小説トリッパー編集部のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
30にまつわる短編集。
↓一番刺さった話 ★★★★★
木爾チレン うちとあんた
あまりにも自分の今と重なって、主人公の気持ちが痛いほどよく分かった。私も同じ痛みを味わってるから。
親友と別れる話。恋人ではなく友達とも別れってある。学生の時と違うのは、喧嘩したからとか、気が合わなくなったではなく、一緒にいることが辛いから。30歳。色んなことの結果が出てくる年齢。親友だからこそ、今までの道のりを全部知られているからこそ、今の自分を惨めだと思われたくない。
「優しい夫と結婚して、子供にも恵まれた和夏に、私のこの孤独がわかるのだろうか」
励ましの言葉も、相手は何も間違ってなくて、心からの優しさなんだけど、それが全く寄り添ってないと感じるのは、立場が全く違うからなんだろうり正しい励ましではなく、同じ苦しみを味わってほしい。そうでないと、分かるはずがないから。
「いつからか、和夏といるのが辛かった、幸せそうな和夏を見るのが、辛かった。あんたと自分を比べてしまう、親友だから。」
幸せになって欲しいと思われていることが辛いのも分かる。どちらが悪いのではないのも分かる。
「本当は、親友のままでいたかった。でも、お互いに変わってしまった。あの頃のふたりには、戻れないと知っていた。」
町田その子 さよなら、過去
不登校の日々に、両親が寄り添う姿がとても温かくて、やっぱり町田その子さんが書く家族は良い。一つ好きな消しゴムを買って一緒に学校に行き、帰りは校門で待っていてくれた両親。わたしも学校行きたがらない時期がよくあったけど、車で送ってくれたり一緒に歩いて行ってくれたり、心配かけたことを思い出した。そしてその頃のことを忘れていた。
↓好きな話 ★★★★
青山美智子 ストールは赤
「形のない不安は、いつだって、簡単にさっぱりと消すことはできない。だからこそ、こんなふうに『形のあるもの』に力を貸してもらうことだって必要なのだと思う。得体の知れない恐れを、確かな希望に変えていくために。」
物語の中では赤いストールだったけど、30歳の記念に買った指輪が、私にとってのお守りになっていくんだなと思った。
一穂ミチ プレゼント
こんな粋なプレゼントがあるだろうか。横棒一本の計り知れない無償の愛。
呉勝浩 檸檬と定規
高校時代の同級生の奇行を思い出しながら、閉じ込めていた自分自身がいじめられていた記憶が思い出される。浮かないことに必死だった。学生時代のほの暗い記憶が蘇る話。
-
Posted by ブクログ
トリッパーに掲載されていた作品を収録。
どの作品も短いのでサクッと読める、スキマ時間にもぴったり。
でもそれだけに物足りないと感じる作品も多い。
エンターテイメント性は高くなく、文章を愉しむような、何気ない日常を切り取った作品が多い。
朝井リョウ「清水課長の二重線」☆☆
上司も同じ道を歩いていたんだ、という発見には感慨深いものを感じる。
でもそれがあれだけ几帳面ってところだとなあ。
細かさが必要なところと、スピーディーさが求められるところがあると思う。
共感しづらいところがあった。
阿部和重「Across The Border」☆
だれも救われない。嫌い。
伊坂幸太郎「if」☆☆☆
主人公はバスジャックに遭遇してしまう。
ifっていうくらいだから、やり直しか?パラレルか?と思ったら……。
井上荒野「二十人目ルール」☆☆
二十人目ルールいいなと思ったのに。
江國香織「蒸籠を買った日」☆☆☆
何か大きな変化が起こるわけではないけれど、雰囲気は割と好き。
円城塔「十二面体関係」☆
20人の人物紹介のみが書かれていて、初めは殺人事件の容疑者リストかと思った。
ところが、個々人の思想とかが入り乱れて、人間関係を把握しきれないほど全体像が複雑になっていく。
Aが犯人だ。
いや、Bが犯人だ。
犯行にはCが影響している。
その思想にはDが関わっている。
EはDと同一人物とされている。
Fは我こそがEだと主張している。
……という感じ。
申し訳ない。僕には難しすぎる。
何の話だったのかさっぱり。
恩田陸「悪い春」☆☆
ボランティアという名の徴兵制だなんて、嫌な可能性だなぁ。
川上弘美「20」☆☆☆
「生きてることは、16じゃなくて、20くらいの楽しさかもしれないな」
木皿泉「20光年先の神様」☆☆☆
「祈りとは、今を生きるためにあるものなのか」
桐野夏生「マダガスカル・バナナフランベを20本」☆☆☆
ふとしたことで、どうでもよくなっちゃうんだな。
結構お似合いのカップルなんだと思う。
白石一文「いま二十歳の貴女たちへ」☆
「人生には正解がないから自由だ」とはいうが、それは公共の福祉に反しない限りの話だろう?
作中にあるような不倫は絶対に悪だ。
津村記久子「ベチュニアフォールを知る二十の名所」☆☆☆
名所を巡ってその紹介を聞きながら、その歴史が見えてくるのはおもしろい。
でも語り口調がわざとらしい。
羽田圭介「ウエノモノ」☆☆
結末で少しの落ち着きを得たようだが、本質的には主人公のなんだかさみしい状況はかわっていないようだ。
原田マハ「ブリオッシュのある静物」☆☆
読んで受け取るものがあまりなかったかな。
樋口毅宏「人生リングアウト」☆☆
今の気分なのか、アツイ物語を読むとちょっと疲れちゃうんだよな。
藤井太洋「ヴァンデアン」☆☆☆
植物コンピューターはなにが作られているのかわからないところも多かったが、田奈橋は好きだな。
宮内悠介「法則」☆☆☆☆
屋敷の使用人である主人公が、屋敷の娘に恋をしてしまったが、主人に反対される。
主人を殺そうとするも、“できない”。
なぜか?
それは、この世界が「ヴァン・ダインの二十則」に縛られているから!!
曰く、「端役の使用人等を犯人にするのは安易な解決策である。その程度の人物が犯す犯罪ならわざわざ本に書くほどの事はない。」
これは面白かった。
森見登美彦「廿世紀ホテル」☆☆☆☆
文章がやはりいいね。
他の作品をまた読みたくなった。
ストーリーはさおの未来を知っているだけに怖い。
山内マリコ「もう二十代ではないことについて」☆☆☆
幸せな雰囲気に溢れているのか、不安があるのか。
好意的に受け止めているのか、そうではないのか。
よくわからない文章だった。
山本文緒「20×20」☆☆
物書きの苦悩かな?
自分自身が恐い、みたいな。
ちょっと共感しづらい。 -
Posted by ブクログ
20をテーマにした短編集。SF、怪談、ミステリー、恋愛系等々……多彩。
20作全部の感想を書くのは大変なので印象に残ったものだけ。
*「清水課長の二重線」朝井リョウ
そんな細かいこと!と思うことをちゃんと教えてくださる上司に感謝。
*「if」伊坂幸太郎
もしかして無限ループ?と思いきや、偶然か必然かの出来事。
*「十二面体関係」円城塔
人間関係図を描きはじめたらすごいことになりそう。文章としての物語は始まっていないのに、既に物語が動き始めている不思議。
*「20光年先の神様」木皿泉
最後の赦しの物語。自分もこういう風に言えることがあるのだろうか。
*「いま二十歳の貴女たちへ」白石一文
講演形式?奥さんがいる男性を好きになってしまった時に、もう恋なんてしないだとか悪だとか思ってはいけない、それはあなたが抱いた大切な恋なのだからというのが印象深い。
*「ペチュニアフォールを知る二十の名所」津村記久子
最初から既にヤバいよ……と思っていたけど、やっぱりヤバいとこだったよ……。
*「ブリオッシュのある静物」原田マハ
タマコさんの性格と生き方が好き。学芸員資格をさくっと取っちゃうとか。
*「法則」宮内悠介
ヴァンダインの二十則は知っていたので声に出して笑ってしまった。逆手に取った犯人と探偵がおもしろすぎる。
*「廿世紀ホテル」森見登美彦
どったんばったん大騒ぎすぎw令嬢が犯人かと思いきや……。最後の紳士の暗示が怖いな。
*「20×20」山本文緒
生きてる世界の違いすぎてぎすぎすする感じと暗めの印象。原稿用紙1枚が5000円だと考えると時給800円は……。 -
Posted by ブクログ
2017年、24冊目は、主に隙間読書用にしていたモノ。「小説トリッバー」創刊20周年、原稿用紙20枚程度、20をキーワードに、比較的メジャーな20作家が競演。
作品数が多いので、今回は印象に残ったモノをいくつか、簡単に紹介。
伊坂幸太郎『if』パラレルストーリーか、と思いきやの、オチ。お見事。
津村記久子『ペチュニアフォールを知る二十の名所』旅行会社の顧客へのプレゼン仕立て。まさかのオチ。
宮内悠介『法則』ヴァン・ダインの二十則で規定された世界では……。
以上が、単独作読んでみようかな、と思えた、個人的に★★★★☆作品(収録順に紹介)。
森見登美彦『廿世紀ホテル』主人公の性格を軸に、廿世紀ホテルの成り立ちと、主人公が見せられた未来の光景の対比。ソレを軽妙なタッチで描くのは巧い。
山内マリコ『もう二十代ではないことについて』今回、唯一の単独作、既読の作家。この方の、空気感とか、会話回しとかは大好物。
この辺が、続く感じかな……。
作家による、テーマの扱い、作風、ジャンルも様々。好き、嫌い。合う、合わない。も読者それぞれにあると思う。もちろん、自分にも……。
実話怪談系以外では、今年初のアンソロジー。クリーンヒットはあるも、長打コースはなかった感覚。 総合評価は★★★☆☆。