フリオ・ホセ・オルドバスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
荒廃した村に次々と現れる自殺希望者と、それを迎える怪しげな「天使」とのやり取り。
設定が全体的に謎のままどんどん話がオムニバス的に進んでいくけれど、どれもこれも読後感が絶妙。ずっと薄暗い道を進んでいくような、でも心細くならない感じが、大変好みでした。
以下、印象に残ったフレーズ。
「作家を偉大たらしめるのは、夢で見る銀の糸を、現実世界の針の穴にとおす腕前なんだ、先生はいつもそう言ってた。」
「人生とは炎のようなものだ。横笛の音色はそう語っていた。ある程度の年齢に達すると、炎には人生の思い出が重なり合ってくる。」
「死はどんなふうに踊るんですか? そう聞くと、生まれて初めて夜遊びに繰り出 -
Posted by ブクログ
村人が逃げだして見捨てられた廃墟の村は、いつしか自ら命を絶つと決めた者たちが次々て訪れる聖地となる。
村を訪れる者を出迎えてくれるのは、元自殺志願者の中年男ー 自称、「天使」だ。
天使は気の利いたことを言うわけでも、慰めてくれるわけでもない。たまたま居合わせただけといった風情だ。墓は作ってくれるらしい。
来訪者たちとの最期のひとときを、オムニバスのように男が回想してゆく。
奇妙で幻想的な雰囲気と、人をくった与太話然とした胡乱さがブレンドされて、読みながらゆるい午後の日曜日といったまったりとした空気に包まれる。
それが死ぬ前の一日にふさわしいのかと問われても、正直言ってわからない。
悲壮感