俗産業で働く患者さん
3章 殴られた私も、殴った山本さんも痛いのです──暴力を振るう患者さん
4章 千春の愛情は不器用で脆くて儚くて──自分の子どもを愛せない患者さん
5章 「看護師が母を殺した」と信じたい、高野さんの息子──医療不信の患者さん
6章 私は生活保護を受けようと思っていました──生活保護の患者さん
7章 飲みすぎてしまう葉子、食べられない私──依存症の患者さん
8章 性暴力被害を受けて、裁判を起こした──性暴力被害者の患者さん
9章 医療が差別に晒される時──医療現場で働く患者さん
終章 医療から誰も外さないために

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医療の外れで のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    同じ医療関係者として、分かると思えるところと、反省しなくてはと思うところ、いろいろ思うところがあって、複雑だった。

    0
    2024年07月13日

    Posted by ブクログ

    医療従事者が治療の枠の中から人々を見続けていることによって無意識の差別的意識をもつことを、各章で散々思い知らされる。しかし、医療従事者が差別される立場に置かれた感染パニックを経て、条件付きの差別の禁止をうたうことも誤りだったと筆者が自覚する。
    看護師のフィールドは、苦しみと傷つけ合いの連続だけど、そ

    0
    2022年02月08日

    Posted by ブクログ

    もっとも差別から遠くあってほしい医療現場だけれど。「けれど」の行間にあるさまざまなマイノリティの声、医療現場の葛藤、そのどちらも見つめながら丁寧に思考していく文章に惹かれます。こういう人でありたいなと思わせる著者の魅力も。

    0
    2021年06月14日

    Posted by ブクログ

    “どんな状況でも存在する不変の愛情は美しいけれど、親子だろうが家族だろうが「愛情があって当然」なんて、きっと思わないほうがいい。環境次第で愛情は失われ、愛情の残骸は暴力になります。”(p.96)


    “「危険で過酷な状況で頑張っているから差別しないで」は、反転すれば「頑張っていない人は差別されても仕

    0
    2021年06月06日

    Posted by ブクログ

    ナースは最強の職業だと思っていた自分が恥ずかしくなった。
    知らないっていうのはホントにダメダメだ。
    いろいろなことを気づかせてくれるすばらしい本だ。

    0
    2021年06月01日

    Posted by ブクログ

    『医療の外れで 看護師の私が考えたマイノリティと差別のこと』木村映里

    こんなにすーっと心に入ってくる文章、久しぶりに読んだ。物事をここまで自省的に、かつ鮮明に描けるのはすごいことだな。絶望するほど重いテーマなのに、前向きな願いに満ちている。


    noteやtwitterで色々と発信されている、現

    0
    2021年02月03日

    Posted by ブクログ

    これだけ真摯に、これだけ複雑なのに単純化されやすい問題に向き合った著者の温かさと勇敢さに圧倒された

    とにかく、自分が思わぬところで無自覚に暴力性を発揮していることは、どれだけ意識しても意識しすぎることはないことだと強く感じた。
    特に、医療職に就く以上、その暴力性には特に自覚的でなければならない。そ

    0
    2020年11月06日

    Posted by ブクログ

    第三者的に医療者のナラティブな話というよりも、医療者が自ら介入してマイノリティや差別を考える話。

    著者独自の気持ちや考えがハッキリしており、なるほどと思えたことが多い。

    0
    2024年04月04日

    Posted by ブクログ

    4章とそのあとがき、ご友人の母子のことと著者ご自身のお母様との関係のことが綴られているところが一番印象的でした。ご自身とお母様との歴史や現在のこと、とてもリアリティがありました。こういう話題のとき、以前は娘側の視点に感情移入することが多かったのですが、今回はなんだかお母様にとても親近感を覚え、わたし

    0
    2022年12月16日

    Posted by ブクログ

    自分以外のいろんな人の事情を理解することは難しい
    でも、そういう人がいるってことを知ってる、聞いたことがあるだけで、少し選ぶ言葉とか行動が変わったりすると思う
    医療の話だけど医療以上の内容を書いている本だった

    0
    2022年08月23日

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