馬部隆弘のレビュー一覧
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村や、地元の社の由緒を示す、中世の絵図、系図、手紙。様々な形態の多数の文書が、江戸後期の一人の人物によって創作されていた。
「東日流外三郡誌」のような有名な偽書ではなく、個々の文書のスケールは小さい。地方の豪農の先祖が室町時代の武士だとか、そんなのどこの家の系図だって、その程度には胡散臭いのが普通だろう。というか、脚色のない系図ってあるんかね。
しかし、この土地には平安時代には大きな寺があった、とか、この村の山頂には城があって、南北朝ぐらいには栄えていた、とかなってくると、ちょっとほほーとなってくる。
椿井文書は系図や、土地争い、権威争いに都合が良くなるように創作された偽書だという。
まあ当時から知ってる人は知ってる創作物だったが、創作者の統一体系に見合うように多数の文書が作成されたため、文書同士が相互に補完しあって、立派な宇宙を作り出してしまったという話。
それを昨今の、自治体が、捏造系図をありがたがる地方旧家のように、見栄えの良い郷土史を欲しがって都合良く解釈し、実際に郷土史資料として出版したり、文書をもとに石碑を建てちゃったりして、さらにホントらしくなると。
椿井文書というのは、そういうふうにして広まっているものらしい。
ここまで来ると、偽書も研究対象になる。面白い。 -
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白いヤギさんと黒いヤギさんの本棚から
まず思ったのは「新書」ってなんか幅広のジャンルやな〜っていう直接中身と関係ないこともないことでした(どっちやねん)
白ヤ黒ヤさんもレビューで少し触れていましたが、ちょっぴり学術書に近いイメージ
恐らく文献学のテリトリーに入ってくるのかな
まずはなぜ「椿井文書」と呼ばれる史料の一群が偽書なのかというところを丁寧に紐解いてくれるのだが、だいぶまどろっこしい
うんそうなの、そうなのね
このまどろっこしいところが文献学の醍醐味なのよ
それは分かる
分かっちゃいるけど、すぐ結論に飛びつきたくなる最近の若者的なね
あるじゃない(お前若者違うやろ)
そしてこの膨大の偽書を作り上げた椿井政隆よ
この人まじエグくない?
系図とかの文書の整合性の取り方とか
絵図とかもめちゃめちゃ上手いのよ
ものすごい才能の持ち主なのは間違いないよね
そしてわいはこの本を読んで、ダーリンハニーの吉川さんを思い浮かべてしまったw
あの鉄道オタクとしてよくテレビに出てるめがねの芸人さんね
あの人は「吉川急行電鉄」という架空の鉄道会社を運営してるんだが(運営て)、架空の路線図とか超上手く出来てるのよね
ここ鉄道通ってたら便利だよねってところに、ちゃんと地形を考慮して線路引いてるのよ
何千年か後に「吉川急行電鉄」の文書を発見した人が、ここにも電車が通ってたのか!なんて思うのを想像したらちょっと楽しくなるよね(いやだいぶ迷惑だわ!) -
Posted by ブクログ
一言でいうならば「根が深い」。
作成者である椿井本人の巧妙かつ膨大な偽史料作成、それをさまざまな理由で「是」とした同時代や後世の人々、専門外であるや己の主張や単に気づかないという状態でこれを引用する研究者、地域振興になるから…利益になるからと無批判に利用する自治体。
幾つもの線が絡み合って、今まで「真」として伝わった一連の文書は、これはこれで興味深すぎる事例ではあるけれど、解きほぐすには時間がかかる…。
筆者が何度か述べているように「批判からはなんの利益も生まれない」。「東日流外~」事件でも、限られた研究者人生を偽物の追及にあてるのは割に合わないといわれたが…。
根が深いなぁ。
椿井文書に比べれば「東日流外~」事件がお粗末なコントに見える。
椿井氏が和田某の制作風景を見たらなんと言うだろう?
「ツメが甘いな、もっと史料と付き合わせてリアルにしないと、整合性を持たせて、分量も増やさないと…」と苦笑してそうだ。
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日本最大級の偽文書が、なぜ人々に受け入れられたのか。そして、その結果、どのような影響をもたらしているのか。
大半は、眠たい、歴史の授業のような退屈な内容なのだが…。
人々がこうあってほしいという思いに根拠を与える由緒や歴史的背景を示すことで、多くの人に受け入れられてきたという。分かりやすかったり、耳障りの良いものにはご用心、というのは歴史学上の偽文書に限った話ではあるまい。
今住んでいる枚方市の町おこしや国際交流が偽文書から端を発したもの(カモ?)というのが印象深い。人間の語り継ぐ歴史、物語であるからこそ、人間の感情や思惑が介在せざるを得ない。
「事実」が必ずしも「真実」として語り継がれるのではなく、人の感情を通して残ったものが「真実らしきもの」として語り継がれる。
歴史学に限った話ではなく、人間社会の「あるある」を見た。